日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【vol.68】パイオニア 中元祥吾さん、データ活用を通じた研鑽とコミュニティ活動で、ソリューションサービス企業への変革に挑戦!

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。今回、バトンを受け取ったのは、パイオニア株式会社の中元祥吾さんです。


老舗メーカーからソリューションサービス企業へ、全社的変革を推進中

皆様、はじめまして。2022年2月からJDMCに参画しました、パイオニア株式会社の中元です。

「パイオニア」と聞くと、オーディオやスピーカーを思い浮かべる方も多いかと思いますが、カーエレクトロニクス事業を主軸としたビジネスへと方針転換した後、2019年秋からは「メーカーからソリューションサービス企業へ変革する」ことを謳い、新たな変革に向けて取り組んでいます。

さらに2021年8月には、DevOpsの実現や開発の標準化および、データのビジネス活用の強化を目的に、全社横断でSaaSビジネスを推進するSaaS Technology Centerを創設。モビリティ領域におけるさまざまな課題を、「モノ×コト」で解決するソリューションサービス企業への変革を加速しつつあります。

今回は、そうした事業変革を全社挙げて推進中の老舗メーカーにおける、データ活用の考え方や具体的な取り組みについてご紹介したいと思います。


データをビジネスに活かすには、意思決定を促進する仕組み作りが大切

JDMCにおけるデータマネジメントの1番目のポイントは、「データをビジネスに活かす状態にすること」と位置付けられています。私も、データを収集・分析することがビジネス貢献につながっているかは、常に意識すべきだと心に留めています。

企業のデータ活用は、業種・業態や獲得目標によってさまざまな形態が考えられます。その中でも私は、「ビジネス部門が主体的にデータを扱い、みずから意思決定を行える状態」であることが最も望ましいと考えています。

その理由は、ビジネスとITを分離すると、どうしてもスピードの低下が避けられないからです。データを使った結果として、どのようなリターンが得られるかは、実際に使ってみないとわからないのが実情です。そのため、「まずやってみるというスタンス」に重きが置かれますが、その場合、何か変更が発生するたびにIT部門に依頼して開発が必要になるケースがしばしばです、こうしたイレギュラーな対応が頻発すると、スムーズにPDCAを回すのも困難になり、ビジネスの要請に応えることができません。

また、整備が必要なデータの扱いや、目的に応じたデータ品質をどう担保するかといった問題もあります。事業の理解が 浅いままIT 部門が請け負ってしまうと、結果的に「整備のための整備」や「品質のための品質」のような無駄が生まれがちです。私もかつて整備したものの使われなかったデータの使い道を、あとから頑張って考えるという苦い経験をしたことがあります。

そうした事態を招かないためには、たとえば最初は完全にシステム化されていなくても、手持ちのファイルをマニュアルでアップロードし、BIツールで可視化するといった、最低限の環境を用意し、ビジネス上の 「リターンを探ることが重要」だと思います。


IT 部門に必要なのは、ビジネスの動きをとらえる「先読み力」と「柔軟な対応力」

一方では、IT 部門があらかじめ、ある程度の処理を施してあげることが必要なデータもあります。

たとえば、モビリティから収集されるセンシングデータは、容易にテラバイト級の容量になります。このため、ユーザーは地理空間情報として単純な集計情報を得たいだけでも、大容量データを扱うための分散処理の知識が要求されます。またIoT機器からは、バイナリ形式のままアップロードされるデータもあり、パース(解析)が必要なケースもあります。

こうしたデータを、活用の見通しがつかない時点で、あらかじめどこまで加工しておくべきか悩むところですが、やはりビジネスで必要になったタイミングで加工するのがよいでしょう。とはいえ、いざ必要となった時にゼロから始めるのでは、ビジネスのスピードに追いつけません。必要な時すぐ対応できるには、「日頃からビジネスを先読みする力」と「ビジネスの動きに合わせて、必要なデータを必要なだけ整備して備える柔軟性」の2つが必要です。その上でIT 部門とデータ部門の内製化に向けた、体制作りと人材確保が重要になってくると考えています。


目先の「データ活用」にとどまらない、より本質的なデータリテラシーの向上を

ここまで、ビジネスへの貢献と柔軟な対応の必要性について書いてきましたが、一方で何の取り決めもなく、その場その場のデータ整備が続くと、当然ながらやがて破綻してしまいます。こうした事態を招かないためにも、規模に応じたさまざまなルールの策定と、それにのっとった運用は不可欠です。たとえば「名寄せ」などのよくある問題は、単にITツールを導入すれば解決するというものではありません。もっと本質的な部分から、全社横断的かつ長期的な視点でのデータリテラシーの向上が必須です。

データマネジメントを実施していくにあたり、すでに普及しているDMBOKのような体系化された知識が指針を与えてくれるのはとてもありがたいことです。またJDMCのようなコミュニティが、現場に適用できるさまざまな成果物を公開してくださることは大変励みになります。このようなコミュニティ活動は、データ活用を考えその内容を充実させてゆく上で、とても意義深いことだと感じています。


データコミュニティを通じたスキルアップとデータマネジメントへの貢献を

これまで自社の事業変革にむけたデータ活用に取り組んできましたが、その経験をもとに現在は、さらなるスキルアップを目指して、データマネジメントの知見の習得に日々励んでおります。今後はコミュニティへの参画を通じたJDMCへの貢献、ひいてはデータマネジメントの発展に、ささやかながら貢献できることを願っています。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

中元 祥吾(なかもと しょうご)
パイオニア株式会社
SaaS Technology Center   データインテリジェンス部
リードデータエンジニア

パイオニア入社後R&D、サービス開発を経て現職。データ組織の立ち上げメンバーとして全社横断でBI導入やデータ教育の推進など、データ活用の環境づくりに日々邁進している。

 

<関連サイト>
パイオニア 公式note
https://note.com/pioneer_tech

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