メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、楽天 グループコアサービス部の渡辺浩太郎さんです。
「BIを社内の誰に対して提供しますか?」
皆さん、はじめまして! 楽天の渡辺と申します。JDMCでは運営委員を拝命しております。楽天では、2009年から「楽天スーパーDB」というグループ全体のマーケティング基盤となるDWHの開発・運用を担当しています。
楽天スーパーDBはグループ横断的に収集した大量のデータを個人が特定されないような処理を施したうえで、BIを通じて、経営判断やマーケティング活動など、さまざまな場面で利用されています。私はDWHの開発・運用にかかわる多くのタスクの中でも、最近では主に、BIの利用促進に携わっています。今回は、私が主に携わっているBIの利用促進について感じていることを書かせていただきます。
もし、皆さんが企業のBI促進担当者だとしたら、まず、誰に対してBIを提供することをお考えになるでしょうか?
もちろん、各企業の状況はさまざまですので、1つだけの正解というものはないとは思いますが、多くの方は、まず経営層やグループ横断のマーケティング部署など、会社の方向性を導く人たちに提供していくことをお考えになると推察します。
もちろん、それもBIにとって重要な役割です。しかしながら、より企業内でBIの利活用を進めるためには、まさに企業の最前線で利益を生み出している事業の現場の方々にこそ、BIを使っていただき、企業が有している大量のデータをダイレクトに利益へと結びつけることも重要なBIの役割の1つではないでしょうか。
ただし、事業の現場の方にBIを利用していただくためには、いくつか気をつけないといけないポイントがあるように思います。1つは、適切な権限管理や利用監査体制を用意することです。BIで提供するデータは会社の秘密情報を多く含んでおり、これが漏洩することは、企業にとって大きなダメージになり得るからです。
2つ目は、「こんなデータを提供すれば現場の役に立つだろう」という提供者側からの視点でBIを構築するのではなく、今、まさに現場が必要としているデータを、BIを通じて提供することが大切ではないかと考えています。
BIをまず経営層向けに構築して、それを多少カスタマイズして現場向けに提供をする。それで、「重要な経営指標が確認できるので、現場でも頻繁に利用されるだろう」と考えても、実際にはなかなか利用が進まないということも多いように感じられます。経営層と現場では、同じ数字に対する必要度やチェックしなければならない頻度も多分に異なるので、このような状況になるように思います。
現場の方に活用されるBIにするためには、まず「ゼロから作る」というぐらいの姿勢が重要ではないでしょうか。具体的には、現場担当者と腰を据えて話し合い、要件をまとめ、プロトタイプを作り、レビューを繰り返しながら形にしていくというプロセスが最も重要だと考えており、楽天においても、このような、現場に必要とされるBIの開発を進めていくことを心がけたいと思っています。
JDMCでの活動を通じて、BIを含むデータ活用のより効果的な方法や、最新の技術情報などについて、皆さんと一緒に勉強させていただきたいです。今後とも、よろしくお願いいたします。
渡辺浩太郎(わたなべ・こうたろう)
1978年東京生まれ。2001年3月に大阪産業大学卒業後、SIベンダーに入社。石油元売りシステム等の開発に従事する。その後、2004年に電力系ISPに転職し、情報系システムを担当。2008年に楽天に入社。楽天会員ID関連の開発に従事した後、2009年より同社グループコアサービス部で楽天スーパーDBを担当、現在に至る。
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次回のコラムのバトンを受け取ったのは、山田文彦さん(東京海上日動システムズ)です。お楽しみに!