日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.28】田代直道氏「“幕末の悲運の藩主”に見るデータマネジメントの重要性」


 
JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、アクアシステムズの田代直道さんです。
 

“幕末の悲運の藩主”に見るデータマネジメントの重要性

 
皆様、はじめまして。今回、リレーコラムを書く機会をいただきましたアクアシステムズの田代と申します。当社はデータベースを専門としており、技術情報をメディアを通して発信しています。
 
以前、テレビを観ていたら「今でしょ!」の林修さんが、歴史における敗因要素に、「情報不足」「慢心」「思い込み」を挙げていました。自分なりに、国内外の歴史上の戦争や革命と照らしてみると、なるほど、いずれかに該当するようです。
 
歴史の失敗からデータマネジメントに役立てるものは何かないかと考えたとき、それは「情報不足」ではないだろうかと思い、着目してみました。幕末好きの私が一番に浮かんだのは、「八重の桜」「白虎隊」「新撰組」などに登場する、至誠一途の会津藩主、松平容保(まつだいら かたもり)公です。立場や取り巻く背景、若年であったことなどを考えれば悲運な方なのですが。
 
松平容保の敗因として、まず、広い視野での情報が不足していた点を挙げることができます。会津藩は幕末当時に京都御所警備という任にあたっており、情報収集に最も適した地域に千人もの藩士を駐在させていました。それにもかかわらず、朝廷・幕府、自藩・他藩の動向、国内外の情勢などの情報を十分につかめず、謀略を含めた戦略に役立てることができなかったのです。いち早く課題を把握し最適な次の一手を打てていれば、情勢はだいぶ変わっていたことでしょう。
 
また、自分の視点と異なる情報や意見を、優秀な家臣が集めて上申しても冷静に検討せずに、藩(組織)としての意思決定を誤ってしまいました。その結果、財政難を起こしたり、戊申戦争の犠牲者数は藩別にみれば会津藩が最大となる惨禍をもたらすことになります。
 
もう1つは、数値を元にしたタイムリーな状況分析と戦略立案の欠如です。薩摩藩や長州藩のリーダー達(西郷隆盛、大久保利通、桂小五郎など)や、安政の大獄で亡くなった優れた薫陶の有志達(吉田松陰など)のように、時々刻々と変わる激しい情勢を広い視野でとらえ、さまざまな視点から考えて柔軟かつタイムリーに戦略や行動指針を打ち出せなかったのです。
 
一方、薩摩藩や長州藩は敵を知るという観点からも、実戦として西洋列強と戦った経験を持ち、敵の銃器の被弾距離や命中率を経験値として取り入れ、西洋式の戦術や操練をしていました。そのため、刀や槍の白刃白兵を基本とした会津藩よりも優位に立ちました。この点を見ても、会津藩に必要だったのは、情報の収集・分析・活用によって、国内外のトレンドをスピーディーに取り入れ、競争優位を獲得することだったのではないでしょうか。
 
ところで、現代に生きる私たちはどうでしょう。多種・多形式の含まれた非構造化・非定型なデータがリアルタイムで生成・蓄積されるビッグデータからどのように情報を収集し、活用すればよいのでしょうか。そして、自社の経営層を「松平容保にしない」ために、収集・整備・分析した情報を、いかにして経営層の意思決定に役立てるような仕組みを整えていけばよいでしょうか。
 
例えば、組織的に情報活用の高度化に取り組むには、今後の用途拡大が期待されるBA(ビジネスアナリティクス)の機能のように、以下のようなツールや技術を用いて、データを収集・分析していくことが重要です。
 
(1)企業内に散在するデータを収集、集計、標準化したデータウェアハウス
(2)大量データを元に時系列に分析、相関関係を推測、パターン認識などでデータを解析し、顧客ニーズを分析するデータマイニング
(3)可視化したデータを元にした、経営層の意思決定を支援する経営指標モニタリング
 
さらに、多様化する顧客ニーズ、企業を取り巻く環境変化のスピードが増している中、企業の競争力を強化し、収益力を向上させるため、新たな事業への架け橋となる高度な分析と活用がより重要になると考えられます。
 
データベースに関わる仕事を生業としている立場から、ビッグデータ活用へのアプローチとして基盤となるのは、企業全体のビジネス活動を理解することであり、それに役立つのがデータモデリングであり、データベース設計技法であると考えます。
 
データモデルは、データのバックグラウンドにあるビジネス要素や関係性を詳らかにしたものであり、個々のテーブル間をつなぐリレーションシップは業務ルールそのものです。ビッグデータを活用し、ビジネス環境の変化に柔軟に、そして迅速に対応するには、変化に則したデータモデルの作成が有効であると考えています。
 
企業全体のビジネス活動を最適化するためには、データモデルによって管理すべきデータを明確化し、データ構造を把握・整備をして、その上で格納されているデータの状態を正確に把握することが大切です。
ビッグデータを有効に活用するにあたって、データモデリングやデータマネジメントを使った適切なデータの管理は、重要な鍵になると思います。
 
ここJDMCにおいて、吉田松陰、島津斉彬、勝海舟のような卓越した知見を持ち、日々難題に取り組まれている諸先輩の方々と共に、このような議論を盛り上げていけたら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
田代直道(たしろ・なおみち)
株式会社アクアシステムズ 技術部。業務系アプリケーションのデータモデリングの経歴が長く、複数社の基幹システムの開発におけるデータモデリング、データ分析など、主にDAとして従事。データベースの運用管理、設計構築なども行う。

※ご参考:データベースを専門としたアクアシステムズの技術情報。
・メディア掲載情報
http://www.aqua-systems.co.jp/media/
・「アクアラボ」
http://www.aqua-systems.co.jp/aqua-lab/index.html

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