日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.121】株式会社WOWOW 稲垣 幸俊さん─データ活用環境の全面改革に挑むチャレンジとビジョン

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、株式会社WOWOW 稲垣 幸俊さん です。


JDMC会員の皆さま、はじめまして。

2024年2月より入会いたしました株式会社WOWOWの稲垣と申します。現在、データマネジメント活動を推進する部門を担当しております。

まずは、WOWOWについて簡単にご紹介を。約40年前に設立された弊社は、衛星放送を主力に据えつつ、2012年からは配信サービスを加えたSVODサービスを提供しております。扱うコンテンツは多岐にわたり、映画、海外ドラマ、オリジナルのドラマやドキュメンタリー、テニスやサッカーなどのスポーツ、音楽ライブ、アニメなどを放送及び配信しております。

弊社では、2010年代半ばに最初のデータ活用基盤を構築し、データ活用を進めてきました。しかしながら、現行環境の経年劣化などによりデータ活用環境が複雑化した上、ガバナンスも不十分な状態となっており、データ活用のスピードや利便性が低下する問題が生じていました。

その後、いくつかの調査を行った結果、ガバナンスを含めたデータ活用環境のリニューアルが必要だと判断し、現在、新たなデータ活用基盤への刷新とガバナンスの再整備に向けたプロジェクトを立ち上げています。

そこで、この場ではデータ活用環境のリニューアルに向けた意気込みや、今後重視していきたいことについてお話ししようと思います。

●継続と蓄積が導く熱量の高まり

弊社では、会員への理解を深めるためにデータ活用の重要性を認識し、これまで活用してきましたが、事業の状況や戦略によって、データ活用に対する熱量は波のように上下することがありました。そのような中、直近の熱量は過去最高に近いレベルに達している状況ではないかと思っています。

理由は複数考えられますが、その一つとして、事業環境が複雑化・曖昧化する中で答えが分からない課題やテーマが増えてきており、その中で事業成長や変革をするためには「事実をしっかりとデータで可視化し、可視化された情報を基に仮説を設計し、データを使って検証しながら、PDCAを回すことが答えに近づく方法の一つである」ということが、社内の啓発活動や成功事例の積み重ねを経て、組織内の認識が高まったことが要因の一つだと考えています。

このような熱量の高まりや、現データ活用環境ベースで進めた場合のリスクに鑑み、データ活用環境をリニューアルするという意思決定が下されました。

●データ活用環境のリニューアルで重視したいこと

データ活用環境を新たに再構築する場合に留意すべき点は多々あると思いますが、その中でも、弊社の状況などを踏まえ、特に重視していきたいことを3つ挙げてみます。

1.「スピード・利便性」と「ルール」のバランスの見極め

弊社は会員の個人情報を預かっているため、法令に対する準拠は必須です。そのため一定のルールは必要となりますが、リスクを排除する方向に振り切ってしまうと、がんじがらめの手順やフローになってしまいます。結果として、ルールへの対応がボトルネックとなり、データ活用のスピードやモチベーションが低下し、事業機会を損なう恐れがあります。

データ活用に際して発生するリスクを可視化し、その中で受容できるものとそうでないものを見極めながら、バランスをとっていきたいと考えています。

2.企業内のデータ活用実績の資産化

現在、弊社では似たようなダッシュボードや、全く使用されていないダッシュボード・データマートが複数存在しています。その要因の一つとして、複数の社員が同様の目的で似たものを別々に作成してしまうことが挙げられます。さらに、データを抽出する際の定義が統一されておらず、どちらが正しいものかが判別できず、結局どちらも使用されなくなってしまったケースもありました。

ロジックが統一されず、不要なものが発生してしまう点も課題でもありますが、各データ活用の実績が蓄積されず、組織として知見を蓄積・高度化する機会を逃してしまっている、という点をより重要な課題として捉えています。

各データ活用の実績をいかにして資産化し、組織として知見を積み上げ、発展的に再利用できる仕組みを実現するかを環境に反映していきたいと考えています。

3.仕組みとヒトとガバナンスを三位一体で高度化

私は料理に例えたりしますが、キッチンがどんなに立派でも、作り手のスキルや知識が不足していると美味しいものは作れないですし、キッチンと作り手が一流でも、ルールが整っていない場合はオペレーションが滞るなど、さまざまな問題が発生するだろうことは容易に想像がつきます。

今回のデータ活用環境のリニューアルでも、キッチンとなる仕組み(システムとプロセス)、作り手であるヒト、ルール含めたガバナンスを三位一体で捉え、バランスよくデータ活用環境の高度化を推進していきたいと思っています。特にシステムを作ってしまうと一定の達成感が生まれがちですので、その感覚に安住せず、前進していきたいです。

まだプロジェクトが立ち上がったばかりということもあり、ポエムのような内容となってしまいましたが、同様の課題を解決されたご経験を持つJDMC参加企業様も多いかと思います。ぜひコミュニケーションをとらせていただき、アドバイスをいただけますと幸いです。今後とも、よろしくお願いいたします。


稲垣 幸俊(いながき ゆきとし)
株式会社WOWOW デジタル戦略局
データマネジメント・ユニット ユニット長

SIerでエンジニアとしてキャリアをスタート。主にインフラ領域を主担当として、大手通信キャリア向けの基幹システムプロジェクトに複数従事。また、同企業ではエンタープライズ向けのサービス企画などにも従事。その後コンテンツ業界へ転身し、マーケティング部門でデータドリブン環境の整備・推進、経営企画部門では中期経営計画作成業務、BPR業務等に従事した後、コンサル業界に転身し、成長戦略やガバナンス等のアドバイザリー業務に従事。2024年1月よりWOWOWに参画。

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