第27回JDMC定例セミナー報告

2015-02-15

2014年9月24日、第27回JDMC定例セミナーが大井町JT研修センターにて催された。1つ目の講演では、日本オラクル株式会社 データベース事業統括製品戦略統括本部プロダクトマーケティング本部Cloud & Big Data推進部部長の佐藤裕之氏が登壇。先ごろリリースしたOracle Database In-Memoryが分析業務やアプリケーション開発にもたらすインパクトに触れた。
2つ目の講演では、横河電機株式会社 コーポレート本部YGSP部の吉田政幸氏が登壇。グループ各社に分散していた出荷実績DBを統合したプロジェクトを振り返り、同社が展開する今後のグローバルビジネスを支えていく決意と展望を示した。

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■講演 1
「トランザクション処理とオペレーショナルBIを両立する
『Oracle Database In-Memory』、その必然性と仕組み」

日本オラクル株式会社
データベース事業統括製品戦略統括本部
プロダクトマーケティング本部Cloud & Big Data推進部
部長
佐藤裕之氏

 

日本オラクル株式会社は、革新的なインメモリ技術により「Oracle Database 12c」の処理性能を飛躍的に向上させる新製品「Oracle Database In-Memory(以下、ODIM)」の国内提供を2014年7月23日に開始した。「現在、メモリの価格下落・高速化を背景に、サーバー環境も大きく変化しています。当社では1筐体に32TBのメモリを搭載可能な新世代アーキテクチャのサーバー製品を提供していますが、こうした新世代のハードウェアを有効活用しよう、大量データ分析を高速で実行しようというコンセプトで開発されたのが、ODIMです」(佐藤氏)。
ODIMを導入することで、バッチ処理を日次単位からリアルタイムへと短サイクル化し、分析結果をビジネスに即座に反映できる。月次バッチの廃止するなどオペレーションの改善が可能になると、佐藤氏は説明した。

ODIMではなく、一般のデータベース(DB)ではテーブルの作成時点で、「分析系の用途にはカラム型(列形式)テーブルを、OLTPすなわちトランザクション系にはロー型(行形式)テーブルを」とそれぞれ用意する必要がある。分析系ではOLTP側からETLツールなど使ってデータを選別する前処理を伴う。一方、ODIMでは用途に応じて処理段階でカラム型/ロー型を選択することが可能だ。つまり、データ構造は1つだが、メモリ上で2種類のテーブルを自動的に生成してくれるので、必要に応じてアクセスすればよい。同社はこれを「デュアル・フォーマット」と呼んでいる。
カラム形式の表が追加といっても、あくまでメモリ上に当該領域が追加されるだけなので、ハードディスクに保存する場合と異なり、追加のストレージコストは発生しない。ストレージの同期にまつわる問題も回避される。

ODIMを使用するにあたって、既存のオラクルのDB資産やアプリケーションの構成を変える必要はない。「スキャンや結合、集計などの処理を行うための最先端アルゴリズムが実装されています。アルゴリズムの最適化によりCPUのコアごとに1秒間に数10億レコードをスキャンすることが可能です。しかも事前にSQLを書き換える必要がありません」(佐藤氏)

導入ステップもシンプルだ。ODIMを有効化するためにDB管理者がすることはインメモリ列のサイズを設定し、メモリに入れる表を特定するだけだ。メモリ上にデータを配置するポイントは、頻繁にアクセスされるデータを見極め、不要なデータを除くことである。この見極めを支援するために、リコメンドツールOracle In-Memory Advisorをリリースするという。「順にデータをメモリ上へ配置し、必要度の高いものをランキングしてリコメンドする仕掛けです。取捨選択の仕方次第では、パフォーマンスに2倍〜3倍の違いが生まれることもあります」(佐藤氏)
Oracle Enterprise Managerなどの管理ツールを使えば、インメモリ上のDB情報をヒートマップなどで可視化することができる。

「ODIMで処理を高速化することでDWHを作らずに分析ができるようになります。SQLを単純に投げるだけで済むのなら、実装面でも開発者はロジックの検討などに注力できるようになります。企業におけるアプリケーション開発のパラダイムを大きくシフトするはずです」と広がる可能性を示唆して、佐藤氏は講演を終えた。

 

 

■講演2
グローバルシステム構築において、
過去のデータ資産を生かした取り組みの実際

横河電機株式会社
コーポレート本部YGSP部
吉田政幸氏

 

横河電機株式会社は、2011年に中期経営計画「Evolution2015」を策定した。そこに掲げられたのは、制御事業の成長と財務体質の健全化という2本柱である。連動して、計画の実現に向けたグローバルIT基本戦略を整備した。情報システム部は、「海外ビジネスの成長への貢献」「グローバル組織化への支援」「ビジネスインフラとして」という3つの視点で対応することを確かめた。

