メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、クオリカの五十島良一さんです。
皆さま、こんにちは。クオリカの五十島(いがしま)と申します。JDMC研究会では、テーマ5の「今こそ見直そう、データ(業務モデル見える化)経営のあり方」に参加しリーダーを務めさせていただいております。どうぞよろしくお願いします。
JDMC事務局よりコラムの執筆のお話を受けて、データマネジメントに関する内容を考えてみましたが、技術的な内容はJDMC参加のSI企業の皆さまにお任せすることにし、業務視点でのお話を述べさせていただきます。
まず、昨今の情報活用について。大手SI企業のCMなどで、人が行動するとすべての情報を価値に変えるデバイス・技術・基盤を提供するような話が多く見られます。しかし、その情報をどのように蓄積・維持・管理し、膨大なデータからすばやく価値ある情報(分析・予測)を探せるか――そこまで考えると、業界に携わる身でありながらITにどれだけのヒト・モノ・カネを投資しなければいけないのだろうと恐怖を感じています。
最先端な技術や手法にシフトしなければいけないと分かっていても、現場はどこまでの情報を管理し、不必要とした情報をどこで捨てればよいのか判断できず、使われないデータまでも管理する、といったことになっていないでしょうか。ある企業では、そうした使われていないデータを分析すること自体に価値があるということを説明していましたが、蓋を開けるとその根拠は分析しないとわからないというオチが待っていました。ここ数年で急速に膨れ上がった情報について、今後どのように考え、扱えばよいのか。私なりに業務視点で見た、これからの情報活用を考えるうえでの基本的な論点を説明したいと思います。
1. 情報管理規定・規則を全社挙げて策定する
情報管理規定・規則は定義することが目的ではなく、全社員が情報活用するためのバイブルとなるように策定を進める必要があります。これは管理だけでなく、データマネジメントに貢献した個人、またはチームなどへの評価制度と連動させる仕組みを設け、個人のモチベーションを上げるとともに、データマネジメントの成熟度向上へつなげられるものを目指すことになります(データ管理の詳細については、ここでは割愛します)。
2. 必要な情報源は時間とともに変化することが前提となる
例えば、商品の販売が急激に落ち込んでしまい、「その時点での分析対象項目では予測できかったことがあった」といった経験を持つ方も少なくないと思います。このとき、分析対象を即座に変更できなければ、取り返しがつかない事態に陥ってしまうことがあります。社会情勢を先読みするのは困難なので、事態を受けてすぐに回避できる方式や手段を考えておくことが必要です。
3. 目的に対する情報源は、社内(事業内)・社外(省庁や自治体、情報提供企業など)を使い分けて収集する
プライベートクラウド、パブリッククラウドなど、情報インフラを社外のサーバーに置く時代が到来しています。また、インターネット環境で会員制の各種情報提供サービスも増加が見込まれ、セキュリティ等の課題はあるものの、社外から有用な情報を収集するケースは今後さらに増加していくと考えられ、対応が求められています。
以上、思うところを述べてみました。今後の情報活用に必要なことは、現場一人ひとりの創造時間を増やし、コンピュータ技術を通じて新しい気づきや発見をする機会を設けることで、付加価値の増幅(暗黙知から形式知)につなげることが必要と感じています。
五十島良一(いがしま・よしかず)
クオリカ株式会社 産業事業本部 戦略企画部 主査。製造業を中心とした大手企業のシステム企画・開発に従事する。過去には、1993年に縫製業向けCAD/CAMおよび生販統合システムパッケージを企画・開発、1996年に金融業向け庶務・財務、人事給与・勤怠、海外拠点向け経費管理、貸付管理など開発、2001年に自動車メーカー向け意匠領域PDMの企画・開発、プレス加工品質ナレッジ開発、2008年に飲料メーカー向け調達の企画・開発に従事するなど、一貫して顧客視点でのシステム企画・開発を手がける。