(セミナー部会・脇本 康宣)
2019年1月28日開催の第43回定例セミナー特別編は、株式会社NTTデータのINFORIUM豊洲イノベーションセンターをお借りし、「データ利活用に関する課題と政策」と「データのマネタイズに不可欠となるデータマネジメントとは?」の2つのテーマでご講演いただいた。質疑応答は活発に行われ、大盛況のうちに終了した。
講演1:「データ利活用に関する課題と政策」
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐 笠井玲子
IoTやビッグデータ、AI、ロボットなどの技術が大幅に進化し、政府は、これまで実現不可能とされていた「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society 5.0)」を目指そうとしている。そのためにはデータの利活用がより重要になり、データは「21世紀の石油」ともいわれているほどである。
Society 5.0の実現に向けて、さまざまなつながりによる新たな付加価値の創出と融合を促進させるために「Connected Industries」を進めるという考え方を示し、政府はその実現に向けてデータに関連する諸制度を多岐にわたり整備している。その制度の内容や公開されているガイドライン、支援事業などの取り組みについて、幅広くかつ具体的に語っていただいた。
1.生産性向上特別措置法とデータ共有事業者の事例
2.「AI・データの利活用に関する契約ガイドライン」とAI事業者支援事業
3.データ流通に関する技術面の支援
4.データ利活用の課題と今後の取り組み
各企業がデータを収集して分析・利用し、新たなサービスを立ち上げる際、その手助けとなる制度やガイドラインが豊富に提供されているということを知る貴重な機会になった。
従来企業は、独立、対立しながら競争力を確保してきた経緯があるが、今後はこのような政府の取り組みをより深く知りながら、産学官民一体となって、内部と外部のデータを有機的に融合させて、オープンイノベーションで新たな付加価値を創り出すことが、データマネジメントに関わる我々の次なるミッションの1つではないかと感じた。
講演2:「データのマネタイズに不可欠となるデータマネジメントとは?」
JDMC事務局長 株式会社リアライズ 代表取締役社長 大西浩史
JDMCはデータマネジメントの重要性の普及展開と実践的なデータマネジメント手法の確立を通じ、日本企業・組織の国際競争力強化に寄与するという目的で2011年4月に設立された。JDMCでは年1回のカンファレンスを開催しており、申込者数が10%ずつ増加し2018年には1,750名を数えるほどの活況ぶりである。
なぜ今データマネジメントに注目が集まっているのだろうか? その理由は、大きく2つある。
1つ目は、多くの組織において各部門の業務は「回っている」が、全社的に新しいビジネスで活用しようとすると”Conflict Data”(=矛盾したデータ)が障害になっているのではないかと述べた。さらに”Conflict Data”によって、ITが間違って動く可能性もあり、さまざまな問題を引き起こし、データが活用できない以前に害悪である。
2つ目は、「データ品質が悪い」、「意味が不明確」など信頼性が低い流通したデータを利用しても、そもそもマネタイズできないどころか、早晩大きな問題を引き起こす可能性がある。
では、”Conflict Data”と戦い、データの利活用や流通に関する問題を解決するためにはどうすればよいか? それはデータマネジメントを継続的に行うことが不可欠である。データの品質を担保し、組織内のデータを整備した上で、組織内外のデータの意味の違いを吸収していくことが、結果的にはデータに価値をもたらし、組織の競争力につながると締めくくった。
JDMCの「データマネジメント概説書」において、データマネジメントとは「データをビジネスに活かすことができる状態を継続的に維持さらに進化させていくための組織的な営み」と定義している。まさに地道な取り組みが重要であることを改めて認識させられた講演であった。
データマネジメントについて詳しく知りたい方は「データマネジメント概説書(JDMC版)Ver2.0」をご一読ください。
<参加者感想>
・一般に公開されている情報からは読み取れないところも含め紹介いただき、大変参考なった。
・大変勉強になり、今後継続的に貴団体の活動に参加したい。
・政府側が考えや活動内容が聞けて非常に勉強になった。
・経済産業省のデータ利活用に関する活動の理解が深まり、社内関係者にも展開させていただきました。
・盛りだくさんで消化不良でした。
・国レベルのデータ活用に関する施策に関してわかりやすく参考になった。
・普段聞けない政府の話で大変興味深かった。
・身につまされる話で非常にわかりやすかった。
・データに関する不都合がある場合、情報システム再構築が必要になるはず。是非ディスカッションしたい。
・幅広く、かつ深く、また具体的な内容で大変参考になりました。
・経産省の取り組みなど普段聴講できない内容で興味深く聴講させていただきました
・限られた時間内に多くの情報を共有頂きありがとうございました。
・経産省で考えるデータに関する課題がよくわかりました。課題に対してJDMCとして意見を出していけると良いと感じました。
・課題と政策についてよく理解できた。国もいろいろやってくれてるが、伝わってないことがもったいないと思う。
・なかなか普段聞けない国の政策のお話をお伺いできて、とても勉強になりました。
・知らない事も多くとても濃い内容でした。
・経産省の取り組みが良くわかりました。
・企業の枠を超えたデータ利活用を行う際の課題を体系立てて理解することができ、有意義であった。
・企業が持つデータを利活用する際に発生しがちな問題、課題を知ることができ、改めてデータ利活用の難しさを考えさせられる内容であった。
・経済産業省の講演は大変有用でした。これからのデータ活用推進の中でヒントも頂けたすかります。
・データの精度を高めるにはデータを登録する側のメリットがないと協力頂けない。各社おそらく苦労されているだろう。このあたり具体的に知りたい。