JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。今回、バトンを受け取ったのは、株式会社ベネッセコーポレーションの大塚卓さんです。
2020年度からJDMCマーケティングシステム活用研究会に参画させて頂いています株式会社ベネッセコーポレーションの大塚卓と申します。
所属するベネッセコーポレーションの社会人教育事業部ではUdemyを中心とする社会人向けの学習サービスを提供しております。私は現在データサイエンティストのチームを立ち上げ、蓄積している学習履歴データを、学習者の皆様にとって有効な価値として還元していくための取り組みを行っています。
技術革新によって産業構造が大きく変化し、人生100年時代とも言われ、大人の学び直し(リスキル)が注目されています。我々は、大人の学び直しを支援するべく「最終学歴以上に、最新学歴を誇れる社会をつくりたい」ということを事業ミッションに掲げて活動をしています。
私自身もかつては、大規模開発のPMOやIT戦略立案・ITガバナンスの構築などIT部門で多くの貴重な経験をしてキャリアを歩んで来ました。ただ、40代になってから一度リセットし、リスキルすることで現在は部門内の市民データサイエンティストとしての活動を行っています。データサイエンティストに転身する際には、私自身もUdemyを活用した学習で、JDLA(日本ディープラーニング協会)のE(エンジニア)資格を取得するなどの経験もしました。
JDMCの研究会には、データマネジメントに関してトレンドだけではない、本質的に大事な活動と感じたこともあり、継続して参加させて頂いております。
システムの利活用者になりデータマネジメントの大事さを改めて実感(JDMC参加のきっかけ)
私がキャリアを転身した時期は、ビッグデータ・AI・ディープラーニングとデータサイエンティストがもてはやされていた頃と重なります。そしてUdemy事業も現在リスキルが叫ばれる中でトレンドになっています。
ただ、世間から脚光を浴びている華やかなイメージの世界に一歩足を踏み入れると、外から見ていた世界とは異なります。データを利活用していくためには、非構造データは言うに及ばず、構造化されているデータだけみても何千テーブル、十数万カラムもの膨大な量から必要になるデータを見つけていかなければなりません。そのためには多大な調査時間が必要です。
データが多いということは、全ての事柄に対処しやすくなると思うのが普通です。しかし、データが多いということは、むしろ複雑さが増し、確認するべき情報が膨大に増え、作業も大変になりました。
事業会社では今始まったばかりのシステムを運用しているわけではありません。事業の長い歴史があるからこそ、様々な経緯(商品やサービスの変更・業務変更・仕様変更・障害等)を理解したうえでデータの利活用をしていく必要があります。
IT部門から市民データサイエンティストに転身したということは、システム構築者側からシステム利活用者に転身したことになります。そして、利活用者になったからこそ改めてデータマネジメントの大切さを身に染みて実感したことがJDMC参加のきっかけになりました。
利害関係のない様々な方と意見交換が出来ることで貴重なヒントが得られる
JDMCの研究会を通して、一番大きいのはユーザー企業・ベンダー企業分け隔てなく利害関係のない本音の意見交換が出来ることだと思っています。
活動を通してもちろん成果物も作成しています。例えば2カ年参加した研究会では、「データ活用人材を育成するためのスキル」について各社からのご参加者と議論して、10個のカテゴリで60個のスキル項目を作成しました。その中でもデータを利活用するには、「やってみる」「突破する」「やり遂げる」という3つのマインドが必要であるという検討結果に私自身もすごく腹落ちしました。
ただ、研究会で得られるのは各社のご参加者との議論の部分であると思っています。私が初めて参加するときはコロナ禍になってしまい、リモート環境で少し距離感もつかみづらい中でしたが、新メンバーとして研究会の皆様は本当に温かく迎えてくださいました。研究会の中でECマーケティング人財育成の石田さん、アシストの仲谷さん、岡田さんをはじめ、各社からのご参加者の皆さんと本音で議論をさせて頂きましたことが活きた知識となりました。
同じ課題意識(データマネジメント)を持つ、様々な役割(ユーザー企業・ベンダー企業)のご参加者が、それぞれ利害関係なく話し合うことが出来る場があることで、様々な視点を持てるようになる。研究会を通してそういった大切な経験が出来ました。
私が参加した際にお話をさせて頂きました皆様に心より感謝申し上げます。
本質的な活動を求めて
企業人としてトレンドを追いかけることも大事ですが、同時に本質的で変わらないことを追求することも大事です。
所属するベネッセコーポレーションは”ツーウェイ”コミュニケーションというお客様(学生)との双方向での対話を大事にしてきた企業文化です。もちろん今は進研ゼミではキャラクターによるAI学習アシスタント機能なども提供しています。
私の父は新聞や雑誌の切り抜きが趣味なような人でした。先日実家に帰ると大量データ(=切り抜き)に埋もれている父から、ある雑誌の切り抜きを「参考になりそうな記事を整理していたら見つけたからあげる」と共有してくれました。その特集記事には、弊社の創業社長の言葉として次のことも記載されていました。
『進研ゼミとか進研模試というのは、さっきも言ったようにツーウェイですからものすごく手間がかかるんです。だから二四時間体制で、完全にロボット化させる。』
引用:倒産で鍛えられた”反骨経営” Voice Feburary,1984
Apple社が1984年1月に初代Macを発表したその翌月の記事ということになりますが、40年近くも経過した今読み返しても、AI学習アシスタントという言葉が無い時代から、追及している本質は変わっていないことがお分かりいただけると思います。
JDMCではこれからもデータマネジメントに関する本質的な議論や活動をしていくことに期待をしながら、今後も何かしら活動にて参加させて頂けましたら幸いです。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
大塚 卓(おおつか すぐる)
株式会社ベネッセコーポレーション
社会人教育事業部 商品サービス推進課
データサイエンスセンター グループリーダー
情報システムの部門にて、グループIT戦略の立案とITガバナンス等のPgMO及び大規模システム開発のPMOを経験。その後、データサイエンティストに転身し、進研ゼミでのビッグデータ分析やUdemy事業におけるデータサイエンスセンターの立ち上げを行う。Udemy事業ではキャリアを生かしDX系の講座ラインナップの監修等も実施。JDMCマーケティングシステム研究会でデータ活用人材の研究(20年メンバー、21年サブリーダー)