【Vol.79】滋賀大学 深谷良治さん、データサイエンスで切り拓く日本の未来~滋賀大学の挑戦

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。今回、バトンを受け取ったのは、滋賀大学の深谷良治さんです。

 

日本初のデータサイエンス学部設立などで社会ニーズに応える滋賀大学

日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)の皆様、初めまして。滋賀大学の深谷と申します。滋賀大学は2017年、高まるデータサイエンスへの社会ニーズに応えて、日本初のデータサイエンス専門教育を行う新学部を設立しました。その背景には、データ革命を担うデータサイエンティストの絶対的な不足という現実がありました。その後、6つの大学がデータサイエンス系学部を創設し、2023年度にはさらに4校が続く見通しです。

滋賀大学データサイエンス学部では、「教育」「研究」「コンサル」を融合した、質の高い実践的なデータサイエンス教育の実現を目指しています。特に企業との連携によるビジネス課題の解決や、自治体との連携による社会課題の解決など、実社会への貢献を視野においた社会実装に積極的に取り組んできています。また学生のみならず、データサイエンス人材の確保や、高度化を求める数多くの企業や自治体向けの人材育成も支援してきております。

 

協力企業との連携による実践的な教育が、データサイエンス学部の特色

滋賀大学では学部1年生から、各人の興味に従って、さまざまなテーマの自主ゼミで幅広い実践的な知識を習得できます。例えば、画像、音声、POS、SNSなどのデータ処理、分析手法や統計数理の基礎、AI実装に必要なプログラミングなどを学べます。また連携先企業各社の協力をいただいて、実データを用いたPBL(Project Base Learning)演習による、生きたデータを分析する経験を積むこともできます。

こうした現場における問題を解決するために、課題に応じた適切な手法を選択して分析する実践的教育は、企業からも高い評価を獲得。包括連携協定を締結している86の組織を含む200以上の企業や大学、国の機関、地方自治体等との、さまざまな連携協力を推進しています。

 

産学共創のハブとなる「データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター」

滋賀大学では、2016年度に「データサイエンス教育研究センター」を設置。以来つちかってきた産業界との連携や教育研究のノウハウを生かし、データサイエンスとAI研究の社会実装をよりいっそう積極的に展開することを目的に、2022年4月には、同センターを発展的に改組して「データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター」を設立しました。
本センターでは、教育研究と社会の共創によるシナジー効果によって、イノベーションを起こすことを目指しています。

人材教育、リカレント教育については、受講者の目的、レベルに応じてカリキュラムを作成し、オーダーメイドの研修、学術指導を提供しています。また「高校生のためのデータサイエンス入門」「大学生のためのデータサイエンス」といった教材を、他大学と連携して幅広く提供。また、企業人材の高度化に向けた社員教育への活用も進んでいます。

さらに、大学のシーズと企業のニーズをマッチングさせた共同研究も数多く進めています。企業や自治体での課題解決に向けて解析結果を提示するだけでなく、分析の過程や手法までも開示して、パートナーとなった組織が研究成果を、自分たちで活用できるレベルまで詰めていけるように心がけています。

 

データマネジメントの知見をさらに広げるべくJDMCへの参画を決意

データサイエンスの実践的な研究において、全国の大学の中で最も経験豊富な滋賀大学データサイエンス学部では、多様なデータを分析・解析する知識と実践スキルを着実に蓄積してきたと自負しています。しかし一方で、データを収集・加工・処理するための知識とスキルは、ビジネスの現場で培われている知見とはいまだ距離があると感じています。その解決のためにも、さまざまな領域の課題に対し、データ分析から得られた洞察によって価値を発見。課題解決の意思決定に活かしていく上で、その工程の最も入り口部分でどのように扱うべきかといった取り組みを強化できれば、従来以上に付加価値のある価値創造が可能になると思っています。

そこで考えたのが、課題発見力、モデル構築力、仮説立案力、結果説明力の強化を目指すこれまでの滋賀大学の実践的教育に、新たにデータマネジメントの概念もしっかり組み込みたいと考えました。加えて、精度、鮮度、粒度といったデータ品質を目的に合わせて評価していく営みも、入り口においては重要といえます。解析結果を継続的にビジネスに活かしていくためには、データマネジメントの観点に基づいたデータの信頼性の維持と向上が、社会実装におけるキーポイントとなるからです。こうした経緯から、さまざまな経験や知識をお持ちの皆さんとの交流が期待できるJDMCへの参画を決意したのです。

 

データを活用した価値創造へのバリューチェーンのさらなる研究を目指して

滋賀大学では現在、データを活用した価値創造に向けてのバリューチェーン(下図参照)の中で、特に「データ収集・前処理」の部分に留意して、産官学連携プロジェクトを実施していきたいと考えています。

図:データを活用した価値創造に向けてのバリューチェーン

具体的には、データを利活用した共同研究を検討している企業との打合せに際して、前提としてどのようなデータを提供いただけるかについての実態(データ品質に対する意識、臨機応変なデータ可用性の可否等々)を把握したいと考えています。共同研究が一過性の単発なプロジェクトに終わらず、社会実装において導入現場に定着させうるプログラムに結実するよう、また、実践を通じてデータスチュワード、データエンジニア、データサイエンティストの人材育成につながるように、力を入れていきたいと考えています。

「データを真のオイルに変えるためには、それを練成するための戦略や実行体制、ルール・プロセスが不可欠」というデータマネジメントの考え方を、産官学連携を推進する学術関係者の間でも共有していきたいと思っています。そのためにJDMCの皆さんとも、積極的に意見交換や議論を交わしていけることを期待しています。

 

深谷 良治(ふかや りょうじ)
滋賀大学
データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター
副センター長
教授

1984年、東京大学経済学部を卒業して日本電信電話公社に入社。社費留学にて1989年、米スタンフォード大学工学部大学院 (Engineering-Economic Systems) 修士取得。1990年、NTTインターナショナル米国支店、2000年、NTTオーストラリア、2011年、NTTデータアジア太平洋統括会社と3度の海外駐在にて、グローバルなITプロジェクトに数多く従事。国内プロジェクトでは、主に先端技術を活用した新サービスや新規事業の開発に携わる。産官向けデジタル変革/サービスに関する実務経験を学術機関で生かすべく、2022年4月より現職。

 

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