日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.32】財前 潮氏「データをお金に置き換えると見えてくるもの」

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、スマートインサイトの財前潮さんです。
 

データをお金に置き換えると見えてくるもの

 
2015年11月に入会したばかりですが、今年初めのJDMCリレーコラムを書かせていただく機会をいただき、光栄です。私はデータ統合・可視化をテーマにしたスマートインサイトでマーケティングを担当しております。この会社に入り、早5年が過ぎましたが、最近データというものとお金に類似点を感じており、本コラムでご紹介させていただきます。
 
働く人であれば、だれもが必ず“お金”に携わっています。お金に関して、企業は稼ぐ、管理する、(有効に)使う、さらには運用するといったことに取り組んでいます。その携わり方には、全社規模のものもありますし、各部門単位のもの、あるいは個人の経費精算のレベルもあります。
 
同じように、データも会社に在籍するかぎり、すべての人が関係を持っています。活動が会社に関するものであれば、すべからく情報あるいはデータとしても扱われます。また、データへの携わり方もやはり、全社から個人までさまざまなレベルが存在し、管理する、使う、運用するという考え方も存在します。こうしたことについて、もう少し掘り下げてみたいと思います。
 
最近、データを管理する体制や組織、あるいは人(スキル)についてよく議論されていますが、これもお金と同じように考えてみるとどうでしょうか。会社でお金と言うと、まず思いつくのが経理部です。経理部はご存じのように、どのようにお金が入り、どのようにお金が使われているか管理するため専門的な組織ですから、会社にとって絶対必要な機能です。不適切なお金の入り方や使われ方に目をとがらせるのもこの部署で、会社のガバナンスにも重要な役割を担っています。
 
同じように、データについても、正しく管理し、適切な出入り、また管理を行う専門的な組織が必要になります。現在、IT部門やセキュリティ保護が必要なデータを扱う部門で、ますますデータ管理の重要性が増しています。
 
ところで、経理部門がお金を有効に「使う」ことに非常に長けているかと言うと、どうでしょうか。私の経験ではそのようなスペシャリストにお目にかかったことはなく、逆に、私のようなマーケティング担当者にしてみれば、「なぜこんなにお金が必要か」「この投信にどのような効果があるのか」など、煩わしい質問ばかりです(経理部門の方、すみません!)。
 
お金の使い方に関しては、経理部門ではなくビジネス部門が色々なアイデアを持っていることでしょう。また、開発部門なども自社のビジネスを伸ばたり、効率化したりするためのアイデアを持っており、ビジネスを推進するうえでの大きな要素となっています。こういった形でお金が有効に使えれば、もっとビジネスがよくなるのに……と思っている人は部門に関係なく多いのではないでしょうか。
 
同様に、このこともデータに置き換えてみると、経理部門にあたるデータを管理する部門が、データの使い方を熟知しているわけではなく、その使い方に関してはお金同様にビジネス部門はじめ他のすべての部門が考えを持つべきなのでしょう。もちろん、お金と同じで勝手に使えるわけではなく、一定のルールあるいは見識を持って使うべきで、IT部門はじめデータ担当部門はそのマネジメントを担うというのが前提になってきます。
 
このように今は、組織としてデータを管理するIT部門と、それを有効に使うビジネス部門が協調するストーリーが議論され、多くの企業で実践されていこうという流れにあるかと思います。また、数年前からビッグデータの議論も多くなされてきましたが、こちらもお金の概念で置き換えてみましょう。
 
もともとお金はモノとモノの価値を仲介するために作られたものです。モノの価値をお金という単位で表しているわけで、それによりモノとモノの交換が簡単になりました。データの場合も、商品や仕事、あるいは営みといったものを各種の単位で表すことができます。
 
ご存じのとおり、お金は物々交換を仲介するという役割にとどまらず、金融という分野へと発展しました。お金そのものの取り扱いでビジネスを作り上げるという話です。今のビッグデータの状況を見てみると、ちょうどお金が金融に変わろうとしている状況のように見えます。単なるモノや仕事を表す情報から、それを使ってどのようにビジネスを行うかを考えるという段階です。逆に言うと、今までのデータはまだモノを表す指標でしかなかったわけで、それを越えてビジネスを作り上げるための資源という考え方が今、必要とされているのかと思います。
 
このように考えるとビッグデータ時代を迎えた今、お金同様にデータをしっかり管理する部門(IT部門)、使い方を考える部門(ビジネス部門はじめ全部門)が有機的に活動し、会社から個人レベルにわたって有効に使うことが、企業に強く求められているのだと思います。
 
お金との類似性で最後にもう1点、データの管理や運用が財務にあたるということです。お金の運用を考えたとき、他社の株を持つ、銀行に預ける、他の事業に投資するなど、いろいろな形でその企業に合った運用がなされているはずです。さらにこれは財務の範囲ではないかもしれませんが、日々の活動に必要なお金はどこに置き、経費精算はどのように行われるのかと行ったことも、データの運用で考えなければならないでしょう。
 
日々の活動に必要なデータは手元に置き、全社レベルのお金はセキュリティレベルの高い銀行に預ける。一方で、将来にわたって必要な事業に投資する、あるいは社会活動のために必要な情報を公開する、などが今後検討すべき点になるでしょう。それらを管理するのが、ほかならぬCDO(チーフ・データ・オフィサー)という仕事で(すなわち、お金におけるCFOの役割)、今後、どの企業にも必要な仕事となってくるのではないでしょうか。
 
会社でこれからデータマネジメントを説明する必要がある際、このようにお金に置き換えてみるとわかりやすいかもしれません。JDMC会員として、このコラムをスタートラインに活動させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 
財前 潮(ざいぜん・うしお)
スマートインサイト株式会社・マーケティング ディレクター
IT分野で外資系を含め、幾つかの会社で技術職やマーケティング職を務めてまいりました。仕事以外ではアマチュア・オーケストラでバイオリンを弾いています。モーツァルトやベートーベンと言った古典が多かったのですが昨年はマーラーを弾く機会に恵まれました。そちらにご興味がある方がいらっしゃいましたらお声掛けください。
 
 
 

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