(セミナー部会・脇本 康宣)
2020年8月7日開催の第51回定例セミナーは、新型コロナウイルスの感染者数が増加傾向にある中、JDMC定例セミナー初のVimeoによる会員限定の動画配信セミナーとなった。
「これからの働き方 ~コロナ禍の影響と長期的な働き方改革~」と題して、ファシリティマネジメントの専門家である似内氏にご講演いただき、その後NTTコムウェアの津村氏が聞き手となりトークセッションを行った。どの企業も直面しているテーマであったことや、公開開始後好きな時間に視聴することができるということもあり、多くの会員の方々にご視聴いただいた。
講演:「これからの働き方 ~コロナ禍の影響と長期的な働き方改革~」
似内 志朗
公)日本ファシリティマネジメント協会理事・調査研究委員長
21世紀金融鼓動原則環境不動産WG共同座長
ファシリティデザインラボ代表
ヴォンエルフシニアアドバイザー
筑波大学客員教授
ゲスト講師の似内氏は、郵政省 不動産企画責任者としてJPタワーなどの事業統括をはじめ、都市・建築・ファシリティマネジメントに長年携わってこられ、現在は環境関連や働き方のコンサルタントをされている専門家である。 新型コロナウイルスが広まる前から、オフィスの未来について、不動産業界では以下のことがいわれてきた。
- イノベーションが求められる時代に
- テレワークが新しい不動産を生む
- 本社集約とテレワークのハイブリッドが進む
- 優れたオフィス環境が都市の競争力を高める
特に、本社集約と在宅テレワークのハイブリッド化により全体最適化することで、高生産性、高QOLにつながるといわれてきたが、現実はあまり進んでいなかった。しかし、新型コロナウイルスの影響により、変化が加速する一方、考え方の修正が必要になってきている。
国内では、長時間労働により働き方改革や健康経営などが進められており、国際社会ではSDGsやパリ協定などにより、ESG(環境・社会・ガバナンス)の価値観の転換が進んでいる。また、最近はGAFAに代表されるような人のアイディアが富を生む時代に変わってきたことから、経緯はそれぞれ違うものの、人間にフォーカスされる時代に変化してきている。
そのような状況の中、新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務推進やオフィスの在り方を再考する動きが出てきている。
一方、国際社会においてはサステナブルなビジネスは長期利益に結び付かないという懸念から世界のESG投資はコロナ禍中に20%伸びているといった社会の状況を踏まえて、働き方やオフィスはどのように変化していくのがよいか?似内氏より「Safety & Compact Office」という考え方の提唱があった。今までのオフィスは本社機能集約、効率的面積配分、立地ブランディングに重きがおかれていたが、今後は人のアイディアから価値を引き出すために、ABW(Active Based Working)や多様性の重視したイノベーション型オフィスになり、アイディアを生む、安全でコンパクトな本社オフィスに人が集まるリアル場と、在宅、街中(カフェ)、遠隔オフィスなどでのリモートワークの場のベストミックス、つまり「ハブ&スポーク型のワークプレイス」が理想的なオフィスおよび働き方ができる環境ではないかと似内氏は語った。
今後は新型コロナウイルスと付き合いながら、人が快適に暮らせることが求められる。コロナを契機に、働き方が変わって生産性向上していくことをきっかけにして、SDGsやESGを含めてよい方向に変えていくことが必要になってくるのではないだろうか。
今回はデータマネジメントのテーマ直球ではなかったが、コロナ禍により、企業を取り巻く環境がどう変化しているか?働き方がどう変わっていくか?を考えるよいきっかけになったのではないかと感じた。
※動画アーカイブはJDMC会員のみご視聴いただけます。
https://japan-dmc.org/?p=12564