日本データマネージメント・コンソーシアム

レポート

【報告】2017年度総会、研究発表会ダイジェスト

2017年5月11日、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)の総会&研究発表会が東京・千代田区の日本記者クラブで開催された。発表の模様をダイジェストで紹介する。

総会の冒頭はJDMC会長、NTTコムウェア栗島聡氏の挨拶である。 2015年に就任した栗島氏は、2017年度から始まる二期目の続投が決定した。栗島氏の挨拶の概要は次の通り。
まずは、会員皆様のご支援にお礼を申し上げる。JDMCは昨年度12社を加えて203社となり、また「データマネジメント2017」の入場者は1000人を越えた。IoTやAIの流れの中、今データマネジメントがあらためて注目されている。経産省の構造審議会より、業界を越えたオープンなデータ流通を促進する動きも出てきた。JDMCはさらに高みを目指し、プレゼンスを向上していく。今後とも皆様のご支援をお願いしたい。

総会は、総会議長 栗島氏、事務局 大西氏の進行により滞りなく終了。
続いて、新任理事5氏のご紹介があった。

日本オラクル株式会社
執行役 副社長 クラウド・テクノロジー事業統括
石積 尚幸 氏

日本電気株式会社
クラウドプラットフォーム事業部 技術主幹
北澤 敦 氏

株式会社日立製作所
サービスプラットフォーム事業本部
IoT・クラウドサービス事業部 データマネジメント本部 本部長
原 憲宏 氏

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
リスク統括部 部長 兼 経営情報室長
財務企画部 部長 兼 経営情報室長
南雲 岳彦 氏

エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
エンタープライズビジネス事業本部 第六ビジネス部長
米山 巧一 氏

総会に続く第2部では研究発表会が行われた。継続・新設される研究会7つと、コンテンツ開発プロジェクトの発表があった。

研究会発表

■テーマ1:顧客行動分析による実践的なデータマーケティングのアプローチ研究

発表者はセイコーエプソン小泉 泰慎氏。発表内容は以下の通り。

当研究会は2011年に発足。目的は、顧客行動分析のためのデータ活用である。最初に議論をするためのフレームワークを整備した。議論のためのフレームワークから、「顧客行動分析とはこういうものだ」という型が出来上がってきた。フレームワークに基づいて、2016年度はケース分析を実施した。ただし企業名が入っているため、現状では研究会外へ公開できない。

2017年度はケース分析に継続して取組む。Tipsや成功失敗ポイントを盛り込むことで、より読みやすく役に立つものにする。さらに新規の取組として、実際のデータを使用しての実践的なアプローチ方法の研究に着手する。

研究会は毎月開催し、主に事例のディスカッションを行っている。昨年より、集中討議(合宿)も導入し好評を得ている。年度の最初のタイミングでメンバーが自己紹介をする他、過去の成果物の共有を行っている。

■テーマ2:データマネージメントの基礎と価値

発表者は三菱ケミカルシステムの池田信威氏。発表内容は以下の通り。

当研究会の目的は、データマネジメントの価値と普及で、これまでの主な成果は出版である。データマネジメント「概説書」「ケーススタディ ボトムアップ編」「ケーススタディ トップダウン編」の3冊を出版している。2016年度は「概説書」の改版にむけた企画を実施し、また、普及啓蒙のためJUAS、地方公共団体、官公庁など他団体との連携を行ってきた。

研究会は定例会を中心に、一泊二日の合宿なども行う。2016年度の冒頭には、新たな試みとして「スタートアッププログラム」という4ヶ月の勉強会を導入した。この勉強会によって、新規参加者のデータマネジメント知識レベルが底上げされ、活発な議論とともにメンバーの活動継続への意欲向上にもつながった。

2017年度は、概説書の改版(概説書2.0)を出版予定である。事例の増強や、図の見やすさ改善などを盛り込む。システム部門にとどまらず、さらに幅広い読者層の開拓を狙う。

■データマネジメント・スタートアップ勉強会について

発表者は引き続き、三菱ケミカルシステムの池田信威氏。

JDMC研究会リーダ会(JDMC研究会のリーダ、サブリーダで構成)では2017年度の各研究会の活動前に1⽇3時間で⾏う集合型データマネジメントの基礎知識勉強会=「データマネジメント・スタートアッププログラム」を開催する。 この「データマネジメント・スタートアッププログラム」は、JDMC研究会への新規参加者や研究会への継続参加される希望者を対象に、以下を⽬的とし、皆様の今後のJDMC研究会活動を⽀援するもの。

