【Vol.11】小杉潔氏「製造現場にて考えるデータマネジメント」


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JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、HGSTジャパンの小杉潔さんです。

製造現場にて考えるデータマネジメント

 JDMCには設立時より登録をさせていただいておりましたが、先日ようやく2回目の定例会議参加を果たしたところ、その場で当コラムの執筆依頼をいただきました。これを機会に皆様との繋がりを広めることができればと思います。どうぞよろしくお願いします。
 
 HGST Inc.はHDD/SSD製品の開発・製造・販売のグローバルカンパニーであり、日立製作所とIBMのHDD部門をルーツに持っています。日立グループ傘下であった2007年よりHDD製造現場においてデータマイニングを適用した解析を行っております。
 
 私の業務にちなんで、最初に少しストレージの話をさせていただきます。今から29年前の1984年、IBM PC-ATに初めて標準搭載されたHDDの容量はわずか20MBでした。現在のPCでは4TBの大容量を搭載した製品がありますがそれと比較してみますと、1台当たりの容量は20万倍、価格は30分の1、つまりバイト当たり単価はなんと600万分の1!になっています。これを同様に10年前と比較すると32分の1になります。インパクトはずいぶん小さいですが、この10年間でこれだけ価格が下がったテクノロジーは他に思い浮かびません。
 
 システム価格は考慮していませんが、1GB当たり5円。 同時にコンピュータ本体の性能、そしてデータ解析アルゴリズムやソフトウェアツールも大きく変化を遂げているのが現在のIT環境なのです。データをフルに活用可能な、活用すべき時代がやって来ているのだと改めて思います。
 
 さて本題です。製造現場における3大ビジネス課題は「生産効率」「歩留まり」「品質」です。複雑な製品であればパラメータは数千に及びます。テスターによる計測データが主となるため、データ精度が高くデータマイニングに適していると言われていますが、それらの細かいパラメータすべての意味を解析者が一貫して理解することは難しい場合があります。
 
 Webデータ等の解析を考える時、パラメータの意味は自明な場合が多いのではないでしょうか。パラメータ数が多くまたそれらの意味が難しいという環境は製造現場における特徴と考えます。データ解析の専門家に依頼しても、掘り下げた解析を行うことはきわめて困難です。これまで自らの頭脳でデータマイニングを行って来た解析の“匠”の中には、コンピュータによる解析に期待を持たないケースもあります。永年の経験からそのデータ解析の難しさを一番よく知っているからこそなのでしょう。ですが、経験と勘が勝てないのが計算機×アルゴリズムによる網羅性です。
 
 「すべてのパラメータの組み合わせを短時間で調べあげる」――単純計算の繰り返しはコンピュータの最も得意とする部分です。ここは人力ではかなわないことを素直に認めて、いかに使い倒すかに方向転換すべきです。柔軟性の高い若者はこの特性をすばやく理解し、よい結果を出す傾向があります。
 
 一般的に製造技術は各社のノウハウとして捉えられ、したがって社外に共有されることはまれであったと思います。同様の理由からと思いますが、JDMCにおいても製造現場におけるデータマネジメントの議論やテーマを目にすることは実のところなかなかありません。
 
 しかしながら、このような考えを打破することから始まるのが、まさに「データマネジメント」なのではないでしょうか。新しい試みを始めるには、まずコミュニケーションを通して人と人の理解を深め合うことが必要で、そこから人が動き、業務の流れが変わり、ビジネスマネジメントの目的を果たしていく――改めて人と人の理解がデータマネジメントのコアであるのだと認識しました。
 
 製造業に携わる同胞の皆さんはどのように現場のデータマネジメントに取り組まれておられるでしょうか? どのような問題、悩みに直面し、それを解決され成功に導かれていらっしゃるでしょうか? JDMCにおいても、ぜひ取り上げていただけることを提案いたしまして、バトンを次の方にお渡ししたいと思います。

 

kosugisan小杉 潔(こすぎ きよし)
株式会社HGSTジャパン 品質保証本部 シニアプロジェクトマネージャー。

1985年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。一貫してHDD製品に携わり、生産技術、試験技術、カスタマーテクニカルサポートおよび品質保証業務に従事。途中2度のM&A移籍により2003年日立グローバルストレージテクノロジーズ、2012年5月よりHGSTジャパンに。2007年よりデータマイニングプロジェクトを担当。海外製造拠点へのDWH構築・データマイニングによるデータ解析を導入後、米国、シンガポール、タイ、中国、日本のコアユーザーメンバーおよびITS部門と共にグローバルプロジェクトを推進中。
http://facebook.com/kiyoshi.kosugi
 
 
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次回のコラムのバトンを受け取ったのは、清水孝光さん(清水技術士・診断士事務所代表)です。お楽しみに!