日本データマネージメント・コンソーシアム

レポート

(報告)データマネジメント2025:データ活用は内製で! ─イオンリテールの挑戦

(レポート: 情報発信部会・日本電気株式会社 蛯名 清隆)


JDMC情報発信部会が、データマネジメントの知見を共有するためにお届けする企画です。今回は「データマネジメント2025」の講演をテーマに、情報発信部会メンバーが特に興味をもったセッションをレポートします。ぜひご一読ください!

  [D-3]データ活用は内製で!
  ─イオンリテールの挑戦

  イオンリテール株式会社
  デジタル戦略部データソリューションチーム マネージャー
  今井 賢一 氏


「データ民主化+仕掛けづくり」。これは、あらゆる顧客接点のCS(顧客満足度)を高め、顧客のLTV(顧客生涯価値)を最大化するために不可欠である。クラウド技術を活用し、データマネジメントを行うことに意欲を見せる企業が多い中、内製化の実態は厳しい状況だ。また、データの民主化に成功し、社内でのデータ利用は浸透しているものの、その後の行動・価値提供までは結びついていない企業数が多いという現状もある。

上記のように、データマネジメントの実態は多種多様であるが、目指すべき姿として、イオンリテールの今井氏は「データ民主化+仕掛けづくり」を説いている。そして、先述内容はあくまで手段であり、目的として「LTVの最大化」を挙げている。LTVとは顧客生涯価値を指し、この値を向上させていくために、顧客解像度を高める事が必須となる。解像度向上には、データを生み出す・データの活用といった二つのフェーズが存在し、今井氏の所属するデータソリューションチームでは、これらの二つの段階を意識して内製化を進めている。

データを生み出すフェーズは、データの収集・可視化・分析といった三つの要素に分解することが出来る。非エンジニアでも対応出来るように、「フルマネージド環境×生成AI」を組み合わせた独自の取り組みが紹介された。前者のフルマネージド環境に関しては、、ハードウェア・OS・ミドルウェアの部分でクラウド環境を導入することで運用の簡易化を図っている。

そして、後者の生成AIに関しては、アプリケーション開発を、生成AIを活用する事で簡易化し、「コードが読める」程度のプログラミングスキルでの開発を可能にしている。
これらの取り組みを集約したものが、独自データマネジメントプラットフォームである「ADaM」だ。基幹システムデータ、行動データ、実績データからテキスト・画像データ、外部データまであらゆる実データを収集する。そして、それらのデータを基に得られたインサイトを、データ分析用ポータルである「ADaM Portal」にて一覧表示することで、様々な視点から顧客分析が可能となっている。

データの活用フェーズでは、先述したADaM Portalを活用し、社内情報と人流情報を組み合わせて分析を行う事で顧客解像度を向上させている。また、SNSデータを解析し、マーケットにおけるトレンドワードを把握する事で、市場への理解を深化させる。

加えて、生成AIの活用を通してより高度な分析を可能としながらも、PythonやSQLの知識がなくても、多くの人材が分析や仮説検証を行える環境が整っている。具体的な活用方法に関しては、AIによるハルシネーションを減少させるため、RAG技術を用いた文脈プロセスが取り組み内容として紹介された。結果、分析の精度が飛躍的に向上し、レポーティング出力時間は大きく減少したという。

最後に、上記のツールを使いこなすためのリテラシーレベルを社内で浸透させるべく、データソリューションチーム主導のアンバサダー認定制度が紹介された。今井氏は、このような人材育成の取り組みを通して、専門知識の民主化を図っており、今後も継続していくと強い姿勢を示された。




▼JDMC情報発信部会による、2025レポート

◎古野電気が挑む「データの民主化」、その現在地 ─部門から全社へと広げる組織カルチャー改革
古野電気株式会社 IT部 部長 峯川 和久 氏

◎データ活用は内製で! ─イオンリテールの挑戦
イオンリテール株式会社 デジタル戦略部データソリューションチーム マネージャー 今井 賢一 氏

◎グローバルな製造DXの最前線 ─「Factory of the Future」の実現に向けた武田薬品工業の実践
武田薬品工業株式会社 グローバルマニュファクチャリング&サプライ ジャパン
戦略企画部 データサイエンスグループ ヘッド 深川 俊介 氏

◎データで切り拓く!デジタルバンク「みんなの銀行」の競争力を高めるデータマネジメント
株式会社みんなの銀行 / ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社
Architecture Division DWH Group グループリーダー 本嶋 大嗣 氏
株式会社NTTデータ バリュー・エンジニア データマネジメント事業本部 部長 田村 英樹 氏

◎金融庁におけるデータ活用の取り組みと金融分野を中心としたデータマネジメントの今後への期待と展望
金融庁 総合政策局 マクロ・データ分析参事官
兼 チーフ・データ・オフィサー 兼 気候変動関連リスクモニタリング室長 宮本 孝男 氏

◎データメッシュと生成AI活用が拓く 東京ガスグループのデータ民主化
東京ガス株式会社 DX推進部 データ活用統括グループ グループマネージャー 笹谷 俊徳 氏

◎データでビジネスを駆動する!リクルートのデータマネジメント活動、これまでとこれから
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 データ推進室
SaaS領域データソリューションユニット SaaSデータソリューション部
SaaSデータマネジメントグループ グループマネージャー 林田 祐輝 氏

Data as a Productへ! ─悩みの原因も解決の糸口も「すべての道はマスターに通ず!」
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社
データ&アナリティクス事業部 エバンジェリスト 水谷 哲 氏

▼ITLeaders 「データマネジメント2025」特集
https://it.impress.co.jp/category/c320102

RELATED

PAGE TOP