JDMC「データマネジメント2015」 ユーザーセッション レポート特集

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2015 年3月13日、東京目黒雅叙園にて開催の「データマネジメント2015」のユーザセッションからいくつかをご紹介します。

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Contents

 


 

徹底してEAIを利用するデータマネジメント

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
経営戦略本部インフラマネジメント室 シニアプロジェクトマネージャー
清水 正朗 氏

「ゴルフで世界をつなぐ」をミッションに掲げるゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)。同社は「リテールビジネス(ゴルフ用品販売)」「ゴルフ場ビジネス(ゴルフ場予約)」「メディアビジネス(ゴルフ関連各種メディア)」の3つを融合・循環させる『GDOトライシクルモデル』を元に、3サービスの相互利用を目標としたゴルフのワンストップサービスを提供している。

GDOトライシクルモデルはデータ連携基盤の運営・構築にも大きな影響を与えている。「システム刷新時におけるデータ連携基盤の構築と保守運用では、①データ連携の統制、②経路の確保をマネジメントすることを重視しています」と清水氏は指摘する。データ連携においては、システム間の連携には全て「EAIの利用」を行い、「例外は原則認めない」というコンセプトを堅持する。

GDOの情報システムは「Eコマース」「ゴルフ場予約」「メディア」「その他パッケージ」というマルチプラットフォームから構成される。扱われるデータにはマスターデータ(①変化の少ない地名等、②変化が多い商品情報・ゴルフ場情報等)とトランザクションデータ(予約・販売・仕入情報等)がある。トライシクルモデルに基づいて、各事業のモデルを相互参照する機会は多い。
様々な環境・言語をまたがるデータ連携が不可欠となっていた。

そこで、外部システムも含めたデータ連携基盤をシステム刷新を契機に構築した。新システムは2011年7月から運用を続けている。

システム刷新前は異なる設計思想で開発したために、データがつぎはぎになっていたが、刷新によって統一された仕組みでデータの読み替えや大量データの扱いが可能になった。具体的には、刷新対象のシステムをEAIであるASTERIA WARPで連携し、連携元のシステム内データを連携先のシステムに受信・変換・送信するのを基本に据えている。

「各サービスにおけるログインの仕組みや顧客情報が共通であることを利用しました。プログラムの汎用性を高めたことにより、サービスが増えても連携コストを極小化できたのが成功点の1つです」(清水氏)。どこで何が起こっているのかが可視化されたため、トラブルシューティングの時間が減り、データ不整合の発見容易性・引継容易性の向上につながったという。

同社では、データ連携基盤の実現に向けて、プロパーと構築ベンダーで構成されるデータ連携チームと、運用保守チームを起ち上げている。

体制を作る上で意識したのは、①コンセプトの浸透、②EAIの利用を最優先(独自プログラムでの連携をNGとした)、③データ連携チームの統制の維持、である。連携チームの統制のためには、トップダウンを浸透させ、業務フローの定義・提示を行い、徹底したフォローを行った。「運用に向けたイメージの定着を止めないことが重要でした」(清水氏)

一方、運用保守チームは安定運用のために、監視(CPU使用率、メモリ使用量、ハードディスク使用量)を絶えず行い、重大エラーは電話通知するなど、PDCAサイクルのもとで改善を重ねている。

現在、サーバー環境については、主要サービスはプライベートクラウド上に構築し、他のサービスはパブリッククラウド(AWS)を利用している。新規事業である実店舗型ゴルフレッスンチェーン(GlofTEC社と提携)の運営にあたっては、POS-RDS(流通POSデータベースサービス)-SAPやPOS-RDS-外部ASPサービスを構築した。これらもGDOのマスターデータと連携させている。

さらに、EAIを通してログをCSV化した上でgzip圧縮し、クラウドストレージからGoogle BigQueryへロード、ログデータを直接分析するなどデータ活用も積極的に行っている。「EAIを利用し、今後もデータマネジメントに取り組んでいきます」と清水氏は展望を語った。

(まとめ:竹内玄信)

 


 

アサヒグループにおけるデータ分析・活用の実際

アサヒグループホールディングス株式会社
お客様生活文化研究部門 情報調査解析室 室長
光延 祐介 氏

販売拡大やマーケット、カスタマー創造に向けた数々の知見を獲得

光延氏が所属するアサヒグループホールディングスの「お客様生活文化研究部門」は、2000年に設立された「消費者の意識や行動を研究する専門組織」で、これまで『幸せ』に関する調査・研究、好感度消費者の調査・研究などを進めており、HPでの情報発信や書籍の発行なども行うとともに、アサヒグループへの事業貢献を行っている。

その「お客様生活文化研究部門」に、2014年10月には情報調査解析室という部署が設立された。設立の目的として光延氏は「部門としては大きく2つの目標があります。1つは、グループのマーケットリサーチ力の強化と活用・解析ノウハウの展開。もう1つは、新たなマーケティングプロセスの創造とグループ会社の展開を通じ、グループ会社のものづくり力の向上に貢献するというものです。」と述べている。

