JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、ジェイコム東京の磯野茂さんです。
可能性が広がり続けるAI、それを創造した人間の素晴らしさ
AIという言葉をよく耳目にする。囲碁やクイズ番組でコンピューターが人間に勝つなど、人のように振る舞うコンピューターの話が分かりやすいだろう。これらは、大量のデータからコンピューターが統計処理を行い、入力と出力の管理を自動学習できるようになったことで実現された例だ。
コンピューターに音声を何回も聞かせ、発音された言葉を教えれば音声認識ができる。あるいは画像を何回も見させ、被写体が何であるかを教えれば画像を認識できる。だが、このような動作は少し過去のことである。最近では特定な教え方をしなくとも聴覚のように認識し、人の能力を何桁も上回る速度で顔の画像データを表層的に見るような動作でも、画像を一瞬に認識してデータ検索し個人名や年齢、性別などを言い当てる。人間の探偵のような深い洞察力も数年で可能になるのではないだろうか。
画像認識で人の属性が分かればマーケティングやセキュリティに使える。自動運転や調理の自動化にも応用できる。このようなAIの応用が着実に倍々ゲームのように進んでいる。
画像以外のデータに対しても、AIは宇宙、素粒子、農業や医療、建設、運輸、流通、製造などさまざまな産業の効率化技術として利用されようとしている。さまざまなセンサーのデータから結果を分析予測することで産業の効率化・最適化に貢献する技術――今日のAIはそのようにとらえられることが多いが、ここでも、リアルタイム処理という言葉以上に人間の解析、判断よりも微小時間で瞬間に正確な結果をもたらすことができるようになってきている。
予知の分野が確率できると、自然界の法則も数値化できコントロールするより 自然のエネルギーをよりよく利用することが可能になるであろう。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)の過去の報告書には、「1%の力」という文言がある。もし各種産業機器に備え付けたセンサーデータの利活用により産業の効率を1%でも向上できれば、その効果は大きい。かつて全世界の航空産業で燃料消費を1%効率化できれば、15年間で3兆円の節約になるという指摘がなされた。食品流通やサービス業など最適化の余地が大きい産業における効率化は、それ自体が新規事業となりえる。
AIは産業のあらゆる局面で効率化を堅実に進めるための道具であり、さらにそれは社会問題を解決する新規事業創造に重要な技術の1つである。また、AIがデータの分析に依拠しているのは明白だ。AIは魔法の技術ではない。この技術に関しては、先端技術や研究といった言われ方がされなくなる日が近いことは間違いない。人間が手をくださなくとも確実に正確に結果を導き運用される時代はすぐそこにきているのである。
2010年頃に出現した「ビッグデータ」がもてはやされるようになって久しいが、AIが実を伴うころには違った意味で、データもビックとは呼べない時代も到来するだろう。このような仕掛けを築いた人間はなんと素晴らしいことであろう。AIに勝利させ。面倒なデータ世界から離脱し、今後違った意味の人間を楽しむ世界があるのではないだろうか。
磯野 茂(いその しげる)
1954年、東京都小金井市出身。明星大学理工学部電気工学科卒業後、1977年4月に東京放送入社。報道制作部に配属。1978年4月に東通入社。サウジアラビアやドイツ、イギリス等の放送機器プロジェクトに参加。1998年4月、株式会社ジェイコム東京入社。小金井局技術部長に就任。2003年4月、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟に出向し、著作権委員会、地上デジタル放送推進座長補佐などを務める。2016年7月、ジェイコム東京西エリア局地域プロデューサーに就任、現職。