・データマネジメントの基礎知識の理解と研究員のDMリテラシの向上
・各研究会における実施テーマの進⾏促進⽀援と研究会同⼠の繋がり意識の促進
・JDMC研究会の特徴を事前に知って(感じて)いただくこと

今年は6月第二週に実施する予定。

■テーマ3: MDMとデータガバナンス

発表者は伊阪コンサルティングの伊阪哲雄氏、富士通の水谷哲氏。発表内容は以下の通り。

テーマ3はMDMと銘打っているが、マスタデータを中心としたデータマネジメント全般に係る研究を行っている。議論のフレームワーク整備、適切なIT導入のガイドラインなどを作成してきた。成熟度については、製品情報(PIM)、顧客情報(CDI)に続き2016年度にはサプライヤー情報(SDI)管理の成熟度測定ツールを開発し、また実地の調査を行った。

毎月末木曜の定例会を中心として活動している。成果物の作成だけでなく、MDMに携わるさまざまな立場からのディスカッションの場を提供する。普段聞けない、話せない「ここだけの話」を交換する貴重な場となっている。2017年度は、ディスカッションの場であり続けると同時に、テーマ名の「成熟度」を「データガバナンス」と変え、MDMないしデータガバナンスの企画を進めるための方法論作成に着手する。

■テーマ4: 経営におけるデータ活用ガイド研究

発表者は、クオリカの五十島良一氏。発表内容は以下の通り。

データ経営をどのように実践していけばよいか、経営に取り巻くデータマネジメントの課題と解決策を纏めるための経営戦略フレームワークを策定し、自社のレベルを客観的に見える化しデータ活用のあり方を研究している。

  • 取り組み内容

経営に必要なデータは何か?を考えると、何が売上や利益に影響を及ぼすのか内部要因、外部要因、製品・サービスの市場動向、社会情勢など総合的に分析し、その結果、現況が認識され組織活性化や商品企画、製品需給調整等が行われ売上・利益につながる。いわゆる、経営としてその企業の弱点を「気づかせ、対策を打つ」ことが可能になる。そのためには、本質的な真のデータマネジメントを実現していくことが重要である。 本研究会では、経営視点に立った時、社内外のデータを集めてどのように使えるようにすべきかを追求

し、経営におけるデータ活用のあり方を研究してきた。

①業種別の業務モデル定義

②データ経営フレームワークとデータの関係を調査・検証

③データ活用難易度の評価項目定義

  • 2017年度の活動について

・データ経営の在り方について、企業へのトップインタビューを実施し、「データ経営」の勘所を取りまとめ、データ経営ガイドの策定・公開を行っていく。又、本研究会参加企業、又はJDMC会員企業へのデータフレームワーク適用の実地検証を行っていきたい。

【仮説】・業種・業態別の業務モデルから事業機能や事業機能間でのデータの流れと課題・あるべき姿を深堀する。

【調査】・経営を支えるデータ管理の在り方についてユーザー企業へのインタビューを実施する。

【検証】・経営戦略フレームワークの各要素に対し、データの紐付・活用の検証を実施する。

・実際の企業にご協力いただき、経営戦略フレームワークの実地検証を行う。

【改善】・経営戦略フレームワーク、データ活用難易度、並びに法規や規定、JDMCの各研究会と連携し、「経営のためのデータ活用ガイドライン(初版)」を策定する。

■テーマ5:DM実践勉強会 ~経営・業務視点のDMで会社を良くする、自分も良くなる

発表者は、リーダ/清水技術士・診断士事務所の清水孝光氏。発表内容は以下の通り。

【活動概要】
セミナー形式で、経営・業務視点のDM実践のノウハウの講義・演習を実施。
データ視点で経営革新・業務改革による会社の収益向上と、受講生のスキルアップを図っている。

【昨年度の活動実績】
昨年度・2016度の講義・演習内容(全10回)の紹介を行った
①主テーマ(6回)講師:リーダ・清水孝光氏
データ視点で読み解く「サイロ・エフェクト」「イノベーションのジレンマ」
②データ要件定義(2回)講師:データ総研・黒澤基博氏
③データ品質(2回)講師:法政大学准教授・江崎和博氏