講演の冒頭では「企業がデータ分析・活用を進める上で何が問題になっているか」についての話もあった。光延氏は調査会社のデータを引用しつつ、「ビジネスとして具体的に何に活用するのかが明確でない」「投資対効果の説明が難しい」「ビジネスとデータ分析の両視点で考えられる担当者やスキルが足りない」などを挙げた。
一方、同社の情報調査解析室では独自に「そもそもデータ活用=データ分析による見える化/予測は、本当に現場から期待されていることなのか」をアンケートで調査した。対象は社内のキーパーソン。自分が、20%程度の遅れが生じている2年がかりの大型プロジェクトを任されたプロジェクトリーダーであると仮定して「統計分析手法を用いてプロジェクトの成功率を向上させるための予測分析を実施して欲しいか?」を尋ねた。その結果、「やって欲しい」と「どちらともいえない/やめてほしい」の回答がほぼ半々に分かれた。これに対して、あなたがもし経営者の立場にあったならば、という前提で同じ問いを投げかけたところ8割方が「予測分析をやってほしい」と答え、「やめてほしい」はゼロだったという。

「そのプロジェクトを担う立場によっても、データ活用の必要性や好ましさも大きく変わってきます。このあたりに注意して進めないと、一口にデータ活用といってもなかなかうまくいかないのではないかと感じています」と光延氏は調査結果に対する見解を述べた。

光延氏はこれまでも、さまざまなデータ分析・活用の取り組みを実際のビジネスの中で行ってきた。それらのテーマは「売上と施策・訪問などの営業活動の相関関係の分析」や「新商品在庫適正化にむけた関連因子の探索型データ活用」「アサヒグループの研究素材であるりんごポリフェノールのソーシャルデータ分析・活用」など多岐にわたる。アサヒグループにおける将来に向けた販売拡大やマーケット、カスタマー創造に向けた数々の知見が得られていると光延氏は語る。
「探索型データ活用では、新商品のベンチマークと数値パターンの似た過去商品を見つけ、そのデータに基づく将来の需要予測を、データ分析ツールを使って行う手法を試みました。またソーシャルデータ活用では、りんごポリフェノールの効果を訴求するにあたって、SNSやTwitterの活用や結果を検証していきました」(光延氏)

現在は、新しいキャンペーンでKPIを設定し、ブログやツイッターの相関関係を仮説に基づいて検証するといった取り組みを進めているという。

最後に光延氏はデータ活用をビジネスに生かす上で「一番大切なポイントは、まず問題が明確かどうかということ。次は、その問題は会社や部門として解決すべきものなのかということを見極めること。そして、これら2つが明確になった上で、自分たちの取り組みは本当に解決=ソリューションになっているか。この3つを押さえていくことが必要です」と語り、今後の取り組みに向け新たな意欲を見せた。

(まとめ:工藤淳)

 


 

ビッグデータ分析で最高のサービスを提供する
JALにおけるデータ分析事例と分析人材の作り方

日本航空株式会社
Web販売部 1to1マーケティンググループ アシスタント・マネジャー
渋谷 直正 氏

「自分で分析ができるマーケッター」を目指してチャレンジを

JALのWebサイト「www.jal.co.jp」の訪問者は1日に約50万人、月間のページビューはおよそ2億にも上る。同社では、この膨大なWebログデータを分析し、Webサイトの訪問者に適切なリコメンドを提供するプロジェクトを試みたと渋谷氏は語る。

「一人ひとりのお客様ごとに最適なリコメンドを行うには、まずお客様が何を望んでいるか=興味や関心、ニーズを知る必要があり、ここに分析の必要性が出てきます。その効果的な活用にはトライアルを繰り返し、精度を高めていく取り組みが欠かせません」(渋谷氏)

その一例として、同社では「国内線検索モジュールの分析」を実施した。これは訪問客がWebサイトの国内線検索モジュールに入力した日付や区間、クラス指定などのパラメータを分析して、予約購入確率の高い検索パターンの組み合わせを探し、リコメンドに反映しようという試みだ。アソシエーション分析(連関分析)と呼ばれる手法を用いて、約17万人の人を対象にお勧め運賃のバナーをリコメンドした効果を2週間にわたって検証した。

「この結果、約120万円の増収効果が見られました。金額としてはわずかですが、これを1年間続けた場合、年間での増収効果は約3000万円と考えると、やはりデータ分析の効果は見過ごせないものがあります」と渋谷氏は説明する。

こうしたデータ分析・活用を広くビジネスに生かす上で、渋谷氏は一般の事業会社におけるデータサイエンティスト育成の具体的なヒントを紹介する。一般にデータサイエンティストというと統計学の研究者や分析系コンサルタントのようなスペシャリストを連想しがちだが、渋谷氏は一般企業にはそうした専門家は必要ないと強調する。

「企業で必要なのは“自分で分析ができるマーケッター”。すなわちマーケティング部などで分析業務に携わる人のスキルをいかに上げていくかです。この成否が、企業のデータ分析を盛り上げていく鍵になると考えています」(渋谷氏)

それにはマーケティングやビジネス部門の担当者に、より高い分析スキルを会得させることが必要だ。こうした人々はビジネス知識が豊富で、問題意識や課題に対する当事者意識も高い。にもかかわらずデータ分析・活用の機運が盛り上がらないのは、文系出身者が多いため数学に対する苦手意識が強く、分析手法を知らないからだと渋谷氏は指摘する。

