日本データマネージメント・コンソーシアム

レポート

報告:横浜国立大学にて講義、『データマネジメントの基礎と価値』研究会 2018年

2018/11/20(火)に横浜国立大学で講演したデータガバナンスの取り組み内容について、『データマネジメントの基礎と価値』研究会リーダー 日本電気株式会社 谷口より以下に報告する。

1.講義開催に向けた事前検討

本講義は、昨年度に「データマネジメント・スタートアップ・プログラム」へ参加された、横浜国立大学 徐 浩源(Xu Haoyuan)教授より、都市科学部の二年生向けの「リスク分析のための情報処理A」の講義の一コマである「データガバナンスについて、一般の実際にデータを取り扱っている企業にてどのようなリスクや概念を持たれているかを90分(1枠)で説明してほしい。」とJDMC事務局へご依頼を受けたことから始まった。

「リスク分析のための情報処理A」のシラバス:
1.情報化社会のリスクマネージメント
2.データの構造・蓄積・保管
3.ビックデータの基礎知識
4.データ分析アプローチ1
5.データ分析アプローチ2
6.リスク分析と応用
7.データガバナンス
8.定期試験

JDMC事務局から、5月に出版したJDMCデータマネジメント概説書の内容を絡めて、テーマ2『データマネジメントの基礎と価値』研究会の方で対応依頼を受け、検討を着手することとなった。まず、横浜国立大学 徐教授、JDMC事務局(臼井さん、谷本さん)、テーマ2研究会(池田さん、谷口)の5名で集まり、講演のニーズについて事前ヒアリングをおこなった。

徐教授が思い描くデータガバナンスとは?
– データを利活用しないリスク
– データを利活用するリスク(個人情報、機密情報漏えい)
– 企業でのデータ管理の例
– 企業でのデータを管理、利活用するためにしていること(管理、教育、リスクコミュニケーション)
– データマネジメントとは?(データライフサイクル含む)

データガバナンスに対して正しく学生へ理解させるために、データマネジメントに対する活動をおこなっているJDMCメンバーから、データに対するメリットやデメリットを社会人の実践的経験を交えて語ってほしいという内容であった。

2.研究会での講義資料準備

講義のシナリオとコンテンツの整備は、11月前半からJDMC事務局とテーマ2関係者の有志(12名)が集まり作業着手することとなった。

当初、データガバナンスを説明する中で、『JDMCデータマネジメント概説書』を中心にして、いくつかの事例を交えた講義資料を構成するつもりであった。ドラフトで整備した資料を関係者間でレビューを進めたが、このままの内容では学生(初学者)には、データガバナンスそのものや、データマネジメントの専門的な言葉が多すぎて本質の理解を妨げる要因になり得ることと、データガバナンスの説明のために、データのリスクを強く説明してしまうと後ろ向きの活動と捕らえられ、真剣に聞いてもらえないのではという2点の意見が出された。

この2つのコメントを踏まえ、活動メンバー間で討議し、学生向けに大幅に噛み砕いた説明資料に改定することと、データ利活用した効果(メリット)事例と、問題(デメリット)事例を織り交ぜながら、データガバナンスをどのように取り組めばよいかということを自ら考えられるような構成へ講義資料を再構築した。ちなみに講義資料は、講義当日の朝まで細部を修正するなどこだわりを持っていた。

3.講義の実演と研究会内での振り返り

<講演概要>
【開催日】2018/11/20(火)13:00~14:30(90分)
【受講者】横浜国立大学 都市科学部の二年生: 64名
【講師】三菱ケミカルシステム株式会社 池田 信威さん(写真上)
NECソリューションイノベータ株式会社 秋田 和之さん(写真下)

データガバナンスを説明するために、”データとは何ぞや”というような話から始め、データの種類・分類を解説、データ活用がうまくいった事例や、うまくいかなかった事例を中心に説明し、その中に発生しうるデータのリスク、データ利活用によるメリットについて解説した。
また、一方向の講義とならないように、講義の合間に設問を設けて学生の皆さんにより深く自ら考えてもらえるような考慮をおこなった。

– 学生生活で活用できるデータとは何か?
– 「データを活用する」上で注意するべきとは何か?
– 講義で取り上げた事例の中で、データガバナンスのどれが重要となのか?(理解度テスト)
– 講義を振り返り、学生生活をより良くするために注意すべき点は何か?

<研究会内の活動メンバーのコメント>
・講義資料を整備していく中で、人に伝えるためにどうすべきかという点で振り返るとともに、深くデータマネジメントについて考えることができた。
・概説書の思いを学生へ、いくらか伝えることができた。
・自社や自分自身の活動としてアピールすることができた。
・学生のコメントでは、データガバナンスよりもデータに対する脅威に関心持てた人も多かった。
・日本で初めての試みである。
・社会人の若手などDMの初心者にも使える資料を準備できた。
・学生の皆さんは、今回の講義をきっかけにデータの扱いの怖さや興味を持ってもらえたと思う。

4.学生の評価

【フリー記述で頂いたコメントより抜粋】
・講義の前後でデータガバナンスの意識が変わった
・データはとても便利だが、その反面、注意しないといけないことがあることも知った。
・「データを利用する」ということに関してはいろいろな授業で教わっているが、「データをどのように管理していくか」ということに関してはあまり聞いたことがなかったので新鮮でした。

5.今後に向けて

今回の取り組みを経験し、データマネジメントの重要性を再認識した。研究会活動では、これまで社会人へ普及・啓蒙活動をおこなっている。データ駆動経営、データ利活用など企業の中で、データマネジメントの重要性が高まってきている。しかしながら、実際にデータマネジメントを実践しようとすると、「どこから取り組むべきか?」、「データマネジメントの重要性を経営者や事業担当者に伝えきれない。」などの課題で立ち止まることがある。JDMC活動を通して社会人へデータマネジメントが当たり前の活動として定着するように普及・啓発することも必要だが、これから社会人になる学生へデータマネジメントの基礎を伝えることも、とても重要な活動であることを改めて気づかされた。今後、研究会としても継続的な活動として推進していきたい。

最後に、今回の取り組みに向けて、ご多忙の中、全面的に協力いただいたJDMC事務局 臼井さん、谷本さん、また、テーマ2研究会の有志メンバーに対して謝辞を申し上げます。

【制作/支援】

講師池田 信威(三菱ケミカルシステム株式会社)
秋田 和之(NECソリューションイノベータ株式会社)
資料製作活動
メンバー
谷口 直行(日本電気株式会社)
池田 信威(三菱ケミカルシステム株式会社)
中村 和之(東京海上日動システムズ株式会社)
秋田 和之(NECソリューションイノベータ株式会社)
山村 哲司(株式会社 外為印刷)
佐藤 三史郎(株式会社東京商工リサーチ)
アドバイザー大西 浩史(株式会社リアライズ)
谷内田  仁(株式会社 エヌ・ケイ)
森 弘之(JFEシステムズ株式会社)
林 惠美子(富士通株式会社)
JDMC事務局臼井 琴美(日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)事務局)
谷本 一樹(株式会社 日立製作所)
JDMCテーマ2
事務局
谷口 直行(日本電気株式会社)
池田 信威(三菱ケミカルシステム株式会社)
協力JDMCテーマ2『データマネジメントの基礎と価値』研究会

以上

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