【今年度のシラバス】
今年度・2017年度は、DMワークショップに重点を置く
①主テーマ(3回)講師:リーダ・清水孝光氏
独自のDM実践体系(STBM)を活用し、「キャズム2」をデータ視点で読み解く。
ジェフリームーアの最新のマーケティング理論を、「イノベーションのジレンマ」なども含めて解説。
②「技」のDMワークショップ
・データマネージメント基礎(2回)講師:リーダ・清水孝光氏
・データガバナンス&事例(2回)講師:データ総研・黒澤基博氏
・データ品質・ETQM(2回)講師:法政大学准教授・江崎和博氏
③「心」のDMワークショップ(1回)
講師:リーダ・清水孝光氏(日本エニアグラム学会ファシリテータ)
問題発生時の心理的反応や行動パターンを学びコミュニケーション力を強化。(リソ&ハドソンのハーモニクス理論)
④「体」のDMワークショップ(主テーマ等に組み込む)講師:リーダ・清水孝光氏(BASIマット養成終了)
身体の歪みの認知と癒やしの体感による意識カイゼン

【DM実践体系とワークショップの解説】

  • 独自のDM実践体系(STBM)の解説

①Whatの違いを作る:トップダウン(参照系データ)⇒破壊的イノベーション
経営戦略・マーケティング理論等をデータで統合し、データの資産化を実現することで意思決定の最適化を図る
②Howの違いを作る:ボトムアップ(更新系データ)⇒持続的イノベーション
現場主導のカイゼン活動を主体に、データ流を最適化することで組織力強化を図る
③Whyの違いを作る:戦略ストーリー⇒企業文化醸成
トップダウン・ボトムアップをバランスさせ、ノウハウの蓄積による独自の強みを構築し収益力向を図る

  • 「心技体」のDMワークショップの解説

①心:エニアグラムによる意識カイゼンとコミュニケーション力強化
②技:データモデリング、データ要件定義、データ品質管理etc(「なぜデータなのか」等の基礎を含む)
③体:ピラティス・ヨガ等の体系を活用した意識カイゼンの体感ワークショップ

■テーマ6:IoT・AI 研究会

発表者は日本テラデータの金井啓一氏、NEC ソリューションイノベータの宮本良古氏、NTT データの廣瀬裕己氏。発表内容は以下の通り。

  • 研究会概要

本研究会は昨年度より新たにはじまった研究会であり、研究会の目的は、IoT と AI をどうビジネスに生かすのかを研究することである。まず IoT・AI に関する様々な情報を収集するところからはじめ、ビジネスにどう生かすか、さらに IoT・AI におけるデータマネジメントはどうあるべきかを追求している。また、参加メンバーが自社に戻った際に IoT・AI ビジネスに役立てることも研究会の狙いである。

  • 2016 年度活動内容

昨年度の活動状況としては、注目の集まっているテーマであることもあり、非常に多くのメンバーに参加していただいた。また、ベンダー企業だけでなく、ユーザー企業も多く含まれていることから、様々な業界の観点から IoT・AI を捉えることができることができるというところが研究会の特徴である。 昨年度の研究会の進め方としては、IoT 分科会、AI 分科会に分けて活動を行った。各分科会の活動内容は下記のとおり。

<IoT 分科会>

まず IoT 分科会では、大きくデマンド側(事業側)とサプライ側(IT 側)の両面から研究を進めることを方針とした。デマンド側の研究では、活用目的を分類するとともに、活用目的ごとのユースケースを抽出し、事例研究を実施した。また、デマンド側の研究成果では、IoT システムの基本構成の各要素に対して、注目すべき技術やソリューションの調査を実施した。また、製造業における具体的な IoT データの抽出も実施した。さらに、従来システムと IoT システムのデータマネジメント観点の違いを抽出した上で、IoTシステム特有のデータマネジメント検討観点を議論した。

<AI 分科会>

まず AI 分科会では、AI の姿を整理するとともに AI、データ、ビジネスの 3 つのアプローチで研究を行った。AI については、本分科会で取り扱う AI を定義し、アプローチごとのアーキテクチャーを整理した。また、データについては、AI 分析に想定されるデータの種類、求められるデータ特性を捉え、システムパフォーマンス実現のためのデータマネジメント基盤を整理した。さらに、ビジネスについては、AI のビジネス活用の分類を行い、事例のイメージ化を実施した。

  • 2017 年度活動予定

2016 年度の課題として、IoT については、物理的なレイヤーとの関係性を明らかにすること、具体的なテーマに絞ること、データマネジメント観点の深堀を行うことなどが挙げられる。また、AI については、ユースケースのパターンの研究を行うこと、AI のデータマネジメントを検討すること、知的財産権・個人情報保護を検討に加えることなどが挙げられる。 2017 年度の方向性としては、IoT の活用・AI への取り組みを通じてビジネスに貢献するためには何をすべきかを具体的に研究する。また、IoT・AI をデータマネジメント観点で捉え、あるべき姿と実現方法のガイドラインを策定することに挑戦するつもりである。

