第4回:なぜ日本ではマスターデータ管理(MDM)が進まないのか?

2012-11-29

JDMC運営委員/伊阪コンサルティング事務所 代表 伊阪哲雄氏

少々古い話題で恐縮であるが、日本中を寝不足に追い込んだロンドン五輪。日本のメダル獲得数を分析してみた。というと大げさだが、メダル合計962個のうち日本が獲得したのは38個。割合にすると3.95%だった。体格やメダル獲得者に対する報償などのハンデを補って4%を獲得したのは評価されてしかるべきだろう。

個人と団体別では、個人種目30個に対し団体種目8個である。この数字だけ見ると日本は個人種目で頑張ったかに見えるが、母数の962個のうち個人種目は873もあり、団体は89しかない。つまり個人、団体別に日本の占めた割合はそれぞれ3.43%、8.99%と、団体の方が、圧倒的に獲得率が高かったのだ。

実際、中継を見ていても日本人の得意分野は個人より団体だと多くの人が感じたかもしれない。周知のように、団体のメダルの内訳は銀が5個で、銅が3個であり、金はゼロ。突出した強さはないにせよ、あきらめず頑張り、敗戦しても爽やかで印象深い戦いが多かったように思う。スポーツの世界でのチーム・プレイでは、スタッフと控え選手などを含めると概ね15人から30人位の単位が一般的なようで、いささか強引だが、結果から見る限り、この規模では日本人は効果的に仕事ができるようである。

さて、ここからが本題だ。MDMの実践は個人技ではなく、明らかにチーム・プレイである。統制のとれた指揮命令系統と役割に応じた権限に基づき、関係者が目標に向けて仕事をこなす必要があるからである。日本人がチーム・プレイに優れるとすれば、MDMもうまくいってしかるべきだが、現実はそうではない。なぜだろうか?

理由は色々考えられるが、集約すれば監督の不在、個々人の役割定義の不在などが大きな理由だと筆者は見ている。マスターデータを維持管理するためのチーム作りが不十分なのだ。逆に、「君はMDMの担当だから頑張って」などと言っておけばどうにかするだろう、現場の人は勝手にマスター登録などしないだろう、といった具合に「個人プレー」になっているのではないか。筆者自身が、これまでの仕事を通じて実際に見聞きしてきた組織がそうだった。

しかしもはやそれは許されないと思う。「体格差というハンデを克服し、銀メダルを取ったなでしこジャパンはすごい」と言うだけではなく、彼女らから学ぶことがあるとすれば、戦略・戦術・戦闘における各人の役割定義、勝つための不断の行動などである。MDMに還元して言えば、問題の所在、それを克服するための戦略と戦術、MDM担当者やチームと現場のエンドユーザーの役割定義、ITツールの活用などの筋道を立てて考えることだ。

MDMについての実務に関わる関係者は最低50名で平均的には百人以上単位での部門間でデータ共有であろう。その単位になった場合、どうも日本人は得意ではないように思える。スポーツの世界でのチーム・プレイと異なる要素が多くを占めるのではないだろうか?言い換えれば、課ないし部単位での数十人単位で効果的に機能する方策を延べ数百名単位の集団で効果的に機能させる方策の検討が求められている。どうもこのような協調があまり得意でないようである。MDM導入における成功事例では、いわゆる「ベスト・プラクティス」を重視し、実施過程におけるCEO及びCIOを中核とするリーダーシップ及び組織作りを丹念に行う。また、実務を推進するためにデータ・スチワードのような機能を準備・育成が鍵である。それらを研究するためにも、JDMCの開催する定例セミナ及びカンファレンスなどに参加し、他社事例から各種の効果を知ることも貴重である。

この40年ほどIT業界に属している立場から考えると、2000年以降のITバブル崩壊と2009年のリーマンショックにより、大変残念ながら、北米に比べ、国内のIT投資は、非常に消極的であり、その結果として、昨年JDMCのカンファレンスでの事例発表の量と質を比較すると、米国の導入ペースに対して、5年程度遅れていると思われる。

国内でのMDMについては、「金」が取れなくとも「いぶし銀」を狙ってはどうか。MDMによりもたらされる期待効果の代表的なものは、「データ入力・分析などの実作業効率改善」、「組織横断的なインテリジェンス」の有効活用により、「自社の主要製品の市場でのリーダーシップの維持」であったり、「新製品発売に対する準備」であったり、「先を見越したコンプライアンス」などが代表的なものであると筆者は考える。

2012/10/23

─ 伊阪哲雄氏プロフィール ──────────────────────
デー タマネジメントを専門とするITコンサルタント。1970年、大手コンピュータメーカーに入社して以来、一貫してデータモデリング/設計やデータクレンジ ング、データ統合、マスターデータ管理、データ・ガバナンス組織、人材育成に関わる支援を行ってきた。特に通信業界、医薬業界や、金融業界のデータマネジ メントに詳しい。米国など海外の事情にも通じ、例えば米MDM Instituteが主催するカンファレンスには毎年欠かさず参加している。
e-mail: isaka@isaka.com



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