第19回JDMC定例セミナー報告

2015-02-15

2013年9月27日、第19回JDMC定例セミナーが日本記者クラブで開催された。1つ目の講演では、金融サービスの拡充や顧客との関係強化を目指す紀陽銀行における仮想統合データベースを用いたデータ分析事例を、導入に携わった紀陽情報システム株式会社 営業本部企画室室長 冷水史和氏が解説した。
2つ目の講演ではオイシックス株式会社 システム本部 本部長 山下寛人氏が登壇。売上を堅調に伸ばす同社のビジネスに貢献する、仮説検証に基づく販売促進やキャンペーン施策の効果測定といったデータベースマーケティングの舞台裏を紹介した。

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◆講演1
「紀陽銀行におけるBI基盤構築事例
『データ仮想統合』の利点、効果、課題を中心に」

講演者
紀陽情報システム株式会社
営業本部 企画室 室長
冷水史和氏

レッドハット株式会社
製品・ソリューション事業統括本部
ミドルウェア事業部
事業部長
岡下浩明氏

 

和歌山県や大阪府を中心に全国で107店舗(2013年3月末時点)を展開する紀陽銀行は、きめ細かな金融サービスを提供するため、2000年以降、段階的に情報系システムを拡充してきた。
分析対象となるデータは、月間400万件にのぼる ATMでの取引データや、カードローンなど100万件に及ぶ与信審査データなどだ。ところが、「システムがサイロ化しており、データベース(DB)が連携されていなかった。データは増えていたが、各部門が保有するサブシステムのDBからデータを抽出するのに手間や時間を要し、十分に活用されていなかった」(冷水氏)。
全国の地銀に先駆けて基幹系システムのオープン化などに取り組んできた同行だが、目的別に導入してきたサブシステムの数は120以上に達していた。
そうした中で、レッドハットから提案を受けたのが、JBOSS Data Service(JDS)によるDBの仮想化である。
「DBは変化し続ける生き物のようなもの。物理的に統合するのは難しく、仮想化に注目した」と冷水氏は述べた。JDSはエンタープライズ・サービス・バス (ESB)により分散したデータソースをあたかも単一ソースのデータを利用しているかのように統合するシステムだ。併せて、BIツールとして「Quick Viewer」を導入した。仮想統合したDBをシングルビューで閲覧、分析することができる。たとえば、分析を行う担当者が、帳簿システムの中にある「手数料」という項目をクリックすると、それに紐づいたトランザクションデータ(「現金引出」などの明細データ)を次々と掘り下げて、より詳しい明細情報を把握することができる。新システムで検索・分析できるようになった項目数は500以上にのぼる。預金口座開設数を増やし、給与振込などで積極的に活用してもらう施策の立案などに、これらの結果を役立てている
「インメモリー上でデータを展開するQuickViewはデータマートを構築する必要がなく、データ量が増えても高いレスポンスを維持している。あるレポート作成業務は、従来3日かかっていたが、今ではわずか10秒ほどで完了できるまでになった」と冷水氏は業務におけるスピードアップと省力化を効果に挙げた。
冷水氏は、今回の取り組みで注力したポイントに、データの統合、仮想化、OSSの活用、アジャイル開発、利用者から要望によるイノベーションの5点を挙げる。
開発では、利用部門の担当者から画面のデザインや機能について要望を挙げてもらい、それを即座に反映するように心掛けた。基幹系システムの構築ではウォーターフォール・モデルを利用したが、この情報系システムではアジャイル開発のアプローチを採用した。
「パイロットシステムを2名2.5カ月(5人月)で開発した。利用者に実際に画面を見て操作してもらうことで改善要望をヒアリングした。現場の真のニーズをつかむには、早く作って活用してもらうことが大切だ」(冷水氏)。
将来的なデータ量の増大を見据えつつ、物理DBに直接手を加えない仮想化データ基盤を手にした同行。ソーシャルメディア経由など外部のオープンデータを取り込んでビジネスに活用する戦略が現実味を帯びてきた。

 

◆講演2
「オイシックスのデータ活用・仮説思考に基づくメールマーケティング」

講演者
オイシックス株式会社
システム本部
本部長
山下寛人氏

 

宅配、EC、リアル店舗などの販売チャネルを介して、生産者と消費者をつなぐオイシックス。安全性に配慮した生鮮食品を中心に約3300品目の食材を、自社構築の物流センターをハブにして全国に提供している。育児で忙しい30代前後の主婦や共働き夫婦、ファミリー層、ビジネスパーソンなど利用者は多岐にわたるが、売上の大半は定期購入者による商品の購入で占められる。
同社がデータベースマーケティングに着手したのは、2000年の創業からまもなくのこと。「未購入」「リピート」「定期購入」という属性で顧客情報を分類し、適切なキャンペーン施策や訴求商品を行うために開始した。「定期購入されるお客様の中でも一回あたりの購入金額が少なく、注文頻度が高い場合は、割引ポイントの情報を訴求する、というようにセグメント別に施策を変えている」(山下氏)。
同社社長がマッキンゼー・アンド・カンパニー出身であることから、データ分析において仮説検証型のコンサルティング手法を全社的に取り入れているのが特色だ。
「仮説を立てる場合、『売上をあげるには』という問題を『商品の単価をあげる』『来店者数を増やす』といった要因(仮説)に分解していく。あらゆる仮説が出揃ったならば、その中でビジネスへのインパクトが大きい仮説を抽出する。そしてABテストや過去のデータなどを用いてその仮説の有効性を検証、判断している。ただやみくもに施策を打ってもうまく当たることは少ない」と山下氏は説明した。
データ分析システムは、これまで社内で独自に開発してきた。「現場から『仮説検証用に、こんなデータを出してほしい』という要望が相次ぎ、業務を効率化するために、SQLクエリを簡単に実行できる受注集計機能を開発したのが始まり」と山下氏。EC事業部ではこのシステムを用いてサイトを訪れる利用者の購入完了までのCVR(コンバージョン率)や販促メールの開封率、CTR(Click Through Ratio)新しい打ち手の効果測定などに、経営企画では全社の予実管理、着地予測などに活用している。
ただ、高度な分析を行うために、データの抽出作業も複雑化している。
「万一、個人情報保護法などに抵触するミスがでれば会社の信用を損ないかねない。そのため、データ抽出業務は社外の専門家にアウトソーシングした」(山下氏)。データ抽出の際は依頼書に基づいて専任の担当者が実施、目視によるダブルチェック、サンプルデータの照合などで二重三重の防止策を講じている。
今後は、さらに分析精度の向上を図るため、海外製のBIツールであるDOMOを分析プラットフォームとして導入しようとしている。「生鮮食品は日持ちしないため在庫を適正化するには需要予測が欠かせない。またセグメント分割的なアプローチの限界を超えるため、よりパーソナライズされたレコメンデーションを顧客に対して行いたい。統計解析やマイニングの手法に関心を持っている」と山下氏は展望を語った。

以上の2講演に続く質疑応答では、「BIを導入する予算を確保するために上役をどのように説得しているか」という質問が出た。オイシックスの山下氏は、「着地予測がBIを使う場合とそうでない場合で1000万円も異なることがある。BIによる精度の高い予実管理によってその導入コストを上回るメリットが得られると会議で説得した」と語った。なお、どちらのケースでも、現場の利用者からあがる分析ニーズやシステムの使い勝手に対する要望に素早く応える工夫が見られる。社内に分散したデータを統合するメリットを早期に実感してもらうことも現場を巻き込むカギとなるだろう。

 

(文責・柏崎吉一/エクリュ)



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