第15回JDMC定例セミナー報告

2013-03-12

2月1日、第15回JDMC定例セミナーが日本記者クラブで開催された。1つ目の講演では、社団法人中央政策研究所 主任研究員 PIビジネスモデル研究所 山鳥経営戦略研究所所長 山鳥忠司氏が登壇。経営コンサルタントとして、数多くのクライアントの経営課題を解決してきた同氏が確立したPI理論の考え方や、分析におけるデータ活用のポイントを語った。

2つ目の講演では、三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社(以下、MDIT) ITセキュリティソリューション事業本部 ITソリューションシステム部システム第一課 村松祐一郎氏が登壇。製造業の生産現場に流通する膨大なデータを収集・分析し、品質改善や法令対応に結びつける同社のソリューションを、事例を交えながら紹介した。

第15回2 第15回

 

◆講演1「予測困難な時代の経営戦略の立て方 ~データから意味と価値を見出す~」

社団法人中央政策研究所 主任研究員
PIビジネスモデル研究所 山鳥経営戦略研究所所長
山鳥忠司氏

 

「100円のカップアイスを効果的に売る手法と成果予測を依頼された。それに対して年間100億円売れると回答したところ、“あり得ない。100円のカップアイスは20億円が限界というのが業界の常識”と言われた。結果は、150億円売れた」――。

山鳥氏は、独自のデータ分析手法を原動力に、これまで1000社を超える企業の戦略立案、実行などの案件を手がけてきた。内訳は大手企業の商品開発・販売戦略の立案から、国政選挙における候補者の得票数予測、芸能人やタレントの売り出し方に関する助言まで、多岐にわたる。山鳥氏のもとに依頼が舞い込むのは、助言の精度や予測の的中率が非常に高いためだという。

それを可能にするのが、山鳥氏が長年かけて編み出したPI(Perspective Inspection)理論と呼ばれるデータ分析手法である。Perspectiveは「将来を見通す」、Inspectionは「(情報を)集積する」という意味だが、「情報の集積、将来の予測に加えて、目指す目標(仮説)を達成するための具体的な戦略・戦術を導き出すものでもあります」と山鳥氏は説明した。

PI理論の出発点になるのは、上述した「仮説」である。たとえば、『自社のZという商品/サービスの売上を、X年後(いつまで)に、Y億円(いくら、何倍)まで伸ばしたい』といった事業目標がこれに当たる。このような仮説を具現化するための戦略、戦術を導き出すのがPI理論のゴールである。

「冒頭にあげたカップアイスの新商品企画では、その食品メーカーの社長が、私の提言通りに戦略・戦術を進めたところ、売上目標に到達する空前のヒット商品になりました」。

山鳥氏は、顧客が仮説を達成できるかどうかの判別に先立って、現状のデータを徹底的に収集する。その企業がどの業種に属するか、または商品特性などに応じて集めるデータ項目は変わってくるが、業種を問わず共通している要素もある。

そのひとつが、PI勘定科目体系だ。企業活動を、マーケティング、営業、生産・物流、開発、人事という5つのブロックに整理し、それぞれの経営指標(勘定科目)の関連性を洗い出す。その過程で、生産した財やサービスを100%売り切ることを阻害しているボトルネックを可視化し、その解消に向けた戦略・戦術を、品質管理や人事戦略といったカテゴリごとに優先度を付けて導き出す。

「変化する市場では、どんな商材でも常にトップを走り続けることは困難です。とはいえ、売れ行きが鈍化した商材でも、ターゲットとする市場を見直すことで、再び競争優位性を獲得するケースが多々あります。ニーズを持つ真の顧客層を見つけ、戦略・戦術を軌道修正することで、新たな仮説に到達することが可能なのです」と指摘した。

PI理論の特徴は、社内のデータや定量的な数値情報だけでなく、社外のアンケートやヒアリングを通じて得た消費者の声、業界に精通したプロフェッショナルの知見など、人間の感覚(意思)を分析に付加する点だ。

「分析に用いる個々の計算モジュールはシンプルですが、多数のモジュールを適切に組み合わせる点にノウハウがあります。多変量解析やOLAPなどの各種統計解析手法と、前述の感覚投入手法が両輪であるからこそ、精度の高い予測数値や必要な戦略・戦術を導き出せます」と山鳥氏は語った。

最後に山鳥氏は、「グローバル市場を制する日本企業が出てほしい。そのために最も大切なのは、経営層の掲げる仮説です。またそれを阻害するファクターは、猫の目法制。トップの志を社員に行き渡らせ、データ分析に基づく戦略・戦術を貫徹することが重要です」と述べた。