「たしかに統計学を学ぶのは大変で基礎の部分で挫折してしまう人が多いです。しかし、一般の事業会社における実務に必要な分野は統計学の基礎ではなく、データマイニングや多変量解析といった応用の部分です。それらは最近進化した分析ツールを使えば比較的容易に分析が可能です。しかも使用する分析手法もクロス集計、ロジスティック回帰、決定木、アソシエーション分析、非階層的クラスター分析の5つでほとんどのビジネス課題は解決できると思っています」(渋谷氏)

一般の事業会社におけるデータサイエンティストには、自社の業務に関する知識やビジネスマインド、コミュニケーション能力といったビジネスパーソンとしてのスキルがまず必要であり、それにもまして好奇心が何よりも重要だと語る渋谷氏。セッションの締めくくりにあたって、「データ分析は実に楽しい仕事です。専門知識の難しさに尻込みすることなく、より多くの方々に挑戦していただきたい」と呼びかけた。

(まとめ:工藤淳)

 


 

TONICを利用したカーシェアリングサービスで競合他社に先駆けて黒字化

パーク24株式会社
取締役執行役員
業務推進本部長
川上 紀文 氏

パーク24グループは、駐車場事業(タイムズ)とモビリティ事業(レンタカー、カーシェアリング、ロードサービス)を中心にビジネスを展開している。タイムズは土地を借りて駐車場を開設し、その賃料をオーナーに払う形態をとっており、駐車場数の拡大に加え、24時間対応のメンテナンスやコンタクトセンターの運営、クレジット決済を可能にしたことによる利用者のストレス減少などを背景に成長を遂げている。全国約15,000カ所のタイムズ駐車場の利用状況を把握するため、データ統合システムとしてTONIC(Times Online & Network Information Center)を導入している。TONICはパーク24グループの根幹となるシステムである。

国内外のタイムズやレンタカー、カーシェアがTONICに繋がっており、各駐車場・各車両のデータをリアルタイムで把握することができる。他にも様々なデータを取得して分析を行っている。タイムズの場合、月末締めで翌日には損益が分かるのが強みだ。釣り銭切れ等についても情報がコンタクトセンターにリアルタイムに送信されるので素早く把握し、対応することができる。

同社では近年、TONICを活用したタイムズカープラスの成長が顕著である。このタイムズカープラスは、24時間いつでも、短時間から利用できるカーシェアリングサービスだ。予約→目的地登録→出発→近くのタイムズ検索→専用カードで給油→予約延長→運転状況の検知→車両の返却→利用後の通知→忘れ物時の開錠→キレイ度チェックアンケートという一連の流れを全てスマホやPCで行える。2010年の1,030台(カーシェアリング用自動車台数)、会員数23,397人から5年後の2014年には10,061台、会員数414,965人にまで拡大し、2014年度には黒字化に成功している。

カーシェアリングにおけるTONIC利用手法は、次の通りだ。まず自社開発の車載器を設置し、センターとカーナビ・ドア開錠などの車のコントロールや、ICカード・鍵を収納しているグローブボックスを無線で通信し、車両・会員データ・実績データの管理を行う。そのデータを元にサービス開発や経営情報の把握、車両配備計画に役立てている。

TONICを活用したカーシェアリングにおけるポイント付与プログラムは、ステージ1~3に分かれている。キレイ度チェック(綺麗に利用したドライバーやアンケート回答者にポイント)、エコドライブ、給油によるポイントアップによって、ステージがアップする。それにより、カーシェアリングの利用チケット付与や早期予約権利などの特典が増える仕組みだ。運転データを分析し、会員へのインセンティブ付与に反映することで、事故や駐車違反を減少させるという効果も期待される。

また、TONICでは1台ごとの利用者の会員属性や車の稼働率を見ることができるため、順調なタイムズカープラスを水平展開するための手法や、エリアに合った車種導入の検討などにも利用している。さらに、車の予約状況から、予約者に車両変更の打診などを行い、同じステーションの別予約を統合することで車の稼働率アップを図り、機会損失を減らしている。
車両の配備計画は、実績情報(台数、台売り、エリア)を色分けして地図上にプロットして全体の稼働状況を把握して行っている。
さらに、カーシェアリングでは目的地設定ができるので、利用者がよく行く場所の分析結果をもとにエリア広告を打つ、といった商業施設の集客支援の提案も検討している。

現状では駐車場をベースに、駐車場とレンタカーやカーシェアなどの連携は取れてきている。今後は会員データベースを通じて会員中心の総合的なカーサービス(ロードサービス、保険など)の提供を目指していく。「最近は乗車人口が減少しているので、気軽に乗車できる会員サービスを作りたい」と川上氏はグループのビジョンを示した。

(まとめ:竹内玄信)

 


 

三越伊勢丹グループ
エムアイカードのデータ分析と活用

株式会社エムアイカード
経営企画部
経営企画グループ
マーケティング担当
担当長
肥後 龍治 氏

自社システムを持つ強みを活かした詳細な顧客分析

株式会社エムアイカードは、三越伊勢丹グループのクレジットカード会社である。伊勢丹・三越・丸井今井をはじめとして、福岡の岩田屋や名古屋栄のラシック等で会員獲得展開をしている。一般的なカード会社とは異なり、伊勢丹の「販促ツール」として発展してきた。また、テラデータ社のデータウェアハウス基盤上にSPSS(統計解析ソフト)を搭載した分析環境および、データを加工して開発した業態別の分析ツールを持っている点などに特徴がある。肥後氏は、「百貨店系カード会社の中で唯一の自社でシステムを持つカード会社であり、他社にはないカード会員の詳細属性データ・利用データが蓄積されている」と自信を持つ。