■テーマ7:新研究会「マーケティングシステム活用研究会」

発表者はECマーケティング人財育成の石田麻琴 氏。発表内容は以下の通り。

  • 自己紹介

「石田とは何者?」という方がほとんどでしょう。実は3月のデータマネジメント2017のアーリーバードセッションにて講演をさせていただいている。JDMCには5年ほど前から講演会に参加させていただき、昨年正式に会員になった。私自身は元々ネットショップの運営者でユーザー側であった。Eコマースは「データ活用=売上」の最たるビジネス。「データを活用できる人を育てる」という思いを持ち、現在のECマーケティング人財育成というコンサルティング会社を立ち上げた。

  • 研究会概要、趣旨説明

本研究会では、「マーケティングシステム」の研究を行う。研究会名に「活用」という名前が入っているとおり、「機能軸」ではなく「活用軸」での研究会だ。研究のテーマは大きく二つ。一つはマーケティングシステムの導入までの研究で、もう一つはマーケティングシステムを導入してから活用するまでだ。システムが人に使われ、実績に繋がり、会社の文化になるためのポイントを皆さんと研究したい。

  • 対象者、研究会頻度、難易度、アウトプット

今期の活動としてマーケティングシステムのテーマを「マーケティングオートメーション(MA)」に絞る。従って、今期は「マーケティングシステム活用研究会〜MA編〜」だ。マーケティングシステムの選定・導入・運用に困られているユーザー企業、サービスのレベルアップを考えているベンダー企業の皆さんに参加いただきたい。

研究会頻度は月1回、現状全4回の予定で想定。難易度は初級〜中級。リーダーの私自身もMAについてはズブの素人だ。アウトプット、成果物については検討中。参加者の皆さんと研究会を進める中で決めてゆきたい。

  • スケジュールと予定

6月下旬の第一回の研究会からスタートをして、全4回のスケジュールを予定している。各回の想定テーマを提案資料の中に挙げているが、あくまでイメージ。第一回の研究会時に参加者の皆さんとすり合わせしたい。ゲスト講師をお呼びしてのスクール形式の研究会も予定している。詳細はこれからにだが、ご期待いただきたい。

  • 最後に

私自身、JDMCに参加してから日も浅く、研究会の構成や進め方もわかっていない状

態で、若輩者であるので、ご迷惑をかける部分もあるかと思う。まっさらの状態から始まる研究会だが、新しいものをつくっていける機会でもあると思っている。JDMCの活動に積極的な皆さんはもちろん、活動に参加しきれなかった方やご無沙汰になってしまっている方も歓迎。皆さんとデータマーケティングの「活用軸」の研究を深めたい。

■データマネジメント・コンテンツ開発プロジェクト(CDP)

発表者は日本テラデータ金井啓一氏。発表内容は以下の通り。

  • 概要

本プロジェクトの目的は、「JDMC はデータマネジメントの専門団体である」という認識を世の中に確立し、「JDMC に参加すれば、こんなコンテンツが手に入る」といった会員メリットも創出することである。そのために、研究会を中心に成果物は作成されているが、データマネジメントの視点で体系化された知見やノウハウが十分に発信されているとは言えず、有用なコンテンツを開発し内外に公開することが必要である。
会長特命プロジェクトとして、理事企業から開発メンバーを出し、約6 ヶ月を1期として成果物を開発してきた。

  • 取り組み内容

データマネジメント(DM)のコンテンツ開発に当たり、まずそのToBe の枠組みを検討し策定した上で、その中味のコンテンツの作成を進めた。
①JDMC 保持のDM コンテンツの検証
・JDMC 発足当時の理念や目標が達成されているか検証した。
・現在存在するコンテンツの棚卸をした。
②DM コンテンツのToBe の枠組みの検討
・ データマネジメントに携わる組織・人に必要とされる「様々な情報」、および企業に対するデータマネジメントの啓蒙に必要な「様々な情報」のToBe の枠組みを検討した。
③DM コンテンツのToBe の枠組みの策定
・ データマネジメントを実施・運営・啓蒙するに当たって必要とされるデータマネジメントの知見やノウハウの「全体体系のToBe の枠組み」(案)を策定した。
④コンテンツ開発の開始
・各ToBeの要素の第1期コンテンツ開発(2017年1月から6月)を開始し推進中。

  • 2017年度の活動について

2016年度から継続し、全体体系図と各ToBe の要素のコンテンツ開発を順次進める。
・コンテンツ開発の第1 期は2017 年1 月から6 月中旬までに作成、8 月までに査読、10 月までに公開する予定。
・第2 期は、9 月から計画策定、方針決定、11 月から開発(作成)開始予定。

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