日本データマネージメント・コンソーシアム

レポート

第36回定例セミナー報告:医療情報のこれまでとこれから

 (セミナー部会・峯岸勇)

2017年3月23日に第36回定例セミナーを、日本テラデータ株式会社のセミナールームをお借りして開催した。

今回は、日本版PHR(Personal Health Records)をテーマに、医療情報のこれまでとこれから、そして個人情報保護との関連について一般社団法人医療情報システム開発センター理事長・医学博士 山本隆一氏に講演していただいた。
その後「医療・健康分野のAI・ビッグデータ活用最新事情」というテーマで アステラス製薬株式会社 情報システム部長 須田 真也氏に加わっていただき、モデレータをJDMCセミナー部会の三輪大介(有限責任監査法人トーマツ)が行なって鼎談を行なった。鼎談後には予定時間を超えて打ち切りになるほど多くの質問が飛び交い、有意義な議論が交わされた。

◎オープニング
今回会場を提供いただいた日本テラデータの金井氏(JDMC理事)により、「医療でのビッグデータ活用とAI」についての話があり、JDMCでも今後の議題として取り組む必要があるとの提言で本セッションが開始された。

◎講演1「医療とIDを前提とした日本版PHR構築について」
一般社団法人医療情報システム開発センター 理事長 医学博士 山本隆一氏の講演では、日本における医療情報の歴史や、医療事務の効率化から始まり医療費の増大対策としてのオーダリングシステム、患者説明のためのグラフ化・電子カルテ化など、どのように発達してきたか、どういう課題があったかなどが分かりやすく解説された。

現在では産まれてから死ぬまでに様々なライフステージの中で複数の医療機関にかかるため、国として情報を引き継げる仕組みを作ることの重要性や、一つの病気でも日々ものすごい量の論文が発表されているため、複数の医師でお互いの専門性を高めて連携していくことの必要性を提言された。
その課題を解決する策として、欧米諸国でも取り組まれているPHR「健康医療情報のデータバンク」への日本での活動や医療版マイナンバーの整備に向けての動向を話していただいた。

◎イントロダクション「医療・健康分野のAI・ビッグデータ活用最新事情」
JDMCセミナー部会 有限責任監査法人トーマツ ヘルスケアアドバイザリー部 マネジャー 三輪大介が鼎談のイントロダクションとして「匿名加工医療情報提供者と医療情報の活用」「要配慮情報」「データ活用に向けた課題」「人工知能の活用」という4つのキーワードを解説した。

◎鼎談
「医療・健康分野のAI・ビッグデータ活用~個人データ保護の視点から」というテーマで、前述の山本隆一氏とアステラス製薬株式会社 情報システム部長の須田 真也氏を交えて鼎談が行われた。匿名加工医療情報提供者とその運用、取り巻く法案についての議論や国としてのデータ活用促進のあり方、オープンデータ化などについて議論がなされた。また、匿名加工の定義など医療業界独自の課題についても提言された。データを整備する側で活動されている山本氏と製薬業界で実際に二次加工する側の須田氏により、お互いの立場から様々な意見を交わしていただき、とても有意義な鼎談になったのではないかと感じている。

<参加者アンケートより>
・事業ドメイン知識がないため、難しい内容でしたが、データ統合・活用の基本的なお話も含めて伺うことができました。ありがとうございました。

・先進的な内容で、また具体性もあり参加になりました。

・初めて参加したセミナーですが、講演・質疑とも質が高く、引き続き参加してみたいと考えるようになりました。よろしくお願いいたします。

・現在の業務で担当する業種ではなかったですが内容は参考になりました。

・普段聞けない医療業界のデータ活用の現状を聞かせていただき、有意義なセミナーでした。個人情報保護法との関係を押さえておくべきであることを再認識しました。

・この領域を全く知らない身としては、山本先生の講演は 大変わかりやすく よく理解できました。 今後、診療情報だけでなく、(患者の)生活行動、運動や食事など、いわゆる 「健康と医療の狭間の情報」が どう進化していくか、大変興味があります。

・医療情報を個人情報の枠の中で実業に結びつけ、余病防止に寄与している企業、アイデアなどの 実態などに触れられればさらに良いと思います。しかし、その前段階の市場環境を学ぶ点においては講師の方々のご努力を感じました。

・RWDを取扱い初めておりおぼろげながらの知識しかありませんが、 山本先生のお話を聞けたため、断片化された頭の中がつながり始めました。 ありがとうございます。

・山本先生、須田様から具体的な取り組み施策や、今後の方向性についてお話し頂き、 大変勉強になりました。質問時間がもう少し長くても良いと思いました。

・医療関連システムは興味があったので、それらに関わる歴史的な話や現状、課題なども聞けて、とても満足しております。

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