日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.108】パーソルキャリア・渡邉裕樹さん、社員のキャリアオーナーシップ実現に向けた「人事データマネジメント」の取り組み

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、パーソルキャリア株式会社 渡邉 裕樹さんです。


2023年3月よりJDMCの会員として活動しております、パーソルキャリア株式会社の渡邉と申します。

2023年度の研究会では「データマネジメントの価値」研究会に参加しておりまして、会員の皆さまと、データマネジメントの価値創出に向けたさまざまな議論ができることが非常に楽しみです。

まずは簡単に自己紹介を。私はSIerでSCMやDWHの構築を経験した後、小売業の社内SEとして、データ基盤の刷新やデータ活用推進を行ってきました。2022年6月より、現職のデータテクノロジー統括部データソリューション部に所属しております。

パーソルキャリアは、-人々に「はたらく」を自分のものにする力を-をミッションとし、転職サービス「doda」やハイクラス転職サービス「doda X」を通じて人材紹介、求人広告、新卒採用支援などを提供しています。2022年5月にはプロフェッショナル人材の総合活用支援ブランド「HiPro」を立ち上げ、副業・フリーランス領域にも本格参入。すべての「はたらく」が笑顔につながる社会の実現を目指しています。

弊社では、上記ビジネス活動や業務改善などの意思決定や仮説検証を情報に基づいて判断する、いわゆる「データドリブン」経営を目指し、日々さまざまなデータ活用を行っておりますが、おそらく多くの企業が悩んでいるであろう、以下のような課題を弊社も抱えています。

・データの所在がわからない(検索性)
・欲しいデータがすぐ手に入らない(鮮度、整合性)
・データ責任主管が不明

当部署の重点ミッションは、データ利活用促進やデータマネジメントの推進になります。ビジネス活動のために正しいデータを使いたいタイミングで利用できるようにする──そのためのデータ管理、つまり「データマネジメント」を目指しているというわけです。

「データマネジメント」はどこから手をつけるべきか

データマネジメントの領域は幅広く、さまざまなアプローチ方法があります。

当部署として、全社のデータ、全組織でデータマネジメント施策を進めるのは適用範囲が広すぎるため、まずはサブジェクトエリアでのデータマネジメントを推進する、いわゆるスモールスタートで始める方針となりました。

私が所属するグループが、データマネジメントを推進しているサブジェクトエリアは「人事」になります。弊社では「はたらく」を自分のものにするために、キャリアオーナーシップの実現を目指して日々ビジネス活動をしており、キャリアオーナーシップ実現の適用範囲は弊社の社員も含まれます。

そのため、人事部としては、データを活用して社員へのキャリアオーナーシップ実現のための支援活動が必須と考えており、2022年に人事部内のデータ活用推進のための「人事データ基盤構築PJ」が立ち上がりました。

人事データ基盤構築においては、人事データというセンシティブなデータを取り扱うことから、その特性にあわせた収集レイヤーから提供レイヤーまでのソリューション選定を当部署で行い、半年間で内製にて構築を行いました。

今までデータ利用の際には、多数の人事システムやファイル群から収集する必要があったデータが一元管理され、人事データ基盤を中心としたデータ活用推進とデータマネジメントが可能となりました。

データ基盤を構築し、活用を推進するだけではデータマネジメントは不十分

ビジネス活動のために正しいデータを使いたいタイミングで利用したい場合、単にデータを蓄積して、活用するだけでは不十分なのは容易に想像がつきます。

「人事データ基盤」構築の際に、データマネジメントを見据えて構築対応はしておりましたが、私の方で改めて「DMBOK2」のフレームに当てはめてアセスメントを行い、知識領域単位での状態の確認と目指すべき方向性を定めて、2023年度に実施するべき優先度が高いデータマネジメント施策をピックアップしました。

また、このタイミングで人事部の方とデータマネジメントの必要性や目的、データマネジメント要件を鑑みた「人事データ基盤」のあるべき姿、データマネジメントの中長期の計画の議論も始めました。

データマネジメントは意思を持って、ITサイドとビジネスサイドで行う活動である

仮にデータマネジメントを実施しなかった場合でも、データ活用自体は推進できますが、上記に記載したデータ活用における課題は解消しないどころか、ダーティーデータの増加などによる「無法地帯」と化し、信頼できないデータによる誤った経営判断がなされるリスクが向上します。

また、昨今の各国の個人情報の法令などを鑑みても、人事領域に対するデータマネジメントの必要性は高まっており、さらにデータ活用が進んだ時代では、取り残されてしまう可能性が高いと考えております。

上記のようなデータマネジメントの必要性を人事部の方と議論することによって、「言われたからやる」というのではなく、データマネジメント活動がデータ価値を生み、ビジネスに貢献できると意思を持って、ITとビジネス全員で行える状態になったと考えております。

特に「人事データ基盤」PJに参画していた人事部の方は、もともとデータ活用に対する課題意識が高く、正しいデータ推進を行いたいメンバーが集まっていたことも、推進可能となった大きな要因だったと考えています。

ITサイドだけでデータマネジメントの方針を作り、その管理下でビジネスサイドの方がデータ活用することも可能でしょう。しかし、データマネジメント活動は日々改善し続ける必要があり、この状態では形骸化してしまい、古いルールをただ守るだけとなり、ビジネス施策につながるデータ価値の向上へは繋がらないと考えています。

必ずITサイド、ビジネスサイド双方の強い意思を持って、データマネジメントに取り組むべきと考えています。

人事データマネジメントの今後と展望について

このプロジェクトは現在、人事データ基盤を活用したデータマネジメントの基本方針書やデータマネジメント施策ごとの方針書を策定し、データマネジメント組織として、IT部門サイド、人事部門サイドの体制、役割分担を決めております。

まずは、本年度下期からスモールスタートで「人事データ基盤」を中心とした人事データマネジメントを開始し、活動の中で得られたナレッジや課題を蓄積していくとともに、データ活用の施策支援や人材育成、ひいてはデータマネジメント人材の育成にも着手したいと考えています。

今後は人事データマネジメントの来季の計画策定や、弊社の他サブジェクトエリアでもデータマネジメント活動を推進しているグループや部署があるため、本データマネジメント活動のナレッジの共有をしていきます。

弊社全体としてデータマネジメントの推進を進め、キャリアオーナーシップに向けたビジネス施策実現のためにデータ価値向上を目指していきたいと考えております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。当コラムでは詳細までは紹介できませんでしたが、読んで気になった箇所や質問がございましたら、お気軽に連絡いただければと思います。引き続き、JDMCでの活動を通して、さまざまな意見交換を行い、知識向上を図っていきたいと考えております。今後ともどうぞよろしくお願いします。


渡邉 裕樹(わたなべ ゆうき)
パーソルキャリア株式会社
テクノロジー本部 デジタルテクノロジー統括部
デジタルソリューション部 人事エンジニアグループ
リードエンジニア(データ)


大学卒業後、SIerとしてキャリアをスタートし、SCMやDWHのシステム刷新、企業合併に伴うシステム統合に従事し、要件PHから運用保守まで幅広い実務を経験。その後、小売業の社内SEに転職し、大規模なデータ基盤の刷新を構想企画から全社の展開まで実施。2022年6月より現職にて、人事領域のデータ基盤構築およびデータマネジメントを推進。

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