日本データマネージメント・コンソーシアム

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No.3 尾花 学氏「『共有』から『教有』のデータマネジメントへ」

本コラムでは、JDMCの諸活動にご指導ご支援くださっている理事の方々の“思い”をお届けします。今回は、日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 サービスイノベーション統括本部 事業主管兼ビッグデータ本部長 尾花 学さんからのメッセージです。

「『共有』から『教有』のデータマネジメントへ」

 
本年度より理事を務めさせていただいている日立製作所の尾花です。約30年間ITに従事してきて、ITにおけるデータマネジメントの観点の変化について感じていることを述べさせていただきます。以下、大きく3つの時代に分けた考察です。
 
■1980年~1994年:データの集計自動化

各事業体が「業務スピードの向上と業務品質の均一化」を最大の目的としてITを導入しようとしたもの、CPUパワーやI/Oスピードの不足が明らかでした。そのため、各業務担当者は現場でスプレッドシートを駆使し、担当業務に最適なデータ集計モデルを作り出し、情報システム部門がこれらの集計モデルに対して段階的にインタフェースとイベント制御設計することでシステムを構築していったという時代です。データ指向で言い換えれば『マスターデータのモデル化時代』となります。
 
■1995年~2009年:データの標準化・共有化

CPUパワーやI/Oスピードが飛躍的に向上したことにより、業務単位の作業スピードや業務品質の向上が進みました。しかしながら、個別業務単位の最適化で作り上げたサイロ型システムの乱立により、事業全体の業務フローの整合性維持が課題として浮上しました。その結果、データモデルとインタフェースの共通化推進が連呼されました。
 
しかし個別最適で構築した各システムの標準化・データモデルを統合するためのリプレース工数の膨大さに腰が引け、最終的には各システム間のデータモデル連携を現場担当者がその場しのぎ的にスプレッドシートで解決、情報システム部門はオブジェクト指向プログラミングを駆使したことにより連携アプリケーションの数が肥大化した時代です。データ指向で言い換えれば、『業務間連携データのモデル化時代』となります。
 
■2010年~:データの再編集・教有の迅速化

この頃から「CPUパワーの余剰」という現象が表出化し、各事業体においてもITを導入する目的は「業務スピード向上と業務品質の均一化」から「市場動向の予兆把握」「経営判断のスピード向上」「顧客価値創出」へと変化していきました。そして多種多様なデータを組み合わせることにより新しい価値が見つかるかもしれないという期待から、ビックデータという言葉がもてはやされるようになったのは周知のとおりです。
 
要するに、定型的なモノは供給過多状態になってきたため、非定型のサービスを継続的に作り出すことが求められる時代になり、「乱立するマスターデータモデル」「分散する連携データモデル」の存在を認識しながら、新たな市場価値を模索するための新しいデータ管理方法を作り出す必要がある――このように私はとらえております。
 
この「新しいデータ管理」においては、「データ再編集(※1)の迅速化」「データの“教有”化(※2)」を実現することが必須で求められているのではないでしょうか。
 
※1:データの再編集
非定型業務で新しい施策を策定する場合、過去実績を利用して新しい施策のシミュレーションを繰り返すはずで、データの再編集とその迅速化が必要になります。
 
※2:データの“教有”化
“教有”は、個人的な造語です。シミュレーションで期待する効果が検出できた場合、連携する業務/組織に対して新価値を実現する施策がある(発生した)ことをいち早く教え、変化を促す必要性があるはずだと考えています。
 
 
このような環境変化の中、JDMCの活動は、生活/業務/事業/環境の各面でブレークスルーを生み出していくうえで重要なミッションを担っていると確信しています。皆さんの知恵と発想、そして行動力をいかんなく発揮していただければと考えております。私も微力ながら協力させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 
 

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