ほとんどの会員が“三越・伊勢丹”を利用する購買力がある顧客であり、国内の世帯年収1500万円以上の約2割がMIカードの会員となっている(東京都では3割に達する)。年齢別世帯分布で見ると、会員のボリュームゾーンの40〜50代の年収水準が特に高く、会員数が少ないものの20〜30代の年収水準も高い。

クレジットカードという特性から、豊富な社会ステータス属性データを同社では保有している。そこから生活感・世帯感セグメントが可能になり、百貨店の利用データを加味した嗜好性分析が行える。

肥後氏は、豊富なデータを使った分析について、①商業施設の分析、②都心3億円クラスマンション居住者(購入者)と ベッドタウンマンション(居住者)購入者の分析 、③ある化粧品ブランドのペルソナ分析(人物像の明確化)という3つの事例を詳細に説明した。この中で①が、特にエムアイカードの分析例を顕著に知ることができるので、この内容を紹介したい。

分析対象は、テナントリーシング型の商業施設であり、そこで売上が伸びた理由を分析し、さらなる売上増につなげるという案件であった。まず、MIカード会員の住所から当該商業施設までの距離を算出し、その距離別に利用金額を集計・分析した。その結果、最近増えた利用者は郊外などのロングテール商圏に属することが分かった。

年齢別で分析すると、増加した利用者は若年層の比率が高かった。さらに豊富な社会属性データを用いた「生活感セグメント」(住宅ローン・職業・結婚の有無など)で分析してみると、郊外に住む有職独身・家族同居の男女が多いことが明らかになった。当該商業施設の利用率は低いものの、利用者が実際に買い物に支払った金額は都心部と遜色がなかった。「こうした理由から、LTV (顧客生涯価値)的にも郊外の若年層顧客をターゲットにする価値がある、という見方が出てきました」(肥後氏)

さらに郊外顧客におけるショップ別の売上を分析すると、最近増えた利用者がよく利用しているテナントは、リーチする商圏距離が長いことが判明。また、利用者の多くは目的ショップでの単発買いが主体で、目的ショップ以外での買い回り額は少なかった。一方、飲食・喫茶ショップの利用者は他ショップでの買い回りが多かった。こうした理由から、飲食・喫茶を活用して、買い物時間を長くすることで買い回りの拡大が可能であるという仮説を立てている。

同社ではさらに、郊外の中でも有力地区を確認したり、ECサイト利用率との関係を調べたりと商業施設各部門担当者との分析セッションを重ね、施策提案に活かしている。分析セッションを通じて「ある程度、自分で分析したい」という商業施設側のニーズも顕在化してきた。そこで、BIツール(QlikView)を用いて館内分析を行えるツールを自社開発し、各業務部門に提供している。

担当者みずからが日々の施策にデータ分析を役立てる、という動きが現場の活力を高めている。

(まとめ:竹内玄信)

 


 

EBMと地銀連携で効果的にマーケティングモデルを開発

株式会社横浜銀行
営業企画部 グループ長
加藤 毅 氏

横浜銀行は横浜を本店とする地銀最大手で、地域社会とともに歩んでほぼ一世紀が経つ。バブル崩壊を機に、法人向けから個人向けの取引を強化。経営戦略をシフトする中でデータベースの重要性も高まった。1997年に米国のコールセンターシステムを日本のビジネス向けにアレンジしたのが本格的なデータマネジメントの始まりだ。

銀行は多くのデータを持っているが、従来は静態的な情報(年齢・性別・預金残高・貸金残高など)が中心で、モデル開発をしても類似したセグメントになってしまうなど、うまく利用しているとは言えない状況が長く続いた。しかし、IT機器の処理速度向上や取扱商品の拡大も相まって、動的取引情報や営業支援情報をマーケティングに利用できるようになってきた。横浜銀行では、ステークホルダーや顧客情報を社内横断的に共有する際にデータを活用し、顧客をリアルタイムかつ詳細にセグメント化することでマーケティングに生かしている。さらに、自動化されたアルゴリズムを用いた意思決定の代替・支援をEBM(Event Based Marketing)で実現することを目指している。

EBMの基本方針は、「お客様に変化が起きた時点でマーケティングをする」ことだ。横浜銀行では520万人の顧客を700人の担当者でカバーしなければならず、人的能力だけで個々のお客さまの変化を把握することは困難であり、そこにITを活用する意味がある。

加藤氏は「担当者の力量は一律ではありません。そこに何の差があるのかを調べると、『気付き』の能力が違うのです」と述べた。例えば、窓口で年金の振込指定をした顧客に対し、その事実に気付いて一言「お礼を言える担当者」と「言えない担当者」の違いだ。言い換えると、サービス品質の底上げを図るには、現場に「気付き」を意識的に起こせばよい。そこでEBM情報として入金・ライフイベント・期日・金融ニーズなどをまずは検知することにした。2008年の4種類から開始し、2014年12月時点では80種類のEBM情報を現場に配信している。優秀な担当者の能力をモデル化し、ITとデータによって顧客サービスを行う体制を開発したといえる。

