JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、株式会社日立製作所 岩渕 史彦さんです。
皆さま、こんにちは。日立製作所の岩渕史彦と申します。
私は1991年に日立製作所に入社し、ITコンサルタントとしてのキャリアをスタートしました。そして、1999年からデータマネジメントの担当になり、以来23年間にわたって40を超えるお客さまのプロジェクトを支援してきました。本日は私が経験を通して得た、プロジェクトを成功へ導くための考え方を紹介しようと思います。
「プロセスコンサルティング」と「コンテンツコンサルティング」
少し前の話になりますが、あるお客さまと私たちは、ともに課題を発見し解決策を考える—いわゆる「プロセスコンサルティング」によるプロジェクト推進を合意し、検討を始めました。
私たちは日々、お客さまの困りごとをヒアリングしながら、データモデルを共同で作成していたのですが、その取り組みの核心である「取引先データ」に話が及ぶと「何か違う」「しっくりこない」といった反応で、お客さまの合意が得られにくくなり、検討は徐々に停滞していきました。
こういう場合、私は「コンテンツコンサルティング」的なアプローチによって打開を図ります。私どもが蓄積した経験を基に、他のお客さまの成功事例や失敗事例といった「コンテンツ」を提示するのです。
そうすると「その考え方は当社にも適用できる!」「同じ失敗はしたくないですね!」などと討議が活発になり、めざすデータの形が明確になってきます。そして、検討は再び進み始めました。
常に複数の視点を持つこと。対極にある視点が視野を広げる
常に複数の視点を持つこと。これが私のコンサルタントとしての心構えです。先ほどお話ししたプロセスコンサルティングとコンテンツコンサルティングだけではありません。
業務要件定義とシステム要件定義、機能要件定義と非機能要件定義、構想策定とシステムインテグレーション、今のプロジェクトと事業計画—など、目の前にある事実と、できるだけ対極に位置するような場所に視点を置き、つねに複眼的に物事を見るように心掛けています。
データマネジメントの実践は、いくつものステップを踏む必要がある長いプロジェクトです。1つの視点しか持っていないと視野が狭くなり、課題が発生した時の対応が限定的になってしまいます。その時にもう1つ、対極にある視点を加えることで、視野が広がり、打開策も発見しやすくなります。
視点の高さを変えてみる、視点の角度を変えてみる
先入観にとらわれてしまい、なかなか打開策が思い浮かばないときには、異なる角度からの視点を取り入れて、打開策を見つけ出すことも心掛けています。
あるメーカーのお客さまに、既存のデータマネジメント基盤の改善を依頼された時のことです。お客さまのシステムを確認すると、そこには頻繁に更新される製品仕様書が長年にわたってすべて保存されており、履歴ファイルが膨大になっていました。
そこで改めて業務部門の方にヒアリングを行い、要件を確認してみると、製品仕様書の変更履歴を確認する必要があるということでした。つまり、すべての製品仕様書をそのまま残す必要はなく、変更履歴だけを保存すればよかったのです。
その結果、ストレージ容量の大幅な圧縮と運用管理の容易化が可能になったのですが、これはシステム要件の視点だけでは視界に入らなかった問題点を、業務要件の視点を加えることで発見することができたケースといえるでしょう。
お客さまの不安に寄り添い、進む道を照らす
これは日立も含めての話ですが、スコープにこだわって狭い範囲で仕事を進めてしまうコンサルタントが多いように思います。
例えば、論理データモデルを作成している時に、お客さまから「ところでこのモデルは、どこに実装するのですか?」という質問を投げかけられることがよくあります。その時に、「今回は論理データモデルを検討するプロジェクトです。それはスコープ外です」などと答えるコンサルタントやエンジニアがいらっしゃるかもしれません。
お客さまは課題を抱えて道に迷われて、日立に声をかけてくださったわけです。私どもは多くのユースケースを持ち、システムインテグレーションの経験も豊富にあり、ある程度ゴールまでの道筋が見えている状態で検討を進めていますが、お客さまの多くはそうではないでしょう。工程やスコープに関係なく、不安なことや気になることを質問したくなるはずです。
そういう意味でも私は、お客さまの不安を感じた時には、いま取り組んでいる工程やスコープ以外の事柄にも回答していきたいと考えています。
論理データモデルを作成しながらData Lake、Data Ware HouseやData Martへの配置や、物理データモデルを考える。要件を満たす“キレイ”なデータモデルを作成しながらシステム実装として“現実的”なテーブル設計を考える。今プロジェクトで取り組んでいることと、中長期の事業計画との関係を確認する……。
このようにお客さまが進む道にさまざまな角度から光が当たるようにします。そうすることでお客さまから不安を取り除くと同時に、お客さまの“思い”がプロジェクトに反映されることにつながります。
1社でさまざまな視点を持つことの意義
日立はデータマネジメントの構想策定から要件定義、設計、構築、運用保守までの「データマネジメントジャーニー」をトータルに支援できるサービスを用意しています。
これはさまざまな局面で、コンサルタントの視点、ベンダーの視点、システムインテグレーターの視点など課題解決に適した視点を多彩に提供できることを意味します。そしてこのことはお客さまのプロジェクトをゴールに導くために大きな力になるだろうと思っています。
私はJDMCでは、「データマネジメントの基礎と価値」研究会と「MDMとデータガバナンス」研究会に参加しておりますので、ご一緒になった節は気軽にお声がけください。