日本データマネージメント・コンソーシアム

レポート

データマネジメント2020レポート

事務局 遠藤秀則

 2020年3月5日、JDMCの年次カンファレンス「データマネジメント2020」が開催されました。

9回目の開催となる本年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から会場開催を中止し、ライブ中継での実施となりました。その模様をレポートします。

無観客、ライブ配信でしたので、例年のような大会場での熱気というのはもちろん無かったのですが、PCが並び床にはケーブルが走っているような環境のスタッフルームにエンジニアが集結し、映像配信以外でもTwitterやInstagramなどでリアルタイムに参加者と対話している光景は、これはこれですごい熱気となりました。

 

 

【主催者挨拶】
アーリーバードセッションに続き、主催者を代表してJDMC 栗島会長から挨拶があった。
「今回のカンファレンスは『データを資産化し、価値を創出せよ』というテーマを掲げた。昨今データ活用あるいはそれを活用したデータトランスフォーメーションといった言葉が、いろいろなところで使われているが、データそのものをいかに収集してきちっと管理、ガバナンスを効かせていく、そしてさらにはセキュリティを含めた安心安全といったものを提供しその上に新たな価値というものを作っていくということが重要でもあり、また難しいところにきていると考えている。是非このカンファレンスの講演がヒントになり、皆様のビジネスに活用していただくこと、また併せてこのような状況ではあるが、日本経済がさらに元気になっていくという一助になればと考えている。」

 

【基調講演1】
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 増島氏より「ブロックチェーン技術がもたらすビジネスインパクトと共創によるDX期のビジネス革新の姿」と題し基調講演いただいた。

ブロックチェーンが生まれた当初は何にでも活用できる夢の技術のようにもてはやされたが、使われてきて始めてわかってきたことがある。これまでの業務をそのままするならブロックチェーンでなくてもよいということ。例えば、クライアントサーバー型の業務で、そこに携わる人やシステムの信頼が確保されているならブロックチェーンは必要ないということである。

ではなぜブロックチェーンを使うのか。Society5.0の時代にフィットするからである。
昨年経産省が「ガバナンス・イノベーション」を発表した。技術やサービスがサイバー空間を起点として革新されていくのに伴い、これらのリスクをコントロールするガバナンス自体にも、革新的な方法が導入さなければならない。その実現には、イノベーションの中心的な担い手となる企業や、多様な価値観の担い手である個人による積極的な関与が不可欠である。国家・政府のみではなく、企業やコミュニティ・個人が協力してガバナンスの担い手となるような抜本的な規制改革、「ガバナンス・イノベーション」に取り組むことが必要であるというものである。これまでのように、国が何でもルールを決めるのではなく、企業や団体、個人も役割分担していこうというのが特徴である。ルールは法律だけではない。規律、マーケット、社会規範、…、これらもである。サイバーフィジカルな空間で、いろいろなプレーヤーが協力しながら社会を回す、このアーキテクチャにブロックチェーン技術がフィットするのである。

法律家から見ると、技術者が扱うプログラムのコードも法律家が作る契約書も同じように感じると増島氏は続けた。どちらも命令形式、シンプルかつ効率的(運用面にも問題ないこと)であることが求められることなどからである。「民法」が「シビルコード」と表現されるのも納得である。

最後に次のようなメッセージで講演を締めくくった。
ブロックチェーンのことをよくわからない、不確実だという方も多いと思う。インターネットも出始めの時はそうであった。しかし、わからないからと背を向けていた人たちは淘汰されてしまった。ブロックチェーンも同じだと思う。不確実と思うだけで検討を進めないのは間違いなのではないか。

 

【基調講演2】

国立研究開発法人 理化学研究所 三好氏より「「ビッグデータ同化」研究の最前線
~ゲリラ豪雨や台風の予測から、その先の予測科学へ~」と題し基調講演
いただいた。

「データ同化」あまり耳にしない言葉ではないでしょうか。三好氏はデータ同化は橋と考えるとわかりやすいであろうと説明している。例えば天気予報の場合、アメダスなど実際にセンサが観測するデータとサイバー空間でモデル化したシミュレーションを融合することで、より「確からしい」予報が可能になる。この観測データとシミュレーションの間に橋をかける役割がデータ同化である。

今、理化学研究所でコンピュータの中に作る仮想的な地球は実際に観測できる地球とほぼ変わらないそうである。京コンピュータで870mメッシュで世界をシミュレーションできた。この解像度(2013年)は今も世界一である。

気象学の最大難問のひとつは台風の強さを予測することだそうだ。「特に急発達するところを予測し危険喚起に活かしたい。「京」の次のスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」の計算速度は京の100倍、3.5Kmメッシュ1000のサンプルを作り(ガウス分布が見えるから)ビッグデータ同化にとりくむ。現実データの自然をサイバー世界に持ってくる。それにより、人間活動に対する備えを出していきたい。」と三好氏の解説は続いた。
このように、演繹的推論と帰納的推論を掛け合わせて気象以外にも利用できるようになるのではないかと考え「予測科学」に取り組んでいるそうである。「森林の変化、人口動態などのように、対策案を現実世界で試しに実施することが困難な課題対策のシミュレーションへの活用を考える。実際の実験に置き換えられるシミュレータを用意したい。」喫緊の課題である感染症の拡大防止にどんな対策がどの程度有効かシミュレーションするといった具合である。
三好氏の先端的なデータ同化理論の開発は、気象だけではなく様々な分野での活用が期待される研究であると感じました。

 

最後に、今年度もデータマネジメント2020が無事開催できたことに、この場をお借りして御礼を申しあげます。急遽ライブ中継に変更したにもかかわらずご理解ご対応いただきましたスポンサー各社様、ご講演者様はじめ、ご視聴していただいた皆様、また、ライブ配信のノウハウとカンファレンス専用のコンテンツプラットフォームをご提供いただいたBOX社の三原様、中村様、辻村様、Jey様、Zoom社の加賀様、永瀬様、視聴者のFAQに対応いただいたエンジニアの会の寺内様、峯岸様、SNSで大いに盛り上げていただいた若手の会の鍋倉様、運営メンバーのワンベスト社の小松様、長井様、桐原様はじめ関係各位、全ての皆様のご協力なしには、このカンファレンスの成功はありませんでした。深く御礼申し上げます。来年また皆様にお会いできることを楽しみに、レポートを終了させていただきます。(写真左;BOX社にてライブ配信実践、本番5日前。写真右;Zoom社+エンジニアの会チームの本番技術サポート)

なお、ライブ中継に変更となったためJDMC 2020年データマネジメント賞 表彰式は5月の総会の場に延期、また会場にパネル展示する予定であった「研究会紹介」はこちらをご参照ください。
<https://japan-dmc.org/?p=12029>

当日の様子
Instagram
https://www.instagram.com/jdmc_secretariat/?hl=ja
Twitter
https://twitter.com/search?q=%402020_jdmc&src=typed_query

 

RELATED

PAGE TOP