法人ビジネスにおいても、同行ではEBMを展開している。商流の変化を検知し活用するビジネスモデル特許も取得した。その結果、入金・出金・決済増加など動きの早い法人融資に対応しやすくなった。営業支援のためのイベント検知も実施している。法人EBM全体では、2013年10月の34種類からスタートし、2014年12月現在では60種類のEBM情報を配信している。

EBMの利点は、営業プロセスの要素分解ができる所にある。例えば、イベント(=類似セグメント)ごとに「実績=アプローチすべき先数×アプローチ率×成約率×成約額」というモデルで分解すると、『どの部分に問題があったか』を細かく評価することができる。担当者もイベントを見ながら行動するようになる。ただそうなると、モデルそのものの評価がいっそう重要になってくる。「配信数、イベント間の相関関係、営業店の利用率・反応率、利用者の意見などを反映させて価値ある情報に改善しています」(加藤氏)。

データ活用は行内に留まらず、地銀連携によるデータマネジメントの方向性にも進んでいる。2007年9月に「地域金融マーケティング研究会」を発足し、北海道から九州まで全国を広く網羅した地銀22行で①MCIF・マーケティング共同化、②OJT・人材派遣、③実務プロジェクト、④研究発表などを進めている。

地方銀行は各種情報を蓄積しているが、「個人」の場合、重要なのは個々の個人情報ではなく、例えば消費行動や価値観等の「モデル」であり、エリアを離れても価値はかわらない。一方、「企業情報」の場合は、個別の情報についてしっかりとした使いやすいデータベースを作れば、マーケティングモデルを共同開発することができると加藤氏は指摘する。今後、公的機関が開示するオープンデータも、マーケティング分析に生かす考えだ。

「そうした中で、一番重要なのは人材の育成・活用です。とりわけデータを活用できる人材が日本の未来を変えていくでしょう」(加藤氏)

ただし、現場のデータサイエンティストにとって重要なのは統計データ処理だけではない。取引先の業種業務に精通することや日常の営業感覚(顧客目線)も不可欠だ。

「データサイエンティストの人材育成を地域で連携して行えば、各行が用意すべき人員は1/5、モデルの開発速度は5倍、費用は6~8割となり、限られた経営資源を効率的に使えます。PDCAによって各行のノウハウが少しずつ蓄積されると、モデル自体も高度化します」と加藤氏は述べた。人材育成を合理的かつ継続的に行うことがデータマネジメントの鍵になる。そんな思いが伝わってきた。

(まとめ:竹内玄信)

 


 

気象情報を活用した食品の需要予測によりサプライチェーンの全体最適化を目指す

一般財団法人 日本気象協会
防災ソリューション事業部
中野 俊夫 氏

経済産業省「次世代物流システム構築事業」に採択された「需要予測精度向上による食品ロス削減及び省エネ物流プロジェクト」は、平成26から平成28年度の3年計画で実施される。日本気象協会が本プロジェクトに参画しているのは、物流コストやエネルギーと気象の間に深い関連があるためだ。

「我が国の最終エネルギー消費量のうち、運輸部門が約2割を占めています。中でも食品分野の売上高に対する物流コストは全業種平均より高い。日々の売り上げが気象と関連深い日配品や特定の気象状況に需要が集中する季節商品のリバース物流コスト(返品・返送、回収、廃棄、リサイクルなどにかかる費用)の影響が大きいと見られます」(中野氏)

また、食品ロスは需要量の予測精度、注文量のミスマッチに起因すると考えられるが、需要量の予測においても気象情報を積極的に活用することで、改善の余地があるという。

一方、気象モデルの誤差は近年めざましく改善されている。よりメッシュの細かいデータを用いた短期予測だけなく、条件を変えた複数のシナリオを用いるアンサンブル予測によって長期予測の精度もこの15年で30%以上改善されてきた。

「2014年度、本プロジェクトでは、食品メーカーにおける需要予測の作成に気象情報を利用しました」(中野氏)

その一例として、京浜地区(東京・神奈川・千葉・埼玉)のスーパーやコンビニなど小売店舗における冷やし中華つゆの気温と売上の関係をモデル化した。
「売上の上昇時は気温との相関が高いため、気温のみで説明できます。ところが売上の下降時は気温だけでは十分に説明できません。検討を重ねたところ、「消費者心理の転換」や「実効気温」を合わせて考慮することで解析式の精度を向上させることができました」(中野氏)

実際に、2009~2013年のデータ解析により作成した式を用いて、猛暑で気温のピークが早かった2013年夏と対照的だった2014年夏(冷夏で気温のピークが遅かった年)の売上の推移を遡って予想してみたところ、2014年夏の実際の売上推移を、相関係数0.97という高い精度で説明することに成功した。

次に、同プロジェクトに参加している食品メーカー 、ミツカンの協力を得て、上述の冷やし中華つゆの市場規模データと、同社の生産する冷やし中華商品Mの出荷量・在庫量の関係を調べた。「商品Mの卸への出荷時期は、小売店舗などでのつゆの売上発生に対しておおむね3週間ほど先行していました。したがって、その夏の冷やし中華つゆ市場における売上を、商品M出荷3週間以上前に高い精度で予測できれば、商品Mの適正な生産量を逆算することができます。ひいては店頭における欠品の防止、または適正在庫の実現による廃棄量の削減が可能になると考えられます」と中野氏は解説した。

