(報告)横浜国立大学向け「データガバナンス」講義 (2021/11/16実施)

日本電気株式会社 谷口直行

 

JDMCスタジオにて事前収録の様子

2021年11月16日、『データマネジメントの基礎と価値』研究会の有志メンバーが、横浜国立大学 都市科学部2年生向けに「データガバナンス」に関する講義を行った。2018年から実施しており4年目となる。今年も無事に完了。この内容について、本研究会サブリーダーの谷口よりレポートする。また、本稿の後半に、過去4年間の講義内容についても記載する。

1.はじめに

本講義に関わるメンバーは毎年、『データマネジメントの基礎と価値』研究会から有志を募っている。今年はCOVID-19の影響もあり各企業が多忙で、例年よりも少人数となったが、コンテンツ作成から講義の事前収録まで約1か月強を費やし、首尾よく運んだ。 講義コンテンツには、これまでの講義の骨格を生かしつつ、最新事例や前年からの課題や改善を取り入れた。

 

2.講義概要

学生(初学者)向けに、「データガバナンス」や「データマネジメント」をより分かりやすく解説していくために、データに纏わる問題事例やデータ利活用事例を織り交ぜて解説。


司会: 富士通  黒瀬 達也 氏 

『データガバナンス』講義内容(16:15~17:45、90分)
講師
1章 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)
2章 本日のテーマと目的
3章 データに関連した最近の出来事
東京大学エコノミックコンサルティング
佐藤 三史郎 氏
4章 データの基本 ビジネスエンジニアリング 
加藤 俊 氏
5章 データガバナンス、理解度チェック
6章 まとめ
7章 JDMCカンファレンスのご紹介

エヌ・ティ・ティ・コムウェア
西村正義 氏 

 

 講義本番、質疑に応答するため会議室に待機

徐教授

1章 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)
JDMCの紹介と、研究会の出版物であるデータマネジメント概説書、ケーススタディを紹介。

2章  本日のテーマと目的
イントロダクションで、講義受講前に学生の皆さんへ、「データ」「データを活用」をどのように理解しているかを書き留めてもらう(演習)。

3章 データに関連した最近の出来事
・横浜市水道局19年間誤請求問題
・リクナビ 内定辞退率販売問題
・新型コロナウイルス関連 データを基にした意思決定へ
・電子政府ランキング1位のデンマーク
データに関連する、良い事例・悪い事例を4点例示。データ視点や、データガバナンス視点で講師の経験を踏まえてポイントを紹介

4章 データの基本
・データとは?
・データ活用プロセス
・データは生まれて消えるもの
・データの種類
・なぜ、データに注目するのか
・【参考】横浜DeNAベイスターズ社の観客動員数向上プログラム
・データに関する法令制度
・【参考】マイナンバーカードをスマホアプリ化するxID
・データを活用する上でのポイント

「データ」と「データマネジメント」、「データガバナンス」の基礎知識の学習のため、データそのものの定義について、データ活用プロセス(DIKWモデル/DIKWピラミッド)や、データは生まれて消えるもの(データライフサイクル)などを使い解説。データに注目される理由について、データ利活用が進む中で広がるデータの種類と、Sociery 5.0の世界で世の中をより良くするための活動として、テクノロジーとともに、変化してきていることについて事例紹介を交え解説。その一方で、データに対する法令制度、社会ルールなどを通したコンプライアンスの重要性を説明。最後に、データマネジメント概説書(JDMC版)より、データマネジメント活動と、その活動を支える3ポイントを解説。

(1)  目的に合った品質データを備えたデータ
(2) データ利活用基盤と取り組み
(3) データガバナンス

5章 データガバナンス、理解度チェック
三権分立(立法・行政・司法)を例に、データガバナンスの解説するととともに、3章で例示した4事例を利用したデータガバナンスの理解を深めるために演習形式で学生自身に書き留めてもらう(演習)。演習に対しての事例解説と回答例を紹介。

6章 まとめ
2章の問いかけに対する解説と、本日の講義のまとめ。講義後に「データ」「データを活用」について、学生自身の考えに変化があったかどうかを再度書き留めてもらう(演習)。企業で行われるデータ分析の流れの解説。

7章 JDMCカンファレンスのご紹介
次回(2022年3月10日)のオンラインカンファレンスの紹介。

 

3.学生の評価(アンケート結果)

2021年度のアンケート結果:

【フリー記述で頂いたコメントより】

 (赤字:要望 青字:興味を持った感想)

  • データをビジネスに活用していく具体的な方法を普段の講義では学んでいますが、そのデータの活用において注意しなければならないこと、重要なことを学ことができ、データの管理や運用方法がとても重要となってきている今の時代にデータリテラシーを持った上で正しく、効率的にデータを活用していけるようになるためにとても有意義な時間でした。
  • インターンや研究室レベルの学習をしていない限り聞けないような、データ活用の手法について現場の人々の意見を知ることができてよかった。2021年はデジタル庁が発足したことを筆頭に、DXという言葉が社会で大きく浸透した一年だったと言える。こうした潮流を受けて、大学でもデータ活用の講義をもっと増やしてほしいと思った。
  • データガバナンスの意味とその重要性について、ただデータを扱う企業や政府がルールを策定し、運用すればいいだけでなく、それらをきちんと監視するために、一般人である私たちもまたそれらについて関心を寄せる必要があるのだということを今回の講義を通じて強く感じました。
  • 今回はお忙しい中貴重なお話を頂きましてありがとうございます。今までにあまり触れたことのないような「データガバナンス」という概念について学ぶことができ非常に興味深い内容でした。改めましてありがとうございました。
  • 私は普段の生活の中でまとまった情報を受け取ることが多かったため、データの利用については、主にデータの受け取り側として考えていた。しかしながら、今回の講義を通して、バラバラなデータを整理することでデータを社会の中で利用させることができるようにする立場からデータ利用を見れば、情報の単位を揃えて正確に比較できるようにするなどの注意点が考えられ、データを運用する立場からは、個人情報を同意無しには使用しないなどデータごとの規則を遵守していくという点があるなど、データに携わる複数の立場からデータ利用を考えることができたことがよかった。また、一つの制度を整備するのにスピードが遅いことがよく問題に挙げられているが、データ整理に多大な時間がかかることから考えればしょうがないことだとも感じた。
  • データの基本的な知識と最新の問題まで詳しく学びました。これから、データを正しく活用する方案について考えるきっかけとなりました。
  • 具体的な事例を用いていたので、実社会におけるデータ活用がイメージしやすかった。

