JDMC会員による「リレーコラム」。メンバーの皆さんがそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。今回、バトンを受け取ったのは、株式会社外為印刷の山村哲司さんです。
データから想像するチカラ「アブダクション」とは!?
中小企業の埋もれたデータを宝の山にするために
リレーコラムにて執筆する機会をいただきました、株式会社外為(がいため)印刷の山村です。出版社での経験とリネンサプライの会社の経営企画部で働いた経験を活かし、浅草の印刷会社で新規事業の立ち上げに向け、試行錯誤を繰り返しています。
弊社では、大学の研究論文を過去5年間で4128本、研究論文集を688冊印刷、国立科学博物館や国立国会図書館と取引をさせていただいております。こういった大量のデータから、何か新しいサービスができればと思っております。
「デザイン思考」は、日本でイノベーションを生み出すのか
新規事業の創出のトピックスとして、最近、日本の大学や企業が「デザイン思考」を取り入れようという動きが出てきているのはご存知の方も多いと思いでしょう。「デザイン思考」は、初代Macintoshのマウスのデザインで有名になったIDEOのトム・ケリー氏などが提唱している方法で、人間の行動を観察したり、インタビューを通じて出たアイデアからプロトタイプを作り、改善を繰り返していくという方法です。
しかし、どうしても日本では、改善のデータばかりに目がいってしまい、結局、斬新なモノが生まれなかったという声をよく聞きます。観察する際、他にもある課題に気づかないまま進めてしまうケースが多いのかもしれません。
近い将来、IoTが普及し、色々なモノにセンサーが付き、あらゆる人間の行動がデータとして取得できるようになる日も近いでしょう。しかし、そういったデータから深層心理がわからないと、いつまでたっても表層的な解決の手段にしかなり得ないと思います。
AI時代にこそ必要な「アブダクション」
今、深層心理を推測するための方法としては、「アブダクション」という仮説形成のための理論が注目を集めています。帰納法、演繹法と並ぶ第三の推論法として、想像力が発揮される方法論です。
「こういう事実がある。しかし、この仮説なら実証できる。だから仮説は正しい」というロジックになります。この方法論はあくまで推測をするための方法なので間違っているケースもあります。しかし、大胆に推測できるので、今までと違った「何か」が生まれてくる可能性が高いと言われています。
こういう思考はAIにはできません。データから推測し、想像するチカラが今後求められていくと思っています。
山村哲司(やまむらてつじ)
株式会社外為印刷 新規事業準備室。大学卒業後、本の編集者の道へ。色々な出版社を渡り歩き、ファッション誌からビジネス書まで数多くの本を手がける。2013年 日之出出版『FINEBOYS』別冊編集部 編集長。2017年より鹿児島のリネンサプライの会社、南九イリョーで経営企画やマーケティングなどを行う部署で働く。2018年4月より外為印刷に入社し、新規事業を立ち上げるべく模索している。