【Vol.15】立石憲彰氏 真の「オープンデータ・ビッグデータの活用の推進」に大いに期待!


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JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、ワサープの立石憲彰さんです。
 
 

真の「オープンデータ・ビッグデータの活用の推進」に大いに期待!

 
 今回、JDMCリレーコラムのバトンを受け取った株式会社ワサープの立石憲彰と申します。私は1973年から2007年までの35年間、テレビの視聴率調査でご存知のビデオリサーチに勤務し、主に「マーケティング・リサーチ(市場調査)」の実務とマネジメントに携わりました。その後、一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)で事務局長を6年間務めました、リサーチの実務家です。
 
 理論をきちんと学んだ専門家でも研究者でもありませんが、今回、せっかくの機会をいただきましたので、マーケティング・リサーチという特殊・専門的な分野に携わった経験・実務的知識から、データマネジメント、ビッグデータ、オープンデータについて最近思うことを述べたいと思います。
 
 昨年5月にJMRAを退職しましたが、「日本におけるマーケティング・リサーチはこれでいいのか?」などと問いたくなるような腑に落ちないこともいくつかありました。強く思ったのが、統計、世論調査、社会調査、マーケティング・リサーチはもっと手軽に、広く、有効に使われるべきであるということです。そのためには、オープンデータ化が必要で、社会にフィードバックをしていきたい思いもあり、この分野のビジネスに本腰を入れて取り組もうと株式会社ワサープという会社を立ち上げたのです。
 
 そのような中でJDMCの活動を知り、昨年秋に入会しました。研究会はテーマ3、テーマ5、テーマ6と3つに参加しています。ただ、少々欲張ってしまったのかなかなか出席ができずご迷惑をおかけしていると思い、メンバーの皆様にはこの場を借りてお詫びいたします。
 
 私が長年携わってきたマーケティング・リサーチは「統計」の一分野です。統計は、「現象を調査することによって数量で把握すること、または、調査によって得られた数量データのことである」(ウィキペディア)、「集団における個々の要素の分布を調べ、その集団の傾向・性質などを数量的に統一的に明らかにすること。また、その結果として得られた数値」(広辞苑)と定義されており、これらの定義もマーケティング・リサーチが統計の一分野であることを裏づけていると言えます。
 
 JDMCのWebサイトに掲載されている浜口友一会長からのメッセージの中に「『ビッグデータ』『オープンデータ』の社会におけるデータの重要性は非常に高まっているが、ビッグデータを活用する専門家がいないし、(中略)オープンデータに関しても、米国や英国など諸外国に遅れをとっているのが実情である」とあります。私の関心は、まさに「マーケティング・リサーチを含む統計データ」をオープン化していくアプローチにあります。
 
 2013年6月14日に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20130614/siryou1.pdf)の中で、「オープンデータ・ビッグデータの活用の推進」が挙げられており、少し長いですがそこでの記述を引用します。
 
――行政が保有する地理空間情報(G 空間情報)、防災・減災情報、調達情報、統計情報等の公共データや、企業が保有する顧客情報、個人のライフログ情報等、社会や市場に存在する多種多量の情報、いわゆる「ビッグデータ」を相互に結び付け、活用することにより、例えば、環境、教育、交通等の多様なデータを集約・整理してその地域の状況を分かりやすく示す不動産情報提供、多種大量のデータから顧客のニーズに応じたデータを自動的に抽出するプログラム開発などの新ビジネスや官民協働の新サービスが創出され、企業活動、消費者行動や社会生活にもイノベーションが創出される社会を実現する――
 
 同宣言においてオープンデータは、官公庁をはじめとする諸機関が有するデータを外部に公表して利活用を図り、その結果、新ビジネスや官民協働の新サービスが創出され、企業活動、消費者行動や社会生活にもイノベーションが創出される社会を実現することとあります。しかしながら、現状を見るに、官公庁のいわゆる公的統計データのオープン化推進は俎上に載っていますが、同じ統計データであるはずの世論調査、社会調査や、さらにマーケティング・リサーチのデータは議論の対象となっていません。
 
