日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.93】第一生命 内田さん、 データ活用の高度化からリスクコントロールまで。データマネジメント室の取り組み

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、第一生命保険株式会社 内田 和博さんです。


はじめまして。第一生命保険株式会社の内田と申します。

第一生命は1902年創業の生命保険会社で、お客さまの「一生涯のパートナー」として、生命保険事業を通じた、お客さまのQOL向上に取り組んでいます。

生命保険の主な役割は、万が一やご病気の際のお客さまの経済的な不安を軽減することにありますが、2021年度に当社が保険金や給付金としてお支払いした金額は年間で1.6兆円、1日あたり約42億円になります。

従来の生命保険ビジネスは社会保障を補完する「プロテクション(保障)」の役割を担ってきましたが、近年、健康寿命の延伸などに向け、「プリベンション(予防・早期発見)」の役割も期待されており、お客さまへの新たな付加価値提供に取り組んでいます。

私は昨年度よりデータマネジメント室を担当し、JDMCのコミュニティに参加させていただいています。経験豊富な皆さまから、非常に多くのことを学ばせていただくとともに、強い刺激を受けております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

データ活用に関わるきっかけとなった「マーケティング組織」の取り組み

私は第一生命に入社後、東京、札幌の支社を経験したあと、長らくマーケティング部門に在籍していました。

マーケティング部門では、営業支援システムの開発やコンサルティングツールの開発などを担当していました。今思えば、この異動がデータ活用に関わるきっかけだったと思います。赴任当日、部門長からドサッと大量の本を渡されて、「営業を科学するんだ」「重要なのは再現性だ」「暗黙知を形式知化するんだ」とまくし立てられ、呆然としたことを昨日のことのように覚えています。

それからは、CRM(顧客管理)やSFA(営業支援システム)を構築し、顧客理解の深化に向けた顧客情報の整備、営業活動の可視化・標準化を進めました。

当時、営業担当者と顧客の面談場面のデータを取得するのは困難だったため、各担当者に、顧客とのやりとりについて、

・「どのツール」を「どの順番」で「どのように説明」したのか

・お客さまの反応はどうだったのか

といったことを詳細に再現してもらい、ビデオ撮影を行いデータ化しました。

優れた営業担当者が行う、お客さまの理解や納得、満足度を高めるコンサルティングを再現できるようにするためには、料理でいえば「レシピ」のようなものが必要で、データをもとに、いわば「コンサルティングのレシピ作り」を進めました。

再現性を高めるためには、実際にお客さまの前で使うコンサルティングツールも工夫が必要で、業態問わず広く調査した中で秀逸だった、MR(医療に関わる営業職)が医師に医薬品などの情報提供に利用していたツールからヒントを得て、コンサルティング用のアプリを開発しました。

こうしてできたアプリは、まだ理想からほど遠いものではありますが、顧客理解の深化によるCX向上、営業生産性向上に向けては、「暗黙知の形式知化」「再現性のある仕組みづくり」が重要だと感じる経験でした。


コロナ禍で急速に進んだデジタル化、データ活用が有効な領域が一気に拡大

私が今所属しているデータマネジメント室は、全社横断的なデータ戦略の策定、高度なデータ分析・活用の推進、新たな付加価値創出などを目的とし、2019年に設立されました。

本部署では、データマネジメント基盤を構築してデータ活用を推進していますが、直近では、非構造化データの集積や自然言語処理の分析環境の構築を進め、データ活用の高度化を図っています。併せて、BIツール(Tableau)やAIツール(Data Robot)を導入し、データ活用の民主化を進めています。

データガバナンスについては、COBITのフレームワークに基づき、以下の領域に応じて整備を進め、ガバナンス態勢強化を図っています。

・データガバナンス(データ管理戦略、データ管理組織)

・メタデータ(メタデータ整備、メタデータ運用)

・データ品質(データ品質戦略、データ品質評価、データ品質改善)

・データセキュリティ

・データアーキテクチャ(ライフサイクル、履歴データ管理、データバックアップ)

近年、目覚ましい技術進歩や環境変化により、加速度的にデータ活用で実現可能な領域が広がっていくのを感じています。

特にインサイドセールスなど、非対面チャネルのタッチポイント拡大がデータ活用に与えた影響は大きいです。コロナ禍を経てデジタル化が急速に進み、顧客と企業の接点のあり方も急速に変化を遂げています。当たり前のようにWeb面談が行われ、面談場面のデータも活用可能になりました。

