日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.84】ミンカブ・ジ・インフォノイド 中澤康至さん、Web3時代に向けたデータマネジメントのあり方を考える

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドの中澤康至さんです。


はじめまして。株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドの中澤と申します。

当社は、日本最大級の資産形成情報メディア「MINKABU(みんかぶ)」および株式専門情報メディア「Kabutan(株探)」などの運営を通じ、株式をはじめ、暗号資産(仮想通貨)、FX(外国為替)、商品先物、投資信託、保険、不動産など、さまざまな金融商品を対象とした投資情報を提供しています。 また、ユーザーの投稿や閲覧のデータを集約して利用するクラウドインプットの仕組みとビッグデータを解析し、瞬時にコンテンツを生成するAIを活用しながら、一般投資家のみならず、金融機関向けにもソリューションパッケージとして情報の提供を行っています。

変遷するWeb3時代に向けた課題認識とソリューション

私たちが取り扱うデータは株価や指数といった定量データから、ニュース記事のような非構造化データまでさまざまです。日々激増し、多様化するデータ群をいかに効率的に制御・運営していくかというデータマネジメントは、当然大事な課題となります。

加えて、これまでのWeb2からWeb3へ遷移することも想定したデータマネジメント設計、ビジネス設計、アーキテクチャの構築が求められてくる中、いくつかのソリューションの構築の必要性を認識し、これらの課題に対して向き合ってきました。

昨今、FinTech領域におけるデータ利活用やサービス・顧客体験の高度化には大きな期待が寄せられていますが、実現は容易ではありません。データレイクの技術進歩により、量的な面には対応できる一方で、データソースやユーザーの多様性には対応できていないためです。

例えば「認証・セキュリティ」「データ監査証跡」「重複データ管理コスト」「リアルタイム性の高いデータ連携」などが不十分であり、大きな阻害要因となっています。

Web3の時代、「いかにデータを迅速に整理・統合・管理し、利活用へとつなげるか」がビジネスで勝ち残るためのカギとなる認識で、肥大していくデータウェアハウス・データレイク、新サービスとともに増えていくエンドレスなETL開発と運用──これらの問題をWeb3/データメッシュによるデータDXで解決するソリューションを当社は推進しております。


「Web3×NFT」におけるDX推進

DX推進に当たっては、顧客ファースト、ユーザファーストの観点が最も重要です。当社がまず取り組んだのは、ソリューションごとに存在するIDの統合です。それぞれのソリューションはIDとパスワードによる認証で利用されますが、顧客の立場で考えると、ソリューションごとにIDが存在するのは、明らかにUXを損ねます。

そこで、当社のブロックチェーンとWeb3の知見を活用し、ID/パスワードの認証代替としてNFTを活用する手法を考えました。個人が保有するウォレットをユニークなキーとし、ソリューションの入り口をNFTで制御することで、顧客にはシームレスな画面UXを提供できるようになります。

また、個人に紐付いた各種データをNFTとして発行、持ち回ることで、これまでにないUXやインセンティブを利用者に提供できるでしょう。当社は当該ソリューションの推進と解放への準備を進めており、Web3時代に合わせた、ウォレットを基軸とする新しいデータDX、価値創造に向けて動いております。

「ブロックチェーン×データメッシュ」によるデータマネジメントの可能性

当社はNFTの他に、ブロックチェーンの活用にも注目しています。

データメッシュとABAC(属性ベースのアクセス制御)をブロックチェーン上のメタデータによるラベリングで実装、APIを入り口とし、点在・散在する各データにセキュアにアクセスできるWeb3ソリューションを試行、構築しています。

今後、散在・多様化が進む各種データに対し、効率的なデータ管理を推進していく上で、データフローの可視化と整理が必要であることは明白です。

とはいえ、新たなソリューションを導入する際、多くの企業では、既存のシステムを稼働させながら、徐々にデータ整理を推進していくことが求められます。そのため、私たちは以下のステップでビジネス・システム分析を実施しつつ、既存システム基盤と新基盤のハイブリッド運用を経て、旧システムの縮退計画を推進していく手法を採っています。

①ビジネス分析においては、以下を整理・明確化した上でPDCAを促進。

「目的:ビジネスプロセスの説明」
「When:頻度」
「How:トリガーポイント」
「Where:データソース」
「Why:ビジネス対象/目的」
「What:ビジネスロジック」

②①で整理した内容を基に、各ビジネスプロセスを小さい単位で分解、分析し、システム分析としてデータプロセスに落とし込み、データマネジメント設計を実施。

③システム全体のデータパイプラインを設計し、データの可視化、カタログ化することで、一貫性のあるデータリネージの実現に向けて諸調整を推進。

④ブロックチェーンを主軸とした基盤を活用することで、イベントドリブン型のデータ制御を容易にリアルタイム制御、データリネージが促進される形に。

こうしたステップを経ることで、各種企業活動や諸規制に対応できるトレーサビリティが担保され、セキュアかつ柔軟なデータ管理を実現する基盤の構築が可能になるのです。

ここまで先端技術をさまざまなソリューションや導入手法を紹介してきましたが、いずれも、企業がDXやデータマネジメントを推進、高度化する際に必要な要素になると考えています。 データのリネージを強化し、リスクを抑えつつ、新しい顧客体験の提供を可能とする──。JDMCでは、これからのデータマネジメントやDX推進の諸課題に対し、迅速に対応できるソリューションや手法のあり方も含めた、積極的な意見交換ができることを願っています。何かご意見やご興味がある方がいらっしゃいましたら、お気軽にお声がけいただけますと幸甚です。


中澤 康至(なかざわ やすゆき)

株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド
ソリューション事業本部 コンサルティング事業部
執行役員

1999年、システム開発会社に入社し、金融システム開発を主として推進。その後2009年にauカブコム証券(旧カブドットコム証券)に入社。フロントシステム開発やイノベーション推進としてスタートアップと協業し、各種ソリューションを開発、展開する。2021年に株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに入社し現職。ミンカブWEB3ウォレット社CTOを兼務。ブロックチェーンを活用したデータ管理、DX推進を実施中。

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