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会員コラム

【Vol.90】キヤノンITソリューションズ・倪暁白さん、 高度な技術を使わなくても、ビジネスに役立つ価値は生み出せる。データ可視化の可能性

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、キヤノンITソリューションズ株式会社 倪 暁白さんです。


はじめまして。キヤノンITソリューションズの倪暁白と申します。

JDMCには2021年6月に入会して以来、データマネジメント領域でさまざまな知識や経験などを学ばせていただき、大変感謝しております。

キヤノンITソリューションズはSIおよびコンサルティング、各種ソフトウェアの開発・販売の会社です。私自身はデジタルビジネス推進部に所属し、現在は主にデータ活用のプロモーション活動、お客様のBI導入と定着の推進に参画しています。 今回のコラムでは、日々の業務や日常生活におけるデータの可視化について、分析者視点での思いを皆さまに共有できればと思います。

そもそも、データ可視化の「目的」は何ですか?

仕事柄、BIツールを利用したいと考える企業を数多く見てきましたが、意外とその目的がはっきりとしていないケースは少なくありません。

分かりやすいグラフや図表によって、データの傾向や関連性などを把握し、属人化の課題を解決し、可視化の結果に基づいて、新たな気付きを見つけ、素早く意思決定を行いたい──ぼんやりとした理想の状態があるだけでは、せっかく導入したツールも力を発揮できずに終わってしまいがちです。

私が考えるBIツール導入、つまりデータ可視化の効果は、お客様「自身」で業務効率を向上し、コスト削減を達成し、利益貢献を生めるようになる、という点だと考えています。

コロナ禍で在宅勤務の方が増え、注目を集めている「オンラインフードデリバリーサービス」を例に考えてみましょう。時間帯別や地域別のデリバリー数の増減、といったデータがリアルタイムで可視化されるだけでも、迅速に調達などの施策を実施でき、コスト削減や売上の向上に役立つはずです。


データの可視化は言わば「光合成」 数値に「命」を与え、価値を生み出すプロセス

データの可視化や分析を行うことで、ビジネスに役立つ気付きが得られる──。

多くの企業はそのような期待を持ってプロジェクトを進めるわけですが、データが持つ「潜在的な」価値をどのように探せばいいのか。私はそれを業務中によく考えています。

昨今は、AIや機械学習によるデータ解析が脚光を浴びていますが、利用者に数理統計の専門知識やデータエンジニア力が求められるため、全ての企業で実践できるわけではありません。

そこで有力なのが、データの可視化です。私自身、BIビジュアル分析プロジェクトに参画してから、データ可視化の有用性を認識するようになりました。気付きを得るには、現場の方々の力が必要ではあるのですが、どの企業でも実践できる簡易な手段ですし、プロセスも効率的です。

私はデータを可視化させる過程を「光合成」のプロセスのようだと考えています。光合成とは、植物が光のエネルギーを利用し、二酸化炭素と水からデンプンなどの炭水化物を合成し、酸素を放出することです。

データを「植物」に例えると、グラフや図表は「光」でしょうか。可視化という過程を経ることで、単なる数値に意味や解釈(ストーリー)が生まれ、データはパワフルな生命力を持ち始めます。

光のエネルギー(開発設計)を使うことで、最終的に業務や経営に活用できるような価値(酸素)を放出できる。どうでしょう。光合成のプロセスに似ていると思いませんか?

仕事「以外」でもデータの可視化は大きな威力を発揮する──ただし注意点も

データの可視化や分析は、ビジネスの場面で語られることが多いですが、最近、私は業務以外、普段の生活でもデータ可視化の力を活かせるところがあると気付きました。

秋冬を迎え、気温が下がり始めた今、いくつかのチョコレートブランドは新商品を発売しています。スーパーマーケットのチョコレートの棚で、M社はチョコレートの食感をスケールのようなグラフ(図1)で表現していました。なるほど、これなら消費者はそれぞれの商品を食べなくても、自分の好みに沿って商品を選べます。

隣のコーヒーの棚では、K社がXYグラフ(図2)を使い、バラエティパックの中にある、5種類のドリップコーヒーの味を「苦み」と「コク」の二軸で分類していました。ユーザーはこの「味わいグラフ」とも呼べるものによって、商品の特徴が分かるようになり、飲む順番を決められるでしょう。

U社はレーダーチャート(図3)でスイート、アフターテイスト、ボディなどの指標を可視化し、消費者にコーヒー豆の香りと風味を積極的に紹介し、販促を行っていました。今挙げた例はどれも「食感」や「味」といった、感覚的な部分をうまく数値化することで、ユーザーの需要を喚起し、商品選択に悩む時間を減らすことに貢献しているというわけです。

このように可視化されたデータは、さまざまな場面で役立ちますが、気を付けるべき点もあります。例えば、目盛りの設定です。最大値と最小値の設定を変えるだけでも、視覚的に受ける印象がガラリと変わるため、見た人が下す判断に影響が出てしまうでしょう。計算式を使って数値を出す場合、結果が正しいのか確認する必要もあります。「可視化」が持つパワーが大きいゆえに、扱いにも注意が必要なのです。

データの可視化はデータに生命力を注ぎ、データ駆動ビジネスやマーケティングに「酸素」を提供し、企業や社会に持続可能な開発目的の実現に貢献すると思っています。

これからもJDMCで、データマネジメントの知見が豊富な皆さまとのコミュニケーションを通じ、多くのことを勉強できればと思っています。今後とも、よろしくお願いいたします。


倪 暁白(に しょうばい)

キヤノンITソリューションズ 株式会社
デジタルビジネス推進部

データ活用プロジェクトに関するプロモーション・提案活動、データサイエンスに関する技術の活用、BI導入と定着の参画に従事。

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