日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.20】冷水史和氏 「アジャイル型のデータマネジメント」を考える



 
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、紀陽情報システムの冷水史和さんです。

今回、JDMCのリレーコラムを担当させていただきます紀陽情報システムの冷水(しみず)と申します。どうぞよろしくお願いします。現在、私は「仮想データ・BIツールの連携」について取り組んでいます。その中で感じたことを書かせていただきます。
 
最近、ビッグデータの話をすると、ソーシャルメディアやWebサイト、センサー関連のデータがよく取り上げられますが、足元を見ると社内にもたくさんのデータが存在しています。しかし、ビッグデータを扱う仕組みがなかったこともあって、活用されずに捨てられてきているのが現状です。
 
20年ほど前から、EUC(End User Computing)が進み、利用者部門のデータ処理効率は向上しました。しかしながら今となってみると、専用業務システムは多々残ってはいるものの、利用者部門での利用(集計・作表)方法はExcelに集約されてしまうのではないかと思います。何がEUCだったのか、とにかく利用者部門でデータさえ取り込めれさえすれば、後はExcelをそれなりに使いこなす。これで事が足りているのでしょう。あるいは、Excelを使うことが、1つの情報システムの利用の典型となっていて、その便利さゆえにそれで満足してきたこともあると思います。
 
ところが2、3年前からビッグデータの活用について注目されるようになり、膨大かつ多岐にわたるデータを扱うのに、Excelでは処理できなくなってきました。そのため、何らかの処理基盤やツールが必要となり、ビッグデータを高速に処理・分析できる仕組みが求められるようになったのはご存じのとおりです。
 
そうした中で、従来高価であったハードウェアやメモリがずいぶん安価になったこともあり、インメモリを利用した高速データ処理の仕組みも、最近では安く手に入るようになりました。今後、こうした高速なデータ処理の仕組みを活用して、システム横断的にビッグデータが扱えるようになっていくことでしょう。
 
今までは業務システムごとにシステムを構築してきたため(部分最適)、各業務システム単位に同じような意味のデータを重複で保有していても、利用者側からすると(部門に閉じた中でのデータ活用であって)さほど大きな問題となりませんでした。ですが、これからは、新鮮で品質の高い分析結果などを提供していくにあたり、業務システム間に存在する重複データの整理やデータクレンジング処理が欠かせなくなってきます。
 
例えば、重複データがあった場合、どのデータが最新データなのかデータの鮮度が問われることになります。今後、業務の周りに大量データが溢れる中で、鮮度の高いデータをいかに集めるか、また、いかにデータを適切に選別してユーザーに提供できるかカギとなるわけです。
 
とは言っても、これだけ大量のデータです。しかも、今後ますます増えてくるデータに選別をかけていくのは至難の業ではあります。どれほどシステムやツールが安くなり、高速に処理できたとしても。
 
必要なアクションを考えてみましょう。「今、何をするのか」「どのようなデータ分析をしたいのか」「そこに必要なデータは何か」……そうしたデータへの取り組み方の根源から考え、整備していくことがスタートになるかと思います。このような取り組みを繰り返して、いわゆるPDCAサイクルを回しながらブラッシュアップし、対象データの業務範囲を広げていく方法が考えられます。これはまさしく、アジャイル型のデータマネジメントと呼べるものではないかと考えます。
 
データは生き物です。日々変わり、更新され、また成長もしていきます、しかし、企業内に取り込んでいるデータは、その時点から何らかのトリガーがないかぎり更新されないため陳腐化していきます。データ項目には、不変項目と可変項目があり、例えば、生年月日などは不変項目ですが、家族構成や年収等は可変項目であり、「何年も更新されていないのはおかしい。最新のデータへの見直しが必要だ」といったアラートを出すような仕組みも合わせて考えていかないと、データ鮮度を保つのは難しいでしょう。
 
また、時間を軸として、過去・現在のデータを基に未来を推測することがあります。そこにはどんな追加情報が必要か、足らない情報は何か、ちょっとした味付け、スパイスを利かすことで活きたデータ、使えるデータになる可能性も十分にあります。
 
このようなことに日々取り組むことも、データマネジメントの1つだと思います。今までは、データを集めることが難しく、コストを払ってデータを購入したり、営業担当者が訪問ヒアリングをして集めたりしてきましたが、最近ではビッグデータに代表されるように、インターネット上、SNSなどに管理や分析の対象となるようなデータが溢れています。いろいろな種類のデータがあり、また、オープンデータも増えてきています。今後、このようなデータを集め、活きたデータに、使えるデータとして選別し、データの鮮度を維持して、企業戦略に活用していくことが重要になるのではないでしょうか。そこに、大きなビジネスチャンスがあると考えます。
 
 
 
冷水史和(しみず・ふみかず)

1982年4月、株式会社紀陽銀行に入行、翌年からシステム部門に配属、システム部門では企画・開発の責任者を、その後業務監査部門では、J-SOXの導入に携わる。最近では、銀行の勘定系システムの更改(S-BITSプロジェクト)のプロジェクトマネージャーを担当。2011年4月に紀陽情報システム株式会社に出向し、現職。
 
 
 
 
 

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