日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.13】堤 保晴氏「日本の成長戦略の武器となる、データマネジメントの可能性」

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、メトロの堤 保晴さんです。

日本の成長戦略の武器となる、データマネジメントの可能性

 
「データマネジメントに関することであれば、何でも結構です」――JDMC事務局の臼井さんからリレーコラムのお話しをいただいて思い浮かべたのは、2年間参加させていただいたJDMCの情報活用成熟度モデル研究の分科会に参加しながら感じていた「データマネジメントの可能性」についてです。
 
研究会は「情報活用成熟度モデル研究とデータマネジメント実態調査」に参加しました。ここでの活動は、国内外企業の情報活用の成熟度を調査・分析・評価し、JDMCとしての成熟度表を作成することが主な目的です。活動の中で成熟度評価の高いグローバル企業を調査していくと、全社規模ですでにマスターデータの整備が行われ、データが企業資産として認知され利用されているだけでなく、関連企業を含んだ利用がなされていることがわかりました。その一方で、多くが企業内データの部分最適にとどまる国内企業の実態を知るに至ります。「日本企業がグローバルで復活するためには、まずは海外企業と同等以上のデータマネジメントの成熟度の向上を目指すことが必要ではないだろうか」――そのことを書いてみようと思います。
 
私が最初にデータマネジメントを強く意識したのは2007年、当時IDCより発表された「The Diverse and Exploding Digital Universe」のレポートに示された「情報の爆発」という言葉からでした。同時期に進行した大手IT企業による連続した主要BI企業の買収により、情報の爆発という言葉がより現実味を帯びたことが昨日のように思いだされます。
 
情報の爆発は今日「ビッグデータ」というキーワードで語られる、大容量データ処理における近未来の課題として、目下、我々の取り組みの対象になっています。従来は捨てていたデータをどう生かすか、新たな大量データを生むSNSや動画など、新たなカテゴリーで発生する大量データをいかに処理していくのかが将来の課題だと指摘されていたのが、まさに今、我々が取り組んでいるテーマと重なっているのです。企業が扱うデータのうち、特に、メールなどデータベース以外のビジネスデータが多くを占めているはずであるという指摘がなされ、その大量データをいかにして処理しビジネス価値につなげていくかが大きな課題になるとの認識に至ります。
 
幸い、オープンソースのHadoopがそれらの課題を解決する有望な手段として登場し、今日では非構造化データという言葉で、従来のリレーショナルデータベース(RDBMS)とは別の文脈で語られるテーマとなっています。同時に、RDBMSのデータ管理とは異なるデータ管理手法をとるNoSQLも、オープンソース製品を中心に充実し、ビッグデータに対応するデータマネジメント製品として利用が進んでいます。
 
このように見ていくと、このわずか5年でデータマネジメントの世界は大きく変わったという印象を持ちます。より多様なデータを管理する手法が確立され、ビジネススピードを維持・進化させるために大量データを高速に処理する技術も大幅に進歩したと思います。
 
振り返ればこの5年間、リーマンショックの影響を受けて日本の経済は停滞し、追い討ちをかけるように発生した東日本大震災や原発事故の影響などもあり、激動する世界の動きに対応する余裕のないまま、海外企業とのビジネス競争に大きく遅れを取ってしまったという状況にありました。
 
このような状況の中、日本企業がグローバル競争の遅れを取り戻す手段の1つとして、データマネジメントへの注力が大きな意味を持つのではないかとの思いがありました。すでにグローバルの先進企業は、社内データを統合・最適化し、データの鮮度を維持させるライフサイクルを回すことで、トランザクションデータだけでなく、DWHに蓄積された過去のビジネスデータからも新たな企業競争の武器を生み出すことを可能にしています。実際、データサイエンティストの有用性が語られる今の状況は、まさにビジネスデータが使い方によっては企業競争における重要な武器になりうることを示しています。実際、データマネジメントへの注目度が以前に比べて確実に上がっていることから、それを強く実感します。
 
グローバルビジネスで、時間的、空間的、慣習、法律等について企業が対応すべき制約や課題は多岐にわたります。それらは個々に対応すべきビジネス要件ではありますが、データマネジメントの仕組みでデータを一元化する段階で、すべてではないにしても、それらの異なる課題を吸収し回避することによって、経営のスピード化とグローバル対応を促進させることが可能になります。つまり、データマネジメントへ注力することは、日本企業のグローバル対応化への近道になると言えます。
 
ただ実際には、海外の競合企業に比べ、ビッグデータへの対応もグローバル化への対応もまだまだ後手に回っているというのが日本企業の実情です。データの精度を向上させ、リアルタイムな経営判断と現場での行動規範がしっかり確立することなしに、海外企業との遅れを取り戻す方向には向かわないでしょう。
 
もちろん、日本企業がグローバル対応に取り組むにあたって、データマネジメントへの注力だけでは片手落ちと認識しています。データを利用する組織の面でも改革が必要で、フラット化が必要と考えます。経営の的確な判断の下、権限を現場に移譲し、現場でのリアルタイムな判断を優先させることで、ビジネスのスピードアップと現場の活性化が図られます。そこで重要なのが、現場ごとに最適化され管理された鮮度の高いデータをいつでも利用できるデータマネジメントの基盤です。フラットでアメーバ的な組織の確立と統合されたデータマネジメント。この2つを共に実現することが、日本企業の成長と、経済復活の鍵』となるのではないでしょうか。
 
組織のフラット化はまた、データマネジメントの成熟化にもつながります。権限委譲された現場での判断が大きくビジネスに影響を与えるようになると、現場で真に必要と思われる情報を適宜採取・分析することが可能になります。その結果を実践しつつ精度を上げていくサイクルができあがれば、データの成熟度を上げる必然性がおのずと見えてくるからです。
 
JDMCのメンバー構成は、4年目を迎えてベンダー企業よりユーザー企業が多くなってきています。そこからは、国内企業の生き残りとグローバル化に対する真摯な姿勢の現れが見てとれます。日本企業のデータマネジメントを進化・充実させ、グローバルビジネスの進化にも対応し、クラウド環境をベースとした新たなビジネスにも適応していく――このことは今後の企業経営に不可欠な要素であり、その中を流れるデータの最適化とセキュリティを含めたデータマネジメントの確立は、「日本復活の肝」であると確信しています。安倍政権が掲げた3本の矢の1つである成長戦略の中の「民間企業活力の復活」の具体的なアクションとして、データマネジメントへの注力が常に意識されることを願っています。
 
最後に、私の所属する株式会社メトロについて触れさせていただきます。当社は1990年から、20年以上にわたってデータマネジメントに注力してきました。特に、日本語データの処理においては、長年の経験に裏打ちされた独自のクレンジング技術を確立し、データクレンジング名寄せ処理やデータコンテンツといったサービスを提供しています。また、数多くのデータ処理に携わった経験から、ETL製品を使ったデータ連携やデータ統合に関しても豊富な経験と独自のノウハウを有しています。企業データの利用とデータ精度の重要度が高まってきている今だからこそ、我々の培ったデータマネジメント技術が生かせる場面が増えると思っています。
 
 

堤 保晴 (つつみやすはる)
株式会社メトロ    営業本部 エクゼクティブITコンサルタント

国内ベンダーの国公立大学のアカウントSEを経て1987年より米国製リレーショナルデータベースの国内販売における技術部門を中心に従事。2007年に現職である株式会社メトロの経営企画部事業企画室へ入社し、経営本部内で事業企画の立案、実施等を経験し、現在は営業本部にて営業支援業務を担当しています。
 
 
 
 

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