日本データマネージメント・コンソーシアム

レポート

第34回JDMC定例セミナー報告:コメリグループ・ビットエイ、セイコーエプソン講演

JDMCセミナー部会は、2016年8月4日に第34回定例セミナーを、Pivotalジャパン株式会社のセミナールームをお借りして開催した。

今回は、2016年3月11日に開催された「データマネジメント2016」にて、データマネジメント賞「データ統合賞」を受賞されたコメリグループ 株式会社 ビット・エイ小林 禎氏と、セイコーエプソン株式会社 小泉 泰慎氏にご登壇いただいた。 (セミナー部会・峯岸 勇、Yellowfin Japan)

■オープニング: 次世代プラットフォームを推進するPivotal

Pivotalジャパン株式会社 技術統括部 テクニカルディレクター 仲田 聰氏

今回、会場をお借りしたPivotalジャパンの仲田氏にオープニング講演として自社の取り組みなどについてご紹介いただいた。

アジャイル開発を推進している、PaaSのインフラ整備も含めてDevOpsを支える仕組みを提供しているなど、スタートアップ企業だけでなく既存の大企業でも同じスピード感でビジネス展開ができる様にする取り組みを行っている。「要件は変化するものだ、という前提のもとプロダクトを作る」と仲田氏は語る。また、残業は基本的にはしないが、業務時間は業務に集中できる様な取り組みを行うほか、オフィス内に卓球台を置き、リラックスできる環境を作るなど効率化を図る取り組みをしている所もとても興味深かった。

■講演1: データマネジメント賞「データ統合賞」受賞記念講演

コメリグループ 株式会社 ビット・エイ 常務取締役の小林 禎氏

全国で沖縄県を除く都道府県に1180店舗を展開しているホームセンター コメリグループの大量なデータを一手に支えるシステム子会社ビット・エイのデータ管理・統合について講演していただいた。

ビット・エイはグループ全体の販売データ・在庫データの分析、過去実績から将来予測データの管理を行っているが、

・店舗から直接アクセスするため機能不足、処理性能不足
・各社データの非定型、共有不足
・レスポンス

などの課題を抱えており、アクセスが集中するとログインすら出来なかった。

上記の課題を解決した上で一つのシステムに統合して、そこで全てのマスタ・データの管理を行えないかと考えた。重要な要件として、メンテナンス性を特に重視したため、外部システムとの連携やレスポンス、早い開発サイクルの実現を目指した。

1日1000万件にものぼるPOS販売データと顧客データ、履歴を全てひも付けている。画像も全システムで共有できるようにしている。また、地図連携でカード顧客データを分布し、チラシの配布エリア分析に使用している。このシステムではポイント統合も行い、一部を除くネットポイントとリアル店舗ポイントをリアルタイムで共有できる様にした。

在庫数の一元化も行える様になったため、店舗にある安全在庫数を算出し、ネットでの取置きサービスも展開できる様になった。

ビット・エイは今後各店舗、取引先、物流センター、基幹システム全てのマスタを統合してより多くのサービスを一元的に管理できる様にしていくことを目標としている。

小林氏は「スピード感を優先すると、個別に作ってしまいがち、最初はそれでいいが後々、一方ではデータがあるが、もう一方では無いなど様々な問題がでてくる。最初から統合しておくことで複数のECサイトの統合も可能になってくる。データは持っているだけではしょうがない。それをどう使うかが重要。」と締めくくっている。

質疑では、マスタなしでの販売について、ビット・エイの製品選定や製品知識のトレーニング方法について質問があり、小林氏とセミナー参加者との議論がなされた。

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■講演2:販促領域におけるデータ活用の取り組み

セイコーエプソン株式会社 小泉 泰慎氏

小泉氏にはデータ活用を業務プロセス定着させることを目的に、ビジネス部門に入り込みトライアルとして取り組んだ顧客ターゲティングの事例を講演いただいた。

販促領域におけるデータ活用の取り組みの目指す姿として、「全社で社内外のデータが有効活用される。経営判断・意思決定のスピードアップ」を掲げ、

・事業の知見となるルールの発見
・データ分析アルゴリズムの開発
・どこの職場でもデータによる判断、意思決定がされている

ということを活動方針として議論、検証を行っている。

今回、セイコーエプソンでは「大容量インクタンク搭載モデルの顧客ターゲティング」について実際に検証を行ってきた。プロジェクトの発足と溜まっているデータから活用すべきデータの選定、データ活用の有効性の確認や活動経験の定着化を進めてきた。ウェブサイトの来訪者、購入者からプロファイル分析を行い、その特徴を把握して次の施策を行うというサイクルで検証し、想定のターゲットとの差異からさらに分析を行って仮説を作り直すという仕組みとなっていた。

このプロジェクトではメンバーに分析に詳しい人間がいない、そもそも溜まっているデータが分析を目的として取っておらず、ある程度の手作業が発生してしまったなどの課題があった。そのため、簡単な仮説から始め、プロジェクト全体への周知を含めて少しでも進められるところから進めた。

小泉氏は、「今回は簡単な仮説で行ったが、今後は仮説段階をもっと深く検討し、効果がより高い手法を模索していく必要がある。そのためにはデータ活用基盤が重要だと再認識した。また、何のために収集し、どの項目をどう分析するのかを決定するのがブレずに分析を行う上で重要だ。」と最後に付け加えられて講演を終了した。

質疑では、WEB来訪者の定義やカウント方法について、個人法人の認識方法について、仮説シナリオの決定プロセスについてなど、実際に検証していく上で必ず避けて通れない項目についての質問が多くされた。

以上の2つの講演は、データ統合・販売促進への活用と内容は異なるものの、データを活用する上で必ず発生する課題、問題に対して一つ一つ論理立てて解決していくという所は共通だと感じた。それぞれの解決方法はセミナーに参加された方に有意義なものとなっていれば幸いである。

(みねぎし・ゆう)

※終了後の懇親会と記念撮影

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