 
さて、この記事を読んだ皆さんの感想はいかがだろうか。「非現実的」とか「あり得ない」と思われる方も少なくないかも知れない。しかし、山鳥氏が少なくない成果を上げていることは事実だろう。それ以前に、データを集め分析することは単に何かを予測したり因果関係を把握するだけに留まらないことを、山鳥氏の講演は示している。予測から最大ポテンシャルを見つけ、それを実現するための戦略立案と実行支援を行えば、ポテンシャルでしかなかったことを達成できることも示している。我々はこの事実を改めて考えてみるべきではないかと思う。

 

 

◆講演2 「製造業様における生産現場のセンサーデータ蓄積/分析への取り組み」

三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社
ITセキュリティソリューション事業本部
ITソリューションシステム部システム第一課
村松祐一郎氏

 

工場などの生産現場には、実にさまざまなデータが流通している。それらを収集・管理・分析し、有益な情報価値に変えることで、メーカーは競争力を高めることができる。講演で村松氏が示したのは、ビッグデータと呼ばれる膨大な情報資産の、ビジネス活動への転換である。

収集可能なエンジニアリング系のデータには、生産の自動化を支援するセンサーやシーケンサなどのFA機器から出力される生産実績や品質情報データ、すなわち制御層のデータがある。ほかにも、企業資源計画(ERP)を基盤とする計画層、製造実行システム(MES)を基盤とする実行層で生成・蓄積される情報システム系のデータも含まれる。昨今はテクノロジーの進展により、1000分の1秒といった極めて短い時間間隔でのデータ収集も可能になったことで、その分、蓄積・処理するデータが爆発的に増加している。MDITの情報連携製品群は、計画層、実行層、制御層で発生する大量データを効率よく統合、管理することで、さまざまな製造現場の課題解決に貢献するという。

「たとえば、生産状況に基づく効果的な計画立案、実績データの活用による稼働分析、品質情報の収集・管理・分析による改善活動の推進、エネルギー消費量の可視化と精査によるコスト削減、製品ライフサイクルと紐付けたトレーサビリティの強化など、データの高度な活用は、新たな価値創出につながります」と村松氏は述べて、具体的な事例を2つ紹介した。

製造業A社では、生産設備の制御・監視と、連邦食品医薬品化粧品法の第21条第11章(通称、Part11)対応のために、MDITのデータ分析フレームワーク「AnalyticMart」を活用している。Part11は、FDA(米国食品医薬品局)に届出・承認申請が必要な書面の電子保存を認める一方で、電子記録の改ざん防止やデータの迅速な検索性確保をメーカー側に義務付ける法令である。その要件を満たすため、大量のデータを高レートで圧縮し、一般のRDBよりも高速に集計・検索可能なAnalyticMartを用いて、データの一元管理を実現した。各種ログデータを統合することで、法令対応だけでなく、設備稼働率の向上や製造品質の改善にも役立てることが可能なシステムとなった。

AnalyticMartは、表をカラム(列)単位で圧縮・分割保存し、必要なカラムのみを並列処理で読み出す独自アーキテクチャを有する。加えて、データを高レート圧縮することで、ディスクI/Oのボトルネックを解消している。これらの相乗効果が、数億件のデータを秒単位で処理する高速化を現実のものにしているのである。

「キャッシュやインデックスを使わないため、メモリーやサーバーコストも抑えられます。コスト意識の高い製造業から多くの引き合いがあります」と村松氏は述べた。

続けて村松氏は、改正省エネ法に対応した自社オフィスの事例を紹介した。各事業拠点に設置された分電盤、空調、OA機器、照明など149カ所のデータを毎時計測・収集し、そのデータ群を一覧表示するダッシュボード機能を備えた「AnalyticMart for MELGREEN」で「見える化」を図った。

「事業部門別の実績データが可視化され、それに基づいてエネルギー消費量が増加した際の原因究明のほか、全社最適での省エネ施策を立案できるようになりました。自分の所属する部門のエネルギー消費量を他の部門のそれと比較でき、また、省エネ活動の効果を検証可能にすることで社員の省エネ意識を高める啓蒙効果が生まれています」と村松氏。法令対応をきっかけに、部門横断的な業務改革を推進できる点をアピールした。

 

 

以上の2講演に続いて、各テーブルでのグループ討議と会場全体での質疑応答が行われた。参加者はディスカッションを通じて交流を深めた。参加後のアンケートには、「初参加だが、たいへん有意義だった。今後も参加したい」といった記述もあった。定例セミナーは、JDMC非会員の方も参加できる(初回のみ)。気軽に足を運び、その活発な論議を体験して頂きたい。

 

(文責・柏崎吉一/エクリュ)



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