 オープンにされたデータを利活用して新ビジネスや新サービスを創出し、企業活動、消費者行動や社会生活にもイノベーションが創出される社会を実現するためには、官公庁のいわゆる公的統計データだけでなく、民間企業が過去蓄積した膨大なマーケティング・リサーチのデータもオープン化が進められるべきだと強く思います。
 
 ここで、日本における市場調査の規模について少し補足します。JMRAは毎年、市場調査専門会社である正会員を対象に「経営業務実態調査」を実施しています。この調査で日本のマーケティング・リサーチ業界の市場規模を把握し、欧州のESOMAR(ヨーロッパの市場調査協協会)に提供する調査結果が、GLOBAL MARKETING RESEARCH LANDSCAPEの中で、マーケティング・リサーチの国別市場規模として公表されています。
 
 ちなみに、日本のマーケティング・リサーチ業界の2012年度市場規模は1,819億円(2011年度1,731億円で、前年比105.1%)でした(https://www.jmra-net.or.jp/trend/investigation/pdf/realities_38/gyoumujitai2013.pdf)。
 
 また、GLOBAL MARKETING RESEARCH LANDSCAPE: ESOMARの2012年の結果は、1位がアメリカで13,756百万ドル、 2位がイギリスで5,076百万ドル、3位がドイツで3,321百万ドル、4位がフランスで2,568百万ドル、そして5位が日本で2,234百万ドルという順位になっています。中国は6位でしたが(1,651百万ドル)、2ケタ成長で急速に伸びており、近く、日本を追い越すことでしょう( https://www.jmra-net.or.jp/trend/international/pdf/mr_landscape2013_J.pdf)。
 
 では、日本のマーケティング・リサーチ業界の市場規模は、ビッグデータと比較してどのような関係になるかも見ておきます。IDC Japanが2013年8月26日に発表した「国内のビッグデータテクノロジー/サービス市場予測」によると、2012年の国内IT市場におけるビッグデータ技術/サービス市場の規模は206億7,000万円でした。2013年は前年比41.9%増の293億3,000万円に拡大し、さらに2017年には1,015億6,000万円になると予測しています( http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20130826Apr.html )。
 
 (この比較を正確に行う上では、調査の仕方、対象などを吟味する必要がありますが)、今のところ、マーケティング・リサーチ業界の市場規模の方が大きいと言えます。このように、民間の企業が専門調査会社に発注したり、データを購入したりしている金額の合計であるマーケティング・リサーチの市場規模ですが、実に大きいコストが支払われています。しかし、マーケティング・リサーチの結果は、企業の課題解決のために活用され、企業秘密として扱われることが多く、その後、企業内で保管され、オープンにされることは、ほとんどないというのが実情です。
 
 このようにマーケティング・リサーチは、高額なコストを使って、一般の生活者・消費者から意見を聞き、統計を取ったものです。したがって、社会の財産と言えるものでもあり、一定期間が過ぎ使命を終えたデータは、社会への還元という観点から、オープン化される方向に進むべきだというのが私の考えです。このような考えも抱きながら、JDMCの研究会で皆様と議論させていただきたいと存じます。
 
 JDMCに参加して、少しでもビッグデータ・オープンデータが推進され、行政、民間、市民・消費者の情報・データ活用力が向上し、真のデータの利活用が行われ、豊かな社会になることに役に立つことができればと思っています。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
 
 
P1020861-tateishi立石憲彰(たていし のりあき)

株式会社ワサープ(WASSAAP, Ltd.)代表取締役。1973年に株式会社ビデオリサーチに入社以来、34年間、主に市場調査(マーケティング・リサーチ)に携わる。2008年から6年間、一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会の事務局長として、市場調査業界の事務局運営に携わり、業界の情報発信強化、業界データの統計作成、公的統計の民間活用に関し意見具申などを実施。2013年6月に株式会社ワサープを設立して現在に至る。専門社会調査士、専門統計調査士、QMS審査員補、Pマーク審査員も務める。