日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.97】三菱UFJフィナンシャル・グループ 野嵜俊平さん、 60人規模のBI推進CoEも。インフラ・DB・人材、「三位一体」で進めるデータ利活用推進

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、株式会社 三菱UFJフィナンシャル・グループ 野嵜 俊平さんです。


皆さま、JDMCでは大変お世話になっております。株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの野嵜と申します。

JDMCには2020年に入会して以来、データマネジメント領域でさまざまな知識の学習や経験をさせていただき、大変感謝しております。

当社は国内で約3,400万人の個人、約110万社の法人のお客様を擁する金融機関です。2021年度より「世界が進むチカラになる。」というパーパスを掲げ、各ステークホルダーが抱える問題を起点とした戦略により課題解決に取り組んでいます。

パーパスの実現に向けた重要な戦略の1つとして、「デジタル(DX)」「サステナビリティ」「カルチャー変革」を切り口とした「企業変革」があります。私は、データ領域から企業変革を推進する「経営企画部 経営基盤改革室」に所属し、全社的なデータ利活用の加速とデータ基盤整備に向けた企画業務に従事しています。

今回はデータ利活用推進に向けた取り組みと、取り組みから得られた気付きをご紹介できればと思います。

データ利活用推進に向け、「インフラ」「データベース」「人材育成」の3点に注力

当社のデータ利活用推進に向けた取り組みは、データ基盤整備(インフラ)、データ標準化(データベース)、BI推進(人材育成)の3点に注力して進めています。それぞれ詳細を説明します。

①データ基盤整備(データ収集・集約)

私が所属する経営基盤改革室では、2019年にクラウド環境を用いたデータ基盤を構築し、社内に散在するデータの集約を順次進めています。

「データを使いたいけど、どこにあるか分からない」「使いたいデータがそもそもあるのか分からない」といった社内の声を受け、データを集約することで、データの探索・取得にかかる業務時間の削減、負荷の軽減を図るともに、多様かつ膨大なデータを分析・活用することによる新たなビジネス・付加価値の創出を目指しています。

②データ標準化(標準化データベースの構築)

当社では、同じデータ項目名であっても、定義や形式が異なるデータが存在しており、データ品質の統制に関しても課題を抱えています。

また、操作性・共用性の高いデータベースも十分に整備されていないことから、データの定義・形式などを統一したデータベースの構築を中長期的に進めています。ニーズの高いユースケースから、段階的にデータの標準化を進めていく「アジャイル」的な対応をすることで、効果発現の早期化と柔軟な変更・改善を志向しています。

データ標準化を進める中で、利用者にどのようなデータ(定義・項目)なのか、求めるデータがあるのかどうかをすぐに確認できるような辞書(データカタログ)の整備も並行して進めていく予定です。

③BI推進(データ人材育成)

上記2つに加え、データ利活用に向けて、データを使いこなす人を育てることも必要と考えています。

当社では、以下の3ステップを念頭にデータ人材育成を進めており、現在はStep2「BIの実践力強化」に注力しています。BIを活用することで、効率的かつ効果的なデータ分析・活用に係る知識・スキルの向上、データ起点のビジネス成功体験の積み上げを図るとともに、Step3のようなAIなどのより高度なデータ活用、ひいては全社のデータリテラシー向上、データ活用のカルチャー醸成にも繋がると考えています。

<人材育成のステップ>

Step1:「データナレッジ・スキル習得(職層別の研修・全社員対象eラーニング)」

Step2:「データ活用の実践力の習得(BI活用)」

Step3:「データ活用による変革に向けた思考力・構想力の強化(AI活用)」

また、Step2の具体的な取り組みとして、昨年10月に私が所属する経営基盤改革室に新たに発足した「BI推進のCoE(※)」体制があります。

指名・公募で選ばれた人材(兼務者・社内副業者)がCoEの中で、スキル保持者の指導・サポートのもと、BIを用いた業務改善等に取り組みながら、データ活用のスキルを習得に励んでいます。スキルを習得した人材は「BIエバンジェリスト(伝道師)」として本部各部・営業店でBI活用を推進していくことを目指しています。現在CoEは60人ほどおりますが、今後も受け入れを拡充していく予定です。

※Center of Excellenceの略。全社横断的な取り組みを推進するための中核的機能


データ利活用は全方位を「同時」に進めることがキモ、ユーザーには「伴走型」の支援を

インフラ(基盤・ツール)、データ(品質・カバレッジ)、人材(データの使い方)、という3つの取り組みを進める中で気付いたのは、3つ全てを同時並行で強化する体制や姿勢が大切だということです。

例えば「データ標準化が完了しなければ、利活用ができない、進まない」というように、各々の取り組みを1つずつ進めていくスタイルだと、どうしても時間がかかってしまうでしょう。

同時並行で、進められるところから取り組むことで、短期間で効果を実感でき、関係者の理解と共感を得るとともに、「データ利活用の効果発現(早期化)」→「新たなデータニーズ・要件の特定」→「インフラ・データの強化」→「更なるデータ利活用」といった好循環に繋がっていくのではないかと考えています。

また、ユーザーとの関わり方も重要なポイントです。私の所属する経営基盤改革室では、データ利活用を進めたい部署の課題・ニーズをしっかりとヒアリングした上で、分析の手法レクチャーやアウトプット(ダッシュボード・レポート)の設計・作成サポートを行うといった「伴走型」の利活用推進を実施しています。

以前、別のプロジェクトでシステムやツール(+マニュアル)を提供して「あとは自由に使ってください!」という、一方的・放任的なアプローチを採った結果、思うように普及しなかったという事例をふまえ、CoEなど通じて、ユーザーとの距離が近い伴走型のスタイルを重視するようになりました。

伴走型は一見時間がかかるように思いますが、レクチャーやサポートを受けた一人ひとりにデータそのものやデータ分析ツールの重要性・有効性を実感してもらうことで、その後の自律的な利活用に繋がるケース(類似業務へ応用、勉強会による普及活動など)も出てきており、最終的には全社的な利活用の加速に繋がるものと考えています。

データを使いたい人たちの想いに寄り添い、実現に向けて協力、共創していくことが、データ利活用の鍵であると信じて、これからも「伴走型」の利活用推進に注力していきたいです。

今回、データ利活用の取り組みと気付きについて少しお話ししましたが、私自身、データマネジメントに携わってまだ日が浅く、試行錯誤の毎日です。同じような課題や悩みを抱え、取り組まれている皆さまからの意見やアドバイスはとても有難く、刺激を頂いています(リレーコラムも楽しく拝見しています!)。

今後もJDMCで、皆さまとの交流を通じ、多くのことを学ばせていただければと思っています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


野嵜 俊平(のざき しゅんぺい)

株式会社 三菱UFJフィナンシャル・グループ
経営企画部 経営基盤改革室

2008年三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に入社。営業現場、調査業務を経験した後、2018年よりデータ基盤の構築プロジェクトに参画したことをきっかけに、システム開発・データマネジメント領域の奥深さ・面白さに触れる。その後、グループデータベース構築プロジェクト、データ利活用推進に従事し、2022年より現職。全社的なデータ利活用、データ基盤整備に資するデータ戦略立案・推進に取り組む。

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