データ活用によるCX向上、ビジネスモデル変革を進める上で、今まで十分取得できなかったデータも取得できるようになり、これまでに見たことがないような世界がすぐそこに近づいていると思います。

リスクコントロール、特に「AIガバナンス」は国外の情勢にも目を向けよう

しかし、一方でデータ活用の実現に向けて対処しなければならない課題やリスクもあります。チャンスとリスクは裏表。リスクがないところにチャンスはなく、チャンスがあるところにはリスクがある。だからこそ、リスクを正しく把握し、適切にコントロールすることが重要だと思います。

近年、データ活用、特にAI活用に関するリスクコントロールが強く求められています。

就職情報サイトの運営者が、利用する学生の内定辞退率を算出し、企業に提供した事案は記憶に新しいところだと思いますが、AIの活用にあたっては、プライバシーの観点、公平性の観点、人権尊重の観点などでさまざまな問題が生じ、ガバナンス整備が喫緊の課題となっています。

AIの社会的な課題に対応するため、国際機関・各国政府ではAIの開発・活用において遵守すべきポリシーやガイドラインが策定されています。

2019年に「AI原則」がOECDから公表され、日本においてもそれらの原則を踏まえた「人間中心のAI社会原則」「AI利活用ガイドライン」が策定され、さらに金融庁からも「モデル・リスク管理に関する原則」が公表されています。

企業においても、独自にAIに関する原則・ガイドラインを表明するケースも出てきており、今後もこのような動きは活発になると予想されます。実効性のあるガバナンス態勢の構築は、各社共通の課題になるのではないでしょうか。

AIと一口に言っても、社内でAIシステムとして開発しているものもあれば、SaaSにAIが組み込まれているもの、各所管がプログラムを手組みして利用しているものなどがあり、全社で利用しているAIの把握や台帳管理自体にも工夫が必要です。

さらには有識者によるチェック態勢の構築など、検討すべきことは多岐にわたります。AI技術や社会通念が時代とともに変化することも念頭に置いた、適切なリスクコントロールが不可欠と考えています。

EUや米国が顕著、プライバシー規制強化への対応

プライバシー規制強化への対応も必要です。データマネジメント室では、個人情報保護法をはじめ、関連法令に関する動向の適時把握、適切なガバナンス態勢の維持・高度化を進めています。

集積データの拡充に伴い、第三者から取得した情報や共同利用の情報も増え、管理・運用に工夫が必要となっています。データ加工によって生じる「派生データ」の取り扱いについてもグレーな部分があり、法令などの動向を見極めながら、適切な対応が行えるよう進めています。

併せて、EUや米国など、各国のプライバシー規制強化の動向も、直接的な影響のほか、将来的な我が国の法規制への影響もあり、注視が必要と考えています。

EUのGDPR、米国のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、CPRA(カリフォルニア州プライバシー権法)やADPPA(米国データプライバシー保護法)など、各国においてプライバシー規制強化の流れは顕著であり、各国の法規制動向の適時把握と対応も不可欠だと思っています。

攻めのデータ活用の「つまずきポイント」に備える、49のチェックリスト

このように、データ活用におけるリスクをコントロールする上で、どのような対策を講じるべきか日々模索していますが、そのような中、『攻めのデータ活用の「つまずきポイント」に備える49のチェックリスト』という書籍と出会いました。

まずタイトルに引き付けられたのですが、よく見るとJDMCの「AI・データ活用のためのコンプライアンス研究会」がまとめたものとのこと。AIの利用など、攻めのデータ活用に取り組む際に、コンプライアンスや倫理面を巡って起きがちな問題、つまずきポイントが網羅されており、チェックできるようになっています。

データ活用におけるグレーゾーン、攻めのガバナンスについて、体系的にまとめられており、示唆に富む内容となっています。一度、手に取って見られるのもよいのではないでしょうか。

今回、データ活用やリスクコントロールに向けた取り組みについて少しお話ししましたが、私自身、データマネジメントに携わってまだ日が浅く、試行錯誤の毎日です。同じような課題を抱え、取り組まれている皆さまからの示唆・アドバイスは非常にありがたく、心強いものがあります。

今後もJDMCによる輪をさらに広げていければと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


内田 和博(うちだ かずひろ)

第一生命保険株式会社
ITビジネスプロセス企画部
データマネジメント室長

マーケティング部門において、営業支援システムの構築、データマーケティング等を担当したのち、2021年より現職。データマネジメント戦略、データマネジマント基盤の企画・開発、データマネジメント態勢の整備・高度化などを推進。

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