実際に同プロジェクトでは、冷やし中華つゆの市場規模データをもとに作成した解析式により、商品Mの出荷量を遡って予測してみた。その予測データとミツカンから提供された2010~2013年の実データを突き合わせると、余剰在庫を抑えつつ、品切れによる機会損失も減らせるという結果が得られた。

「今年度は、メーカーのデータを中心に解析を行い、気象による解析が生産調整などに利用可能であることが示されました。各企業に応用できる共通基盤とするとともに、来年度は、対象商品・エリアを拡充します。また、メーカーだけでなく、製・配・販および物流業者をが協働で需要予測を進めることで、サプライチェーン全体がどれだけ全体最適化されるか、食品ロスや省エネにつながるか調査したいと考えています」(中野氏)。

さらに同プロジェクトでは、連続的データだけでなく、人工知能などの手法を取り入れた曜日・祝日・降雨などの離散的データの解析および小売店舗における来店客数予測、さらに商品のプロモーションなどの効果(CM・チラシ)を考慮した解析方法の検討も視野に入れている。併せて、解析データの提供に協力してくれる企業を募集している。

(まとめ/柏崎吉一)

 


 

ビッグデータで実現する最新ドライブ体験
パイオニアにおけるカープローブデータの活用事例紹介

パイオニア株式会社
カーエレクトロニクス事業統括部 テレマティクス事業部
情報サービスプラットフォームセンター プラットフォーム開発部 研究開発課
データサイエンティスト
鎌田 喬浩 氏

ドライブデータに秘められた多彩な情報活用の可能性を探る

パイオニアは2006年、「スマートループ」と呼ぶテレマティクスサービスを他社に先駆けて提供開始した。これはカーナビゲーションシステムに集積されるセンサデータ(Car Probe Data)をクラウドで分析し、最新の交通状況に最適化したナビゲーションを実現するものだ。鎌田氏は「カープロープデータを分析することで、ユーザーの行動パターンや店舗の集客状況などまでが詳細に把握可能になりました。これは現在のIoTやM2M、そしてクラウドの分析基盤によるビッグデータ解析の1つの応用例ともいえます」と語る。

カープローブデータというのは、自動車の走行積算距離や日時情報などの詳細な情報がインターネット回線やモバイル端末を通じて収集されたものだ。

「カーナビで目的地を検索・選択した際の『ルート案内情報』では、どこの店に行き、どれくらいの時間滞在したかといったことも分析できます。道筋だけでなく買い物などの行動情報までが、カープローブデータから読み取れるのです」(鎌田氏)

カーナビの利用する渋滞情報は主にVICS情報だが、これは通常VICSの施設がある場所を通過しないと道路毎の渋滞情報が得られない。そこでパイオニアでは、常時インターネット経由でこのVICS情報を取得している。VICS情報が配信されていない道路では、スマートループ渋滞情報というパイオニア独自の渋滞情報を生成して提供。将来的には、カーナビでルート探索できる約70万キロの道路すべてに、スマートループ渋滞情報を提供して行こうと考えている。

続いて鎌田氏は、カープローブデータの分析・活用事例を紹介した。その1つが滞在データの分析だ。ここでは、たとえば京都の観光地を訪れたドライブ客がよく止める駐車場や、清水寺にはどの地方の人が多く訪れ、次の目的地はどこが多いかなどを知ることが可能だ。

「カープローブデータの滞在データ分析の強みは、長期的な分析が可能な点です。一過性の統計と違って、カープローブデータならばデータ収集を開始した2006年まで時系列をさかのぼって見ることが可能です」と鎌田氏は特徴を述べた。

一方、マーケティングへの応用としては、2件のデパートの実商圏分析を例に挙げる。
「ユーザー動向の調査自体は、デパート各社が自ら発行するポイントカードなどを用いて実施されています。しかし、カープローブデータを用いれば、自動車での行動データという枠組みで、他の店に対するユーザーの行動までを広く参照・比較できるという、これまでにないアドバンテージを得られます」(鎌田氏)

社会貢献活動としては、2011年の東日本大震災直後の通行実績情報の提供や、2014年の広域豪雪災害でのTwitterを使った被災地道路の映像提供などでの実績をすでに持つ。現在は国交省が進めるG空間社会実証プロジェクトに参加して、より公益性の高い道路情報の分析・活用の可能性を探っているという。

最後に鎌田氏は、「カープローブデータはまだまだ多彩な可能性を持っていると、私は考えています。また自社データだけではわからないことも、他社のデータと掛け合わせることで、大きくその価値が上がるのではないでしょうか」と期待を語った。

(まとめ:工藤淳)

 


 

統計行政における情報保護制度と情報利用について

総務省
統計局統計調査部消費統計課物価統計室室長
上田 聖 氏

パーソナルデータに転用できる「統計データの匿名化技術」

総務省統計局は、国勢調査や経済センサス基礎調査をはじめ、住宅・土地統計調査、消費者物価指数(CPI)の算定に用いられる家計調査や小売物価統計調査などの重要な調査を実施している。
「わが国では各府省が必要な統計を分散して作成しています。総務省はそれら作成の許認可権を有し、政府統計全体を管理しています」(上田氏)
総務省所管の独立行政法人統計センターでは、全府省を「集計、データ提供、システム」の側面から支援している。

