JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、清水技術士・診断士事務所の清水孝光さんです。
効果的なDM実践に向けての勘どころ
私の一番大きな関心は、データマネジメント(DM)の効果的な実践による、経営革新・業務改善の実現です。ユーザー企業、SIerなど立場は違っても、JDMCに参加されている多くの皆様も同じ思いではないでしょうか。
その一方で、DMには手をつけづらい側面もあります。というのはDMと一言で言っても経営・業務やIT全般に関わるため、様々かつ多角的な視点が必要で、さらに1つの視点、例えばDBMSの視点で見ても非常に専門性が高くて奥が深いからです。
また、マネジメントの実践方法は、組織特性にマッチしていることが必須です。マネジメントの主体はヒトであり、ヒトにも組織にも得手不得手があり、科学・技術のように誰がやっても一緒というわけにはいかないからです。これはもちろんDMにも当てはまります。
例えば、管理サイクルも日本型と欧米型では異なります。日本型は、組織継続を前提としたPDCAですが、欧米型は「PDCF」型で、“F”は、Fire(解雇)やFight(労働争議)の意味になります。
そうしたことを踏まえて、DMの実践にあたっての提案をさせていただきます。第1に、各企業の「強みを発揮させる視点を持つ」こと、第2に、「普及しているマネジメントを応用する」ことの2つです。
はじめに「強みを発揮させる視点を持つ」ことについてです。企業は、市場競争下で生き抜き進化・成長するためには、他社と差別化し自社の強みを発揮する必要があります。そして弱点をカバーする、あるいは克服する方策を考えることも必要です。さらに、グローバル競争のまっただ中では、日本企業と外国企業の組織特性の違いを再認識することが重要です。というのも、前述したように日本企業は独特の組織特性を持っているからです。
日本の強み、それは何と言っても“現場力”です。対して、欧米はトップのリーダーシップに優れています。日本の現場力は非常に独特で、文化が近いとされる中国・韓国ともまったく違います。製造業で言えば、日本の強みは様々な専門家・部署が協力して最適化する『摺り合わせ型』のボトムアップにあり、中国は『労働集約型』のトップダウン、韓国は『資本集約型』のトップダウンで、アジアの隣国と比べても日本は独特の性格を持っています。
DM関連で言えば、日本企業は生データを扱う現場はしっかりしており、部門業務改善にITを活用するのは得意。ただし、現場主導のためのIT化が進むもデータ統合に難があり、財務データなどの経営判断に必要なデータ集計などが複雑になるという欠点があります。一方、契約社会でトップダウン志向の強い欧米企業は逆で、経営データの集約などは容易ですが、業務効率が悪かろうがお構いなしという傾向が強いです。日本企業でDMを実践していくためには、その重要性をハッキリ全社員に訴えるといったトップの役割はもちろん大きいですが、現場主導でのDMの仕組みづくりをすることがキーポイントになると私は確信しています。
次に「普及しているマネジメントを応用する」ことについてです。マネジメント手法自体は非常に汎用性が高いです。DM用の管理体系を自社で一から作るよりも、すでに実績のある手法を応用したほうがはるかに効率的です。
では、日本的な現場主導でのDMの仕組みづくりに、何をお手本にすればよいのでしょうか。私は“モノ造り”の管理手法が最適だと思います。日本の製造業が世界を席巻した原動力となった管理手法なので実績があり、日本の組織特性にもマッチしているからです。
モノ造りの管理手法は、JIT(Just In Time)などのトヨタ生産方式やQCサークルの小集団活動が有名で、きわめて洗練された手法ですが、非常にわかりやすいこともまた、特徴です。基本には「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」、「3現3直(現場直行・現物直接・現実直視)」などがあります。モノ造りの5SとDMの5Sの対比を表に示します。標語にもしやすいですし、DM活動の普及にも効果的ではないでしょうか。
さて、JDMCはスタートしてまだ3年ほどですが、定例会や研究会では勤務先も立場もスキルも様々な仲間と率直な論議ができ、さらに2次会に場を移して白熱した論議が続くといった、非常にエキサイティングな活動になっています。JDMCを核にしたDMの普及は、今後の日本企業に与える影響は非常に大きなものとなるはずで、ぜひそうしていきたいと強く思います。
そしてDMの実践に、日本企業の強みを活かし、モノ造りなどの洗練された手法を応用することで、世界に冠たる「Japan As Only One」を皆様とご一緒に実現していくこと――これが私の夢です。
清水孝光(しみず たかみつ) 清水技術士・診断士事務所 代表
技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネータ。清水技術士・診断士事務所代表。大手産業機械メーカーの情報システム部門で、各種ツールなどの技術評価・システム企画・設計・実装・運用に携わる。専門はデータベースシステムの設計・構築・DBA。
現在、独立し経営コンサルタントおよびITコンサルタントを主業務とする。
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次回のコラムのバトンを受け取ったのは、堤 保晴さん(株式会社メトロ)です。お楽しみに!