今年で3年目となる2020/11/24(火)に横浜国立大学 都市科学部2年生向けにデータガバナンスの講義内容について、『データマネジメントの基礎と価値』研究会 サブリーダーの日本電気株式会社 谷口よりレポートする。
1.講義概要
学生(初学者)向けに、「データガバナンス」や「データマネジメント」をより分かりやすく解説していくために、データに纏わる問題事例やデータ利活用事例を織り交ぜて解説しています。
タイトル:『データガバナンス』
2020/11/24(火) 16:15~17:45(90分)
司会: 東京大学エコノミックコンサルティング 佐藤 三史郎氏
講義内容 | 講師 |
1.日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC) 2.本日のテーマと目的 3.データに関連した最近の出来事 |
ビジネスエンジニアリング 加藤 俊 氏 |
4.データの基本 | 富士通 黒瀬 達也 氏 |
5.データガバナンス、理解度チェック 6.まとめ 7.JDMCカンファレンスのご紹介 |
日本電気 谷口 直行 氏 |
1章 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)
JDMCの紹介と、研究会の出版物であるデータマネジメント概説書、ケーススタディを紹介。
2章 本日のテーマと目的
イントロダクションで、講義受講前に学生の皆さんへ、「データ」「データを活用」をどのように理解しているかを書き留めてもらう(演習)。
3章 データに関連した最近の出来事
・横浜市水道局19年間誤請求問題 ・リクナビ 内定辞退率販売問題 ・新型コロナウイルス 8都府県で国と異なる基準で集計 ・ユニクロの「レジ待ち行列」を解消したRFIDタグの威力 ・電子政府ランキング1位のデンマーク |
データに関連する、良い事例・悪い事例を5点ほど例示。データ視点や、データガバナンス視点で講師の経験を踏まえてポイントを紹介
4章 データの基本
・データとは? ・データ活用プロセス ・データは生まれて消えるもの ・データの種類 ・なぜ、データに注目するのか ・【参考】横浜DeNAベイスターズ社の観客動員数向上プログラム ・データに関する法令制度 ・データを活用する上でのポイント |
「データ」と「データマネジメント」、「データガバナンス」の基礎知識の学習のため、
データそのものの定義について、データ活用プロセス(DIKWモデル/DIKWピラミッド)や、データは生まれて消えるもの(データライフサイクル)などを使い解説。
データに注目される理由について、データ利活用が進む中で広がるデータの種類と、Sociery 5.0の世界で世の中をより良くするための活動として、テクノロジーとともに、変化してきていることについて事例紹介を交え解説。その一方で、データに対する法令制度、社会ルールなどを通したコンプライアンスの重要性を説明。
最後に、データマネジメント概説書(JDMC版)より、データマネジメント活動と、その活動を支える3ポイントを解説。
①.目的に合った品質データを備えたデータ
②.データ利活用基盤と取り組み
③.データガバナンス
5章 データガバナンス、理解度チェック
三権分立(立法・行政・司法)を例に、データガバナンスの解説するととともに、3章で例示した5事例を利用したデータガバナンスの理解度と、学生自身に考えて書き留めてもらう(演習)。演習に対しての事例解説と回答例を紹介。
6章 まとめ
2章の問いかけに対する解説と、本日の講義のまとめ。講義後に「データ」「データを活用」について、学生自身の変化があったかどうかを再度書き留めてもらう(演習)。
7章 JDMCカンファレンスのご紹介
次回(2021年3月4日)のオンラインカンファレンスの紹介。
2.学生の評価(アンケート結果)
2020年度のアンケート結果:
【フリー記述で頂いたコメントより】
(赤字:興味を持った感想 青字:要望)
- データということに深く理解できるきっかけになってよかった。
- 今までデータ分析よりデータの精度のほうが大事であると聞いただけで正直よくわからなかったんですが、今回の授業で少しながら理解することができたと思いました。
- データやプログラミングン関して何も知らなかったですが、今回の授業で興味を持つことができました。本当にありがとうございます。役に立ちました。
- 身近なデータから話を広げて行ってくださったので、とても理解がスムーズにできました。ありがとうございました。機会があればデータマネジメントやデータクレンジングの具体的な手法についても聞いてみたいです。
- リクナビ内定辞退率販売問題などの実際の事例を見て、初めてデータマネジメント、ガバナンスの問題を実感できました。
- 今日の講義ありがとうございました。膨大なデータがある時代において、どうやってこのような膨大なデータを活用することが重要になります。