第一回の国勢調査が行われたのは1920年だ。「以来、今日までありのまま調査に回答いただき、正確な統計を作成するため、統計法を柱とする厳しい法制で統計調査の回答情報(調査票情報)を保護しています」(上田氏)。
ところが情報通信技術の進展を背景に、プライバシー保護と両立させた形でのデータの利用が統計行政に求められてきた。そこで、2007年に制度化したのが、統計データの匿名化だ。匿名データは、調査の回答情報を特定の個人や法人などの識別ができないように加工したものだ。わずかな手数料を払えば、企業でも学術研究等に利用できる。

利用可能な匿名データは、国政調査、全国消費実態調査(8万世帯の家計簿)、住宅・土地統計調査(350万世帯の住宅・居住)、就業構造基本調査(50万世帯の就業状況・転職)、社会生活基本調査(10万人の行動)、労働力調査(10万人の毎月の就業状況)という総務省の6調査、および厚生労働省が実施する国民生活基礎調査の統計データだ。

一方で昨今、改正が進められる個人情報保護法の中で、パーソナルデータの匿名化(匿名加工情報)の制度化がフォーカスされている。
統計法に基づく匿名データ(政府統計)と匿名化されたパーソナルデータ(匿名加工情報)の違いは何か。上田氏は次のように説明する。
「政府統計の対象は政府の統計調査のデータおよびあらゆる個人情報です。しかし、利用目的が学術研究・教育等に制限されています。それに対して匿名加工情報の利用目的は学術研究に限られず、ビジネスなどに利用することができます」(上田氏)

匿名加工情報の加工技術については、目下検討が重ねられている段階だ。
「パーソナルデータに10年以上先行する統計法の匿名化技術や知見は、パーソナルデータの匿名加工情報にも十分、転用可能です」と上田氏は説明し、代表的な匿名化技術として、非撹乱的手法(データの削除、リコーディング)と撹乱的手法(ノイズ付与、スワッピング[データの交換]、リサンプリング)の概要を紹介した。

さらに総務省では、上述の政府統計の高度利用促進に加えて、オープンデータ推進のトップランナーとして、政府の取組を先導している。「その一環で統計APIや統計GISの拡充を進めてきました。統計APIでは「e-Stat」に、新たにWebAPI機能を付加し、全国の消費動向に関わるなど統計データを機械判読可能な形式(XML)で提供しています」(上田氏)。
統計GISでも、市区町村を細分化した地図と統計データを重ね合わせ、利用者の保有するデータを取り込んで分析できる新機能(jSTAT MAP)を2015年1月に追加した。オープンデータはビジネスにも無償で活用することができ、利用登録は「e-Stat」から行える。

総務省はまた、日本の統計教育にも力を入れている。統計解析の基礎から学べる統計力向上サイト「データサイエンス・スクール」はWeb上に公開されており、誰でも腕試しできる。また、2015年3月に開講したデータサイエンスオンライン講座は4週間程度で学べるカリキュラムで構成されている。「同講座は日本初のmoocプラットフォームgaccoで運営されており、無料で受講できます。是非、受講ください。統計局は引き続き、情報保護、情報利用、人材育成を推進してまいりたいと思います」と上田氏は述べた。

(まとめ:柏崎吉一)

 


 

スマホユーザーを意識した「コト軸」中心のデジタルマーケティング

ライオン株式会社
宣伝部デジタルコミュニケーション推進室
中村 大亮 氏

インターネットを利用した人々のメディア接触時間がテレビと並び、スマートフォンを用いたメディア接触時間も増加している。ライオンのトップ5ブランドサイトに対するスマートフォンアクセス率も、2013年5月は約40%だったが、2014年11月には70%超にまで増加した。こうした生活者の変化を理由に、ライオンはスマートフォンとデータに注目している。

PCとスマートフォンのアクセスを比較すると、PCはブランド軸(クリニカなどの商品名)の検索が多い一方で、スマートフォンはコト軸(虫歯予防など一般的なワード)の検索が多い。スマートフォンを使って日頃の悩みを検索する傾向があるとはいうものの、情報爆発が発生するインターネット上で商品情報を提供するだけでは、生活者の目に魅力のあるコンテンツとして映らない。そこで、コト軸を中心にウェブサイトを構築するアプローチを採っている。

とはいえ、まだ本格的な対策を始めて半年であり、コンテンツの散在、インタラクティブなコミュニケーションの不足、閲覧環境への対応不足、マーケティングに活用するためのデータが散在・低品質といった問題を認識していると中村氏は述べた。デジタルマーケティングの全体構想としては、①オウンド(自社)メディア、②アーンド(評判を得る)メディア、③ペイド(有償)メディア、④社外パートナーとの取り組み連携、の4つをまとめるデータマネジメントプラットフォーム(DMP)の構築を目標にしている。「コンセプトは『ユーザーファースト』。何よりもユーザーの役に立つことが最優先です」(中村氏)。

