日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【vol.74】ウイングアーク1st 村山淳さん、攻めの管理会計とはどういう姿なのだろう?

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。今回、バトンを受け取ったのは、ウイングアーク1st株式会社の村山淳さんです。

皆さま、初めまして。ウイングアーク1stの村山と申します。
当社は、帳票プラットフォームや、データ利活用(BIなど)のソフトウェアやクラウドサービスを、開発・提供しております。私は、データ利活用の事業部の企画を務めているものです。

今回は、管理会計についてお話させて頂きます。私自身も、つい最近まで当社の経営管理部の責を担い、業務の中で管理会計を使いこなす立場でもありました。また、当社参画の前は、コンサルティング職に従事して、クライアントの経営管理のコンサルティングやデータ分析にも携わりましたし、ERPの導入提案も行っていました。

管理会計を実践していない会社は、ほとんどないと思います。事業損益、部門損益、製品別損益など軸を変えながら、連結・単体と範囲を変えながら会計データを分析することは、ほとんどの会社が何らか実践しています。そしてその経験の積み重ねもあると思います。当社もそうです。ただ、ちょっと思うことがあります。「この取り組みは、マネジメントを真っ当に行うことには、確実に寄与している。一方で、“強さ”や“成長”に向けては、どうなのか?」ということです。また、「管理会計。重要ではあるけど、クラシカル、そして地味。周囲の評価を高めることは、なかなか難しい…。」いう思いです。

管理会計システムの構築、(業務・システム両面での)運用、そして利活用、こうしたご経験がある方はご存じの通りですが、管理会計は、細々とした決め事や課題解決の上に成り立っています。そんな苦労を、“真っ当なマネジメント”のためだけに行うのは、ちょっと勿体ないのではないか?と思うのです。

どうせやるなら、「それは確かに本質的だよね。」とか、「さすがに、そこまでやったら強いよね…。」と言えるレベルまで引き上げたいとの思いから、「攻めの管理会計とはどういう姿なのだろう?」と考えます。その中で、コンサルタント時代にお会いした、ある経営者の方との会話を思い出しました。建設業界の方でした。

その方から学んだのは、キーワードにまとめると、カスタマーエコノミクス、そしてマイクロエコノミクスでした。建設現場は、(直接従事されている皆様には、釈迦に説法になってしまいますが)現場別や工程別に、その収益実績がシビアに集計され、明らかになってしまいます。これは、我々ITの業界も同様ですね。一方で、その収益の“改善ドライバー”は、時代の変化と共に進化し、細かくなり、複雑になって現場に溶け込んでいます。建設現場ならばスマート重機や工法があるし、ITであれば汎用の製品やクラウドサービス、プロジェクト方法論などです。そしてその貢献度合いは、現場の事情によっても異なります。建設業であれば、工期がタイトであったり、天候が不順であったり、安全衛生や周辺環境との共存に個別課題であったり。

ITの現場でも、似た文脈の個別事情が様々ありますね。つまり、「現場の細かい局面で」×「そこには何の“アセット”(商品、機械・道具、ノウハウなど)が関与していて」×「どれほど寄与しているのか。」、これらが分かれば、必ず儲かるオペレーションに繋がる判断ができるし、お客様もそれが知りたいはずだ。私がお会いした経営者の方は、そのようなお話をされており、ご縁もあってその取り組みをご支援させて頂きました。建設とITを例にしましたが、DXトレンドを考えると、幅広い業種に当て嵌まる話なのだと思います。

一方で、話を本題(管理会計)に戻すと、この“カスタマーエコノミクス”や“マイクロエコノミクス”を、管理会計として実現することは、それはもう大変な道のりになります。そのうんちくは、もう省きます。とにかく大変なことは確かです…。道のりは長く苦労を伴いますが、“一つ”とても大切だと思えることがあります。それは、「業務イベントのデータ化」です。5W1H…そう言ってしまうと、話が単純化してしまいますね。私なりの言葉で言うと、「いつ」×「何が切っ掛けで」×「どんなシーンで」×「誰が(何が)」×「何を使って」×「何(どんな業務)をしたのか」といった業務イベントを、とにかくデータにしておくということです。それが業務日報だろうということなのですが、改善ドライバーは、1日の中を更に細かく分けた「イベント」の中に潜んでいるので、もっと細かい意味です。

「業務日報を、1日10回に分けて提出してください。正確にお願いします。」こんな依頼を現場社員にできるかというと、ほとんどの会社では難しいでしょう。当社の社内の取組みが一つのヒントになりました。当社は、営業組織の中で、ダッシュボードを駆使しながら、案件活動の可視化とセルフマネジメントを進めています。これはあくまで、営業組織の生産性向上や、営業予算の進捗管理のために始めて、定着した取り組みです。ただ、これが管理会計に大きな寄与をしています。

当社にも、幾つもソフトウェア製品やクラウドサービスがあるため、製品軸での収益管理をやっています。営業組織の取組みを通じて、営業業務の「イベント」が、細かく捉えられるようになりましたが、この「イベントデータ」は、人件費や販促経費のような費用を、細かく製品軸に分解(配賦)するための根拠のデータとしても役に立っています。そのことを、営業組織のメンバーに伝えた際、「それは知らなかった。ちゃんと入れないといけないね。」という会話になりました。入力の精度が高まれば、損益集計の精度も高まることは、言うまでもありません。

最後に申し上げたいのは、成長に向けた業務活動の見える化とセルフマネジメントが、成長志向の管理会計の起点になり、アクセラレーターになるということです。そして、かつての某経営者の方に示唆をもらった、カスタマーエコノミクスやマイクロエコノミクスの把握においても、有効な起点になる取り組みになるのではないか、と思っています。当社自身も私自身も、まだまだ道半ばです。これからの管理会計は、炭素会計(温室効果ガスの排出と削減の管理、財務的な価値への換算)とも融合しながら、更なる進化も求められてくるでしょう。試行実践とその発信を繰り返しながら、社内外の「成長志向の管理会計」に貢献していきたいと思います。

 

村山 淳(むらやま すなお)
ウイングアーク1st株式会社
Data Empowerment事業部 事業企画ディレクター
兼 営業本部 オペレーション統括責任者

同社のデータマネジメント及びデータ利活用の製品・サービスを提供する事業部において、企画・事業開発を担当。2020年度(~2021年2月)までは、同社の経営管理部長として、上場前の経営企画・経営管理の業務全般に従事。同社参画前は、大手ERP営業や経営・ITコンサルティングに従事。

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