初めて情報処理の授業を受けていますが、データに関する知識がたくさん学びました。膨大なデータに対して、データマネジメントの重要性も感じています。 - 今日の授業を通じて、デーアのマネジメント、ガバナンスについていろいろ勉強になりました。R言語は多くの言語のひとつであり、一つのデータをまとめる方法の一つであるが、もし講義ではどのようにR言語をデータマネジメント、ガバナンスで利用されるかについてを話してくれるともっと嬉しいです。
過去3年間のアンケート: (2018年:64件、2019年:29件、2020年:7件)
対象受講者が減っているが、アンケート結果の理解度、満足度などは年々向上している。
2020年はアンケートでより深い講義内容を求めるコメントも上がっており、データマネジメントやデータガバナンスに対する学生の関心は年々高くなっていると推測できる。
3.これまでの経緯と振り返り(今後に向けて)
これまでの経緯:
本講義の始まりは、2018年度に横浜国立大学 徐 浩源(Xu Haoyuan)教授から「リスク分析のための情報処理A」の中の1枠で、『実際にデータを取り扱っている企業にてどのようなリスクや概念を持たれているか?』 社会人から学生に話をして欲しいというご依頼をJDMC事務局で受け取ったところから始まりました。
「リスク分析のための情報処理A」のシラバス: 1.情報化社会のリスクマネージメント 2.データの構造・蓄積・保管 3.ビックデータの基礎知識 4.データ分析アプローチ1 5.データ分析アプローチ2 6.リスク分析と応用 7.データガバナンス 8.定期試験 |
講義資料は、データマネジメント概説書(JDMC版)を執筆した、JDMC 『データマネジメントの基礎と価値』研究会の有志メンバー中心に、学生(初学者)向けにデータマネジメント概説書を噛み砕き、事例を交えた形で講義資料を準備したものです。
年を重ねるごとに、受講した学生コメントや、研究会メンバーとの協議も重ね、初学者向けの紹介資料としての整理を終えています。
・初年度(2018年):
学生(初学者)向けに、事例を交えつつ講義資料の中でデータマネジメントとデータガバナンスの解説に初チャレンジ。講師×2名体制で挑む。
・2年目(2019年):
前回講義の結果と徐先生からの要望などを踏まえて改善を実施。講師×3名体制へ変更。
– 事例や講義の中で都市科学部に関連するSociery 5.0などを含んでほしい
– 最新事例化を進めるとともに、事例を絞り、より学生に近い事例に厳選
– 社会的にデータリスクが高まる中で法令制度に関する情報を盛り込む
・3年目(2020年):
COVID-19の影響を考慮し、オンライン開催でおこなえるように見直しするとともに、後々に再利用できるよう、JDMCスタジオで事前の動画収録へチャレンジ。 講義当日は、司会者中心に動画で講義をおこない、FAQは講師メンバーで回答。バックアップとして、講義資料の作成へ協力した有志メンバーもリモート参加。
なお、2020年度の講義結果を踏まえて、横浜国立大学向けの資料はデータマネジメントやデータガバナンスをもう一歩踏み込んだ要素を入れ込もうと考えています。
今後に向けて:
来年度の横浜国立大学向けの講義で1サイクル目が完了となる。継続的に行っていくべきかは、横国大 徐教授とも相談の上で調整していくことになるが、研究会メンバーのスキルアップや、貴重な学生との意見交換ができる場となるため、継続できるよう進めていきたい。また、今回のオンライン開催で、動画を利用したコンテンツ準備、配信が可能であることが分かった。研究会メンバーの負担は増えるかもしれないが、同様の課題やニーズがある大学や企業向けの教材として再利用ができる点もあるので、今後、オンライン教材とできるように講義資料を整えることも考慮しておきたい。
最後に、今回の講義開催に向けて、ご多忙の中、全面的に協力いただいたJDMC事務局 臼井さん、川中さん、また、テーマ2研究会の有志メンバーに対して謝辞を申し上げます。
【制作/支援】
資料製作活動メンバー | 秋田 和之(NECソリューションイノベータ株式会社) 加藤 俊(ビジネスエンジニアリング株式会社) 佐藤 三史郎(東京大学エコノミックコンサルティング株式会社) 谷口 直行(日本電気株式会社) 西村 正義(エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社) 岩渕 史彦(日立製作所) 早川 和子(富士通株式会社) 黒瀬 達也(富士通株式会社) 寺園 重隆(株式会社クラウディオ) |
講師・ファシリテータ | 【講師】 加藤 俊(ビジネスエンジニアリング株式会社) 黒瀬 達也(富士通株式会社) 谷口 直行(日本電気株式会社) 【ファシリテータ】 佐藤 三史郎(東京大学エコノミックコンサルティング株式会社) |
協力 | 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)事務局 (臼井 琴美、川中 健(SAPジャパン株式会社)) JDMC研究会企画部会 JDMCテーマ2『データマネジメントの基礎と価値』研究会 |
以上