日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.23】寺澤慎祐氏「ビジネスの“真のデジタル化”を願って」

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、データキュレーションの寺澤慎祐さんです。

ビジネスの“真のデジタル化”を願って

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2015年1月にデータキュレーション株式会社を設立した寺澤慎祐と申します。事務局よりコラム執筆のお話を受けて、会社を立ち上げた背景とデータキュレーションのサービスについてご紹介させていただきます。
 
今から15年前、私はeコマースサイトを構築するためのアプリケーションフレームワークを提供するベンチャー企業に勤めていました。当時はeビジネス全盛で、現実のビジネスをインターネット上に置き換えることが行われていました。商店街はインターネットモールとなり、街の店舗、そして社会の繋がりもネット上に実現されていきました。この15年で「e化」が進み、世の中は大きく変化しましたが、『現実社会がネット上で表現されただけ』とも言えます。e化も、極端に言ってしまえば、紙で計算していたものが表計算ソフトに置き換わり、紙に書いていたものがワープロソフトに置き換わったのと大差ありません。
 
今、ITを本格的に活用して、ビジネスの根幹をデジタル化することで新たなビジネス価値を生み出そうという機運が高まっています。いわば「デジタルファースト」であることがこれからのビジネスで重要になるわけです。
 
デジタルビジネスは、『現実社会とネットの根本的な融合』だととらえられます。そうなると、企業のビジネスをデジタル化するためには、IT部門が構築・運用するシステムを根本的に考え直す必要が出てきます。これまでは、現実業務をITシステムに置き換える「System as Replace(SaR)」と呼べるシステム投資がメインでしたが、これからは、ITを活用して新しい業務を作ることに重点が置かれるようになります。つまり、「System as Creation(SaC)(創造としてのシステム)」が必要になると考えます。
 
そして、SaR型のシステム構築を長らくリードしてきたのは情報システム部門でしたが、SaCをリードするのは現場部門です。なぜなら、SaCは既存業務をIT化するわけではなく、技術やデータを使って新しくビジネスを創るにはどうすればよいのかを十分に検討しなければならないからです。
 
さて、企業が扱うべきデータ自体も大きな変革期を迎えています。データ量の増大はもちろんのこと、DBに格納される構造化データだけではなく、多様化し、生成頻度の高い非構造化データも扱うようになってきています。こうして、活用できるデータの量と質が増えることで、企業はより大きなビジネスチャンスを掴むことができると考え始めています。
 
ご存知のとおり、ビッグデータはVolume(量)、Variety(多様性)、Velocity(発生頻度)という「3つのV」の特徴があります。私は、Vの優先順位として①Variety、②Velocity、③Volumeの順になると考えます。大量データを迅速に処理するのは技術革新によっていずれ解決されるものなので慎重に検討しなくてもよいと思っていますが、VarietyとVelocityについては技術革新だけでは解決できない課題もあります。
 
また、ビッグデータでなくとも、社内外にある多種多様なデータを統合することで大きな価値が生まれます。社内の顧客データと販売データに社外の気候データが統合されたり、発注データと店舗付近のホテル稼働率データが統合されたりといった、異業種異業態のデータが統合されることで、より価値ある経営判断ができるようになるかもしれません。いずれにしても、いかに多くの種類のデータを迅速にとらえて経営に役立てていくかという観点が重要になってきます。
 
データキュレーションのビジョンは「THE DATA IS THE VALUE」で、多様なデータをネットワークして新たな価値を創造することを目指して設立しました。背景には、私がデータ統合ツールベンダーのTalendでマーケティングディレクターを務めていたときの経験があります。当時、お客様と会話すると、「データ活用をしたい」、「社内にデータは蓄積している」と話すものの、多くの方が「データをどう活用してよいのかわからない」状況でした。
 
Talendは、多数の機能がオープンソースで無償提供されており、企業が抱える「蓄積されたデータを活用して経営課題を解決する」のに有効なデータ統合ツールです。Talend自体、誰もが使える簡単な操作体系になっていますが、その活用で重要なのは、責任者や現場の方々の課題やテーマを抽出して、その課題やテーマを多様なデータで解決する方向に導くことです。
 
この役割を担うのがデータキュレーターで、社名の由来にもなっています。当社のデータキュレーターが、お客様が必要とするデータを、必要な量だけ、最適なタイミングで、必要な処理をして、必要な人やシステムにデータを提供することをお手伝いしています。
 
また、当社では、社内外のデータを活用してデジタルビジネスを推進する責任者をチーフデータオフィサー(CDO)と位置づけています。日本企業ではまだ一般的でないCDOの重要性を訴え、CDOを企業内に置く取り組みを支えていきたいと考えています。
 
現時点ではまだサービスインしていませんが、「Data as a Service」ビジネスの展開を予定しています。政府や公共機関が無償で提供しているオープンデータ、民間企業が有償で提供しているコマーシャルデータなどは、そのままでも価値があるかもしれませんが、そうしたデータに当社が市場ニーズに合わせてキュレーションを行い、サービスとして提供していきたいと思っています。このData as a Serviceで、企業の意思決定をより幅広く、より精緻化することを支援したいと考えています。
 
 


寺澤慎祐(てらさわ・しんすけ)

データキュレーション(株)代表、光産業創成大学院大学 客員教授、ウェールズ大学 MBA。2000年からeコマースパッケージベンダーやJava関連のベンチャー企業でマーケティング責任者を務め、2004年からサン・マイクロシステムズでマーケティング、ビジネス開発を行う。2011年にB2Bマーケティングコンサルタントとして独立し、クラウド型人間ドックシステムの開発や外資系ITベンダーのマーケティングの支援を行なう。2013年からTalendのマーケティングディレクターに就き、2015年にデータキュレーション(株)を設立し現在に至る。
 
 
 

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