かつて同社の代名詞であった測定器ビジネスは子会社へ移管し、現在、同社はソリューション・サービスに軸足を移している。2001年に生産子会社5社を統合し、本社で利用する生産系基幹システム(PLASMA)にシステム基盤を一本化した。吉田氏は「その後、グローバル規模でのビジネスを視野に入れ、SAP ERPによるグループのシステム基盤の再構築を進めました。とはいえ、SAPの導入イコール、グローバルのデータを串刺しで見られるわけではありません。すべての課題解決にSAPを使うことは困難と考え、SAPおよび旧PLASMAのDBに蓄えられたデータを出荷視点で整理しようと、システムの見直しを検討しました」と説明した。

出荷実績データベースをビジネス側で活用する必要性は、同社が受注拡大を図るためにも不可欠だった。実はグローバルIT基本戦略を策定する前、同社の製品(転売品、OEMを含む)のグローバルでの出荷状況が見えず、顧客のシステムに対して最適なリプレース提案ができないという悩みを抱えていた。また、顧客満足度向上の面では、長寿命製品のリピート対応などにおけるサービス品質低下、リコール対応における顧客側の負担増などが指摘されるようになっていた。
「従来は、権限によって拠点ごとに見られるデータが限られていました。横串を通して出荷実績を社内の担当者や代理店が見る術がなかったのです」(吉田氏)。

情報システム部では、要望をまとめ、新システムでは既存のDBを統合した出荷実績管理DBを構築。ポータルサイトを通じて社内のユーザーに提供する形にした。ただし、与えられた開発期間は約6カ月。短期間で現場にリリースするため、割り切ってコストミニマムでリリースすることを目指した。ユーザー要件は、品質保証部が求める『最低限これだけは譲れない』という水準を満たすことを目指した。

そして、システムはカットオーバーの日を迎え、フェーズ1にあたる基本機能の構築は完了。企業グループ内での活用を進めるため、主要拠点の出荷実績を取り込んでいる。出荷実績管理DBに蓄積されるデータの量は約8,000万レコード。出荷実績データを管理するのは品質保証部である。DBを統合した結果、品質トレーサビリティにおける網羅性の確保や、過去の出荷実績の蓄積、営業シリアル番号が必要な各種申請、試験成績表の後手配の効率化などが進んだ。

その後、開発プロジェクトのフェーズ2では活用対象を代理店に、さらにフェーズ3では顧客まで出荷実績管理DBの利用範囲を拡大している。顧客は現在リリースされているプロダクト会員向けサイトProduct Portalを介して製品シリアルナンバーをキーにDBにアクセスできる環境を整えている。2015年1月以降はフェーズ4として、活用サービスの拡充などビジネス活用の深化を図る考えだ。

その先のフェーズも視野に入る。具体的には海外拠点への出荷実績DB公開を視野に入れている。
「出荷実績管理DBを構築する以前、グローバルで最も苦労したのは、年に1回行う各Region HQを代表するIT責任者会議でせっかく問題を提起してもその後、情報を共有する機会がなく、問題がそのまま放置されてしまうケースがありました。各拠点で同じような問題を繰り返さないため、今回の導入を機に、情報を逐次共有できるように変更したいと考えています」(吉田氏)

ただ、海外拠点における情報セキュリティの確保は容易ではない。「海外では、従業員がハードディスクに情報を落としたその次の日に辞めてしまう事例を目の当たりする事もありました。適切な権限付与を行い、情報漏洩しない仕組み・運用を定義してガバナンスを効かせたい」と吉田氏は述べた。

今後の展望はあと2つある。その1つが、システム連携の強化だ。生産情報、サービス情報(保守情報)、エンジニアリング情報(機器の設定)の見える化である。「横河グローバルの出荷実績は、BIレポートや市場動向とリンクさせ、今までと違った視点のデータ分析、活用ができる余地があります。事業部と会話しながら具現化を検討していきたいと考えています」(吉田氏)

吉田氏は「さらにインフラ基盤整備を進め、可用性向上・パフォーマンス向上のためオンプレミスからAmazon Web Service(AWS)へ移行を進めています。AWS移行により、安価なDR対応、大容量データの保管、そしてキャッシュサーバーの活用によるパフォーマンス向上を期待しています」と将来像を描いた。

製造業にとどまらずビジネスのグローバル化が進む。ICTにおける技術的なパラダイムシフトやクラウドなどのサービス化を利用しながら、各拠点に分散するデータをいかに集約・統合していくか。データガバナンスの観点からも待ったなしの段階を迎えている。

 

(文責・大倉愛子)



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