日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.7】 谷内田仁氏「データマネジメントへの強い思い」

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、エヌ・ケイの谷内田仁さんです。
 

「データマネジメントへの強い思い」


今回、リレーコラムのバトンをいただいた谷内田(ヤチダ)と申します。よろしくお願いいたします。以下に書く内容は、データマネジメントの技術論でなく、このテーマへの思いについてですので、気楽に読んでいただければ幸いです。
 
私は、JDMC発足当時から「データマネジメントの基礎概念定義」(DM基礎)の研究会に参加しており、今年で3年目を迎えます。初年度の活動は「DMって何?」から議論が始まりました。メンバーの間で、DMについての共通認識なしに、今後のDMをどうしていくべきかなどの議論ができないと考え、DMの全体俯瞰図や構成要素(これらをDM基礎研究会の仲間内では「DMの地図」と呼んでいます)を作成しました。データのライフサイクルに沿って、DMの領域を定義したわけです。続く2年目は、このDM構成要素の説明書とDMを進めていくためのケーススタディ2件をドキュメントとして作成し、JDMCで公開しました。これらのドキュメントをまだご覧になっていない方は、ぜひご一読いただき、ブラッシュアップのご指摘を願います。
 
ここからが本題、DMへの強い思いについてです。研究会活動を通して強く感じるのは、「DMが必要であるのに、なぜ定着していかないのか」という強い問題意識であり、皆で何とかしたいという共通の思いです。
 
「何でDMが必要なの? 我が社ではデータベースが構築されていて、データの管理はすでにできているはずでしょ? 入力データさえしっかりしていれば問題ないはずで、DMなんてものに予算はつけられないよ」――DMを進めようとしても、こんな調子で自社の経営陣やお客様から何度も叩かれ、それでもDMは必要なのだという強い思いを持ったメンバーがDM基礎研究会には集まっていました。その1人が私であり、今も同じ思いでいるのです。
 
私は情報システム部出身ですので、データがプログラムに依存するかたちで作られてきた状況を見てきています。システムごとに必要なデータを定義し収集して作成する。その繰り返しですから、全社の視点で見ると、データの重複や不整合が起こるのは当たり前なのです。
 
共通データをマスター化して行うのが「DMのはじめの一歩」だと提案しても、事業部門との調整作業や共通マスター利用のための現システムの変更作業は膨大にわたり、最後には「今、問題ないのだから、このマスター化プロジェクトの優先順位を下げよう。仮に完成しても、ユーザーのメリットは何もないよね? 今後、情シス部門の工数がいくらか削減されるというだけのものだよね?」と経営陣に言われプロジェクトの頓挫に追い込まれた――そんな経験があるメンバーもおられました。
 
さて、そこまで叩かれても、我々の間で、なぜDMが必要であるという思いが消えなかったのでしょうか?
 
それは、データが正しく管理されていなければ、いくらシステムが完璧でも業務が回らない。つまり「正しいデータの上に業務がある」という信念があるからです。そして、残念ながら正しいデータの下に業務やシステムが回っていると言い切れる会社はいまだ少ないのが現実です。
 
データの正しさとは、マスターデータのような正確な入力データだけの意味ではなく、業務に使うデータ粒度、データ集計などの加工データとしても正しくなければなりません。経営資料に載ったデータで経営判断がなされ、そのデータが間違っていたという原因で、経営そのものが傾くリスクもあるのです。
 
まずは、業務の定義、そこで使われるデータの定義が必要と考えています。DMが「会社で使われているデータを調査して、それを正規化してデータウェアハウスを構築すればそれでおしまい」というものでは決してないと考えます。業務とデータが一体化して、各業務で扱われるデータが、どのデータをどのように加工して作成されるかを業務部門のメンバーと情シス部門のメンバーが協働して作成することが必要なのです。その際、データ定義、加工方法、それをメンテナンスする作業などのDMが不可欠になります。
 
確かに、DMを行うきっかけは会社統合や業務統合・分割などで、これらは現実によくある機会とは言えませんが、その少ない機会を捉えてDMを推進できるように準備しておくことが必要に思います。
 
元京セラ会長の稲盛和夫氏が、「仕事の結果は『考え方×熱意×能力』で決まる」という言葉を述べられております。能力はほどほどでも強い熱意を持ち、打たれても打たれても立ち上がっていく前向きな考え方があれば、きっとDMはいずれなくてはならないものになると信じます。DMが文化として定着することを目指して、これからも研究会メンバーと共に邁進したいと思う所存です。
 
ご同意いただける方は、ぜひDM基礎研究会に入会していただき、熱い議論を交わさせていただきたいです。1人でなく、仲間(同志)がいることが強い力となります。ご参考になるような内容ではなかったかもしれませんが、最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
※DM基礎研究会の詳細は、JDMC研究会一覧のご覧ください。
https://japan-dmc.org/?p=16565

谷内田 仁(やちだ ひとし) 株式会社エヌ・ケイ 社長附

1980年東芝入社。技術情報システム担当時、RDB、PDMを評価し、推奨RDB、PDMの決定に寄与。その後、東芝セミコンダクター社の製造情報システム構築に参画。2011年2月に東芝を退職し、東芝OBが立ち上げた株式会社エヌ・ケイへ移る。現在、東芝セミコンダクター社の経営ポータル構築の業務支援中。JDMC立上げ時から個人会員としてDM基礎の研究会に参加し、3年目に至る。
 
 
 
 
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次回のコラムのバトンを受け取ったのは、石川陽一さん(カブドットコム)です。お楽しみに!

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