オウンドメディアの再構築の一環で、2014年10月にリリースしたのがLidea(リデア)だ。LideaはLIONとideaの合成語で、ライオンが公式に提供する洗濯・掃除などのアイデア情報を意味する。4つの既存サイトに散在していたコンテンツを統合している。その中で「くらしのなるほど!コンテンツ」と「いろどりプロジェクト」の2種類のコンテンツをブログ形式で発信している。検索してもらったコンテンツがSNSで拡散されることを目標に据えた。課題発生→検索→コンテンツ→ブランドサイトの流れを意識する、コト軸中心のサイト設計だ。

「DMPを導入した背景には、コミュニケーション設計の重視がありました」と中村氏は説明した。コミュニケーション設計を5W1Hで考えれば、How(手法)・When(タイミング)・Where(コンテンツ)が「戦術」、Who(クラスタ)・What(ニーズ)・Why(目的)が「戦略」となる。従来型コミュニケーションはWhy(目的)とHow(手法)に偏ったおり、戦略を練ろうとしても戦術を変えようとしても、それを実行するための知見とリソースが不足して、一方的なコミュニケーションになりがちである。これを改め、戦略フェーズにおいてデータ資産情報を集約・可視化し、戦術フェーズにおいて速いPDCAサイクルとOne to One(各ユーザーに適したコンテンツと手法によるコミュニケーション)を実現するのが同社の理想だ。

例えば広告では、ユーザーを分析(アクセス解析・オフラインPOSデータ、会員登録データ、ソーシャルデータ)することにより、広い視点でのDMP活用を目指している。広告の最適化としてメール・広告・販売代理店・WEBなどが挙げられるが、「DMPを構築してマーケティングを行うことで、オフライン・オンラインの両方を兼ねた様々なビジネス活用に繋げられる可能性があります」(中村氏)

「Lideaの考え方は、集客を行うというよりもむしろ、オールウェイズオンの考え方を基づいて、情報にアクセスしたい人にコンテンツプロバイダとして情報を配信する発想に近いといえます。Lideaでアクセスが多かったコンテンツについて販売店との間でデータ共有する、といった連携・タイアップも可能になります」と中村氏。生活情報に関するデータを今後の店頭づくりに活かしたいとの意欲を述べた。

(まとめ:竹内玄信)

 


 

コマツ製品データのグローバル管理と一気通貫の流れ

株式会社 小松製作所
情報戦略本部 ソリューション部 デジタル・エンジニアリング グループ グループ長
横堀 達也氏

「統合部品表システム」を通じて“グローバル時代のもの作り”を探る

小松製作所は、「製品にITを織り込む」、「ITを業務に生かす」をモットーに、常に業務へのICT活用にチャレンジしてきた。今回のテーマである「部品表データのグローバル管理」もそうした先進的な取り組みの1つだ。当時、小松製作所ではグローバル経営課題として、「グローバル共同開発の実現」と「世界同時量産の実現」の2つを掲げていた。この背景には、欧米やアジアにおける新しい時代の顧客ニーズや市場変化があった。

「こうした中、IT部門にも課題の解決に向けた取り組みが命じられました。従来は国内のマザー工場で量産体制を立ち上げ、それが軌道に乗った後、海外のチャイルド工場を立ち上げていました。この国内から海外までのリードタイムを、これまでの半年から半分以下の3か月以内に短縮するというミッションでした」と横堀氏は振り返る。

そこで2006年に始まったのが、「統合部品表システムプロジェクトだ。これはたとえば米国、日本の設計技術者が各自で設計したブルドーザの部品設計データを「統合部品表システム」に入力し、1台分にまとめた上でブラジル工場のERPに集約して、リアルタイムで共有・生産を行うという画期的な仕組みだ。この統合部品表システムをデータの流れという観点から見ると、日・米・欧の各拠点で作られた設計データはいったん統合部品表システムに集約され、そこからまた世界各国の工場のERPに取り込まれて生産が行われる。

komatsu
(※図はクリック拡大)

「当社はエンジニアリングから生産まで設計情報を源流とした一気通貫を可能とする統合部品表システムにより、マザー設計部門から設計・製造部品表が世界の各生産工場に構築したERPパッケージへ一斉配信され、各工場における各国仕様の製品設計・製造とリアルタイムな連携を実現しました。これは、日本の得意な統合型ものづくりをグローバル展開する上での強力なツールになっていると自負します」(横堀氏)

新たな取り組みとして、現在、小松製作所では「次世代パーツカタログの制作」に取り組んでいると横堀氏は明かす。このパーツカタログは部品の分解図と部品リストで構成され、機器メンテナンスの現場でサービスマンが必要なパーツを確認・発注する際に必ず利用される冊子だ。このパーツカタログをデータマネジメントの観点から見直してみた結果、2つの問題が発見された。1つは、部品リスト情報が車両1台ごとの単位で管理されておらず使いにくいこと。もう1つは、部品のイラストデータを制作の過程で何度も変換するため、作業の流れが寸断されたり、中間データが失われる危険があるということだった。

「現在はまだこれらの課題克服の具体的な構想を検討中ですが、近い将来、この新しいパーツカタログと、建設機械の情報を遠隔で収集するKOMTRAXとが合体すれば、強力な経営強化のための情報システムになると確信しています」(横堀氏)

こうした一連の成果を踏まえて横堀氏は、「データマネジメントにおいては“良いデータの流れを創る”という動的な観点から検討することが大切です。それが実現できれば、経営にも生産にも大きな改善効果が得られると考えています」と語り、セッションを締めくくった。

(まとめ:工藤淳)

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