【Vol.6】 黒澤基博氏「学ぶところの多い“買い物の情報戦”」


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メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、データ総研の黒澤基博さんです。
 

学ぶところの多い“買い物の情報戦”

 
 皆さんこんにちは、あるいは、はじめまして。データ総研の黒澤基博です。私はデータモデリング、データ標準化、全社データ整備、マスタデータマネジメントなどを20年以上支援しているデータマネジメントのプロです。ここ数年は、データアーキテクチャ策定やDMBOK活用のガイドを中心に活動しております。
 
 普段は、当社のブログで企業の情報活用やデータマネジメントに関する情報を発信しているのですが、今回は一般消費者の情報活用について2つのエピソードを取り上げてみたいと思います
 
 私の家族の話で恐縮ですが、まずはこんなエピソードを。先日、家内と娘が念願の一眼レフカメラを買ってきました。玄関のドアを開けるなり「すっごく安く買えたのよ~」と大変な喜びようです。
 
 通常であれば、この種の買い物はもっぱら私の仕事です。彼女達に言わせると、「お父さんは何でも値切るのが得意」らしいのです。私は特段、ハードネゴをしているわけではなく、ちょっとゴネているだけなのですが。実施していることはいたって単純で、価格比較サイトを使って希望機種の最安値を調べたうえで、店舗で「この価格で買いたい」とお願いをするだけです。
 
 そのときに活用するのが、価格比較サイトの口コミです。たとえば、「○月○○日、秋葉原の△△カメラで、□□□という機種を7万円で買えました。しかも2MBのメモリカードもつけてもらいました。タイムセールだったらしくラッキーでした」といった口コミの中から、自分が買いたいと思える価格のものをピックアップして印刷し、同じお店に行って「このお客さんが買ったのと同じ価格で買いたい」と交渉するわけです。
 
 一方、家内と娘はこのような下調べもせず、お店に行ったそうです。家内が店員さんに価格を聞いている横で、娘はスマホを使って最安値を調べ始めました。それを見ていた店員さんは、「ちょっと待っていてください。価格を調べてきます」と言って一度事務室に戻って行きました。その後、帰ってくるなり「6万8000円でいかがでしょう」と価格比較サイトでの最安値に近い価格を提示しました。つまり、値切る行為は一切せずに、スマホで価格を調べただけで、ほぼ最安値の価格提示を引き出したということになります。ただ、この日は雨で客足が少なかったことや、新機種が出る直前の時期でお店としても旧機種の在庫を早く捌きたかったといった他の条件も重なったようですが。
 
 もう1つのエピソードです。先日、あるレストランで食事を済ませ、レジに並んでいました。私の前には4人のおばさまグループが会計中。店員が伝票を打ち終わり「合計で5000円になります」と言った直後、1人がスマホを見せて「これ、クーポンよ」。店員は「それでは20%引かせていただきます」と言って、合計額が4000円になったのです。そんなやりとりを見て私は、「今、何が起きた? クーポンって何? 20%も安くなるの?」。
 
 帰宅してその話を娘にすると、「お父さん、×××というお店のクーポンのこと知らなかったの? 私たちの間では常識よ」と驚かれてしまいました。彼女達にとって、スマホでクーポンをあらかじめダウンロードして、店頭で値引きしてもらうことは当たり前のことのようです。
 
 2つのエピソードが示すとおり、若い世代の消費者は、かしこい購買をするために、さまざまな情報を見つけ出して活用しています。企業の経営者が「データマネジメントによって情報活用の質が上がると説明されたが、ROIが見えてこない……」と言っているのとは対照的で、リターン直結の情報活用なのです。
 
 とりわけ、スマホや携帯電話など、モバイル端末を使った情報活用という点では、企業より一般消費者のほうが先に進んでいます。ちょっとしたおトク感を経験した消費者は同様の経験を求めるようになり、事業者が目指していた「リピート率の向上」につながっていきます。つまり、消費者と企業の双方にとって、Win-Winの関係が構築されるわけです。こうした若い世代の消費者が展開する“買い物の情報戦”には、私たちも学ぶところは多いのではないでしょうか。
 
 
 
kurosawa黒澤基博(くろさわ・もとひろ)

エンタープライズデータアーキテクト。
株式会社データ総研 代表取締役会長。
データマネジメントのコンサルタントとして、電力・通信・製造・化学・建設・運輸・金融など数多くの業界でデータ標準化やデータモデリングに携わる。近年は、DAMA-DMBOKの普及やデータアーキテクチャの最適化に従事。著書に『データ中心のエンタープライズアーキテクチャ ─データセントリックアーキテクチャ─』(2004年 オーム社)など。データ総研のWebサイトでデータマネジメント関連のブログ(http://www.drinet.co.jp/blog/datamanagement-b)を執筆・掲載。
 
 
 
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次回のコラムのバトンを受け取ったのは、谷内田 仁さん(エヌ・ケイ)です。お楽しみに!