日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.49】信興テクノミスト 神田勝実さん、「データを正しく知ること」の難しさと成果につなげる鍵


 
JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、信興テクノミストの神田勝実さんです。
 

「データを正しく知ること」の難しさと成果につなげる鍵

 
私が勤務する信興テクノミストは、IT企業としてシステム構築・開発・運用、製品・サービス、コンシューマー事業を行っています。当社が手がけたデータ利活用の事例としては、人やフォークリフトなどの動きをデータ化する「動線見える化システム」や「データ連携基盤構築サービス」などがあります。そのなかで、私たちはデータマネジメントチームとして官公庁を中心にデータ連携・クレンジング・名寄せなどの機能開発を実施しています。
 
■官公庁におけるデータ利活用
データ統合(利活用)を始めとするIoTやAIなどの技術導入を進める民間企業が急速に増えています。そうしたなか、政府が2015年6月閣議決定・公表の世界最先端IT国家創造宣言で「組織や業務の壁を越えた分野横断的なデータの利活用を実施し課題解決に繋げる」と宣言しているとおり、私たちが対応する案件の内容も従来のデータ移行に加え、2年ほど前からデータ統合に関するものが増加しています。データ分析によって社会の安全性を高めるシステムなど、新しい観点でデータを活用した意義深いものばかりです。
 
■官公庁におけるデータマネジメントの難しさ
官公庁において複数の組織(業務システム)のデータを統合する場合、組織および組織間の“制約”が前提として大きく関わってきます。なかでも、データマネジメントの源泉となる「データの状態(形式)調査」と「データの内容(意味)把握」は組織間でデータをお互いに開示できない等の制約があり慎重に進める必要があります。
 
■「データの状態(形式)調査」の鍵
データの状態を正確に調査するうえで鍵を握るのが「データ調査ツール」だと考えています。組織間の“制約”(特にデータ開示に関する制約)があるなかでは、データ調査ツールの実行を連携元組織に依頼し、必要に応じて調査結果をマスキング(例えば、個人情報にあたる電話番号や住所を”※”に置き換える)するなどの配慮が必要です。
 
■「データの内容(意味)把握」の鍵
データの内容を正確に把握するうえで鍵を握るのが「データ提供元の組織・業者」だと考えています。組織間の“制約”(特に役割・責任範囲の制約)があるなかで、データの内容を最も把握している「データ提供元の組織・業者」が利活用に対して「第三者」に位置している場合、「当事者」意識が薄れ網羅性のある情報が提供されない可能性があります。そのため、利活用を検討する段階で「データ提供元の組織・業者」を含めた組織に対して、データマネジメントに関する役割をお客様に明確化していただき、正確な情報を提供してもらう必要があります。
 
■「データを正しく知ること」の大切さ
今後、官公庁においても、これまで以上にIoTやAIなどの新たな技術導入が進むと想定されます。しかしながら、「データを正しく知ること」ができなければ、新たな技術を導入しても「お客様が求める成果」に至りません。実際に、上流工程で「データを正しく知ること」が実施できないまま開発を進めてしまい、工程終盤(本番稼働直前)に想定外のデータの存在が判明し、手戻りとなった苦い経験をしています。私たちは、この苦い経験を教訓とし「データを正しく知ること」の大切さを常に意識することで、データマネジメントによる「豊かな社会創り」を目指し事業を進めています。
 
 

神田勝実(かんだ かつみ)
株式会社信興テクノミスト データマネジメント部 課長。1979年生まれ。1998年に入社後、官公庁を中心にデータ移行・統合(利活用)、データマネジメントに関する業務に従事。
 

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