2015年7月30日、記念すべき第30回目のJDMC定例セミナーが外苑前にある日本オラクル株式会社のセミナールームをお借りして催された。
2011年6月28日に第1回JDMC定例セミナーがJDMC会員向けに開催されたが、その時の講演テーマは「いま、なぜデータマネジメントが求められるのか?〜改めて、その背景を分析する〜」と「米国におけるビッグデータの潮流と企業DWH(EDW)との関わりについて」だった。
当時は「ビッグデータ」という言葉も耳慣れず、ましてデータの価値を高める「データマネージメントの必要性」に対する認知度は非常に低いものと思われていた。しかし、今回登壇いただいた株式会社 小松製作所とライオン株式会社は、それよりはるか以前から経営課題を解決するためのデータマネージメントの取り組みを開始されていたことに、強く感銘をうけた。
前回の第29回JDMC定例セミナーに続き、今回もJDMCデータマネジメント賞を受賞された企業の成功事例を共有いただいた。ご存知とはおもうが、小松製作所はデータマネジメント大賞を、ライオン株式会社はデータ統合賞を受賞されている。
1つ目の講演では、小松製作所 情報戦略本部 ソリューション部 デジタル・エンジニアリング グループグループ長 横堀氏より「コマツ製品データのグローバル管理と一気通貫の流れ」というタイトルで、部品表データのグローバル管理の実現にむけた目標、課題、施策、成果、今後の課題(チャレンジ)に関するお話をお聞かせいただいた。「設計変更情報をスムーズに流すこと」に向け、データをどう取り扱うかの構想は、2003年から始まったとのこと。さらに講演後の活発な質疑応答のなかで、メタデータといった観点のなかった時代から、企業風土により先人たちが将来を見越した適切な名称管理ルールを導入し、規則化していたことが土台となって今回の部品表データのグローバル管理ができたことをお聞かせいただけたことは、非常に有意義であるとともに、こういった背景を踏まえた理解ができるのもJDMC定例セミナーの良さであると思う。
2つ目の講演では、ライオン 統合システム部 部長 宇都宮氏より 「基幹業務システム再整備への取組み~システム連携基盤導入と統合DBへの移行~」というタイトルで、活用できるシステムは生かしつつ、サイロ化されたデータを、有効なツールの組合せで最適なシステムに再整備された、まさに「データ統合賞」にふさわしいお話をお聞かせいただいた。
全体として費用面の効果を強調されていたが、聴講して印象に残ったことは、データの素性を見極め利用できるものはそのままの仕掛けを残し、無駄や重複を排除し、必要最低限の作直す部分はしっかり作り直すといったことを、期間を決め、丁寧に熟考されて実行されているというところだ。
また、マーケティング支援の部分で、既存の仕掛けを残すことで若手へ熟練技術者からのノウハウの継承ができたといった副次的効果を紹介されていたが、まさに企業の特長をだすためにはこういった新旧の知見の融合は必須であり、人材育成に生かしていきたい部分である。
講演を通じて、小松製作所の横堀氏から「よいデータの流れを作るという動的な観点から検討することが肝要である」という言葉をお送りいただいた。その言葉をお聞きして、JDMCのとある研究会で以前、企業価値を高めるデータはその企業にとって「筋の良いデータ」であり、その「筋の良いデータを活用できる仕掛け」が重要であるといった議論を思い出した。
「よいデータ」は企業毎に異なるし、それ単体でなく、種々のデータをブレンディングする必要がある場合もあると思う。皆様には、JDMCの活動を通じ、自社の「よいデータ」を見つけ、活用できる流れをつくり、企業活動に役立てていただきたいと思う。
※終了後の懇親会にて、講師を囲んで記念撮影