 

過去4年間のアンケート:  (2018年:64件、2019年:29件、2020年:7件、2021年:7件)

対象受講者は減っているが、アンケート結果の理解度、満足度などは年々向上している。年々、アンケートは深い講義内容を求めるコメントもあがっており、データマネジメントやデータガバナンスに対する学生の関心は年々高くなっている。 

 

4.これまでの経緯と振り返り(今後に向けて)


これまでの経緯:

本講義の始まりは、2018年度に横浜国立大学 徐 浩源(Xu Haoyuan)教授から「リスク分析のための情報処理A」の中の1枠で、『実際にデータを取り扱っている企業にてどのようなリスクや概念を持たれているか?』 社会人から学生に話をして欲しいというご依頼をJDMC事務局で受け取ったところから始まった。

 

「リスク分析のための情報処理A」のシラバス:
1.情報化社会のリスクマネージメント
2.データの構造・蓄積・保管
3.ビックデータの基礎知識
4.データ分析アプローチ1
5.データ分析アプローチ2
6.リスク分析と応用
7.データガバナンス
8.定期試験

(参考)初年目(2018年度)の記事

 

講義資料は、データマネジメント概説書(JDMC版)を執筆した、JDMC 『データマネジメントの基礎と価値』研究会の有志メンバーを中心に、学生(初学者)向けにデータマネジメント概説書を噛み砕き、事例を交えた形で講義資料として準備したものです。年を重ねるごとに、受講した学生コメントや、研究会メンバーの振り返りで協議を重ね、初学者向けの紹介資料として整理されている。

・初年度(2018年):
学生(初学者)向けに、事例を交えながら講義資料の中でデータマネジメントとデータガバナンスの解説に初チャレンジ。講師×2名体制で挑む。

・2年目(2019年):
前回講義の結果と徐先生からの要望などを踏まえて改善を実施。講師×3名体制へ変更。
– 事例や講義の中で都市科学部に関連するSociery 5.0などを含んでほしい
– 最新事例化を進めるとともに、事例を絞り、より学生に近い事例を厳選
– 社会的にデータリスクが高まる中で法令制度に関する情報を盛り込む

・3年目(2020年):
COVID-19の影響を考慮し、オンライン開催でおこなえるように見直しするとともに、後々に再利用できるよう、JDMCスタジオで事前の動画収録へチャレンジ。講義当日は、司会者中心に動画で講義をおこない、FAQは講師メンバーで回答。バックアップとして、講義資料の作成へ協力した有志メンバーもリモート参加。

・4年目(2021年):
前年度からのCOVID-19の影響もあり、2020年度と同様にオンライン開催。講義の進め方は、前年度と同様のやり方を踏襲。
 -事例の最新化と合わせ、法令制度に伴う注意事例を追加。
 -教授からの相談あり、企業が望むデータサイエンティストの人材像の解説を追加。

 

今後に向けて:

今年で横浜国立大学向けの講義は1サイクル目が完了。講義資料の骨格はこれまでの4年間で整理できているが、貴重な学生と触れ合える機会の場でもあり、横国大 徐教授とも相談の上で継続できるよう調整していきたい。また、この場を利用し、研究会メンバーのスキルアップや、学生との意見交換として生かしていきたい。また、これまでの4年間の講義で整備してきたコンテンツを利用し、同様の課題やニーズがある大学や企業向けの教材として再利用できるオンライン教材とて生かしていきたい。 最後に、今回の講義開催に向けて、ご多忙の中、全面的に協力いただいたJDMC事務局 臼井さん、また、テーマ2研究会の有志メンバーに対して謝辞を申し上げます。

 

【制作/支援】
資料製作活動メンバー
秋田 和之 (NECソリューションイノベータ株式会社)
加藤 俊  (ビジネスエンジニアリング株式会社)
佐藤 三史郎(東京大学エコノミックコンサルティング株式会社)
谷口 直行 (日本電気株式会社)
西村 正義 (エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社)
岩渕 史彦 (日立製作所)
黒瀬 達也 (富士通株式会社)
倪 暁白  (キヤノンITソリューションズ株式会社)

【講師・ファシリテータ】
講師
佐藤 三史郎(東京大学エコノミックコンサルティング株式会社)
加藤 俊  (ビジネスエンジニアリング株式会社)
西村 正義 (エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社)

ファシリテータ
黒瀬 達也(富士通株式会社)

【協力】
日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)事務局 臼井 琴美・橋本 高明
JDMC研究会企画部会
JDMCテーマ2『データマネジメントの基礎と価値』研究会

 

 

以上

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