第24回定例セミナー報告

2015-02-15

◆講演1
契約管理から顧客管理へ
顧客統合基盤はこう構築し活用する

◆講演2
イノベーションを加速する
世界初のデータベース高速化技術の実際

◆講演1
契約管理から顧客管理へ
顧客統合基盤はこう構築し活用する

後藤聖央氏
ソニー生命保険株式会社
IT戦略本部 ISサービス推進部 統括部長

光保雅俊氏
ソニー生命保険株式会社
同部 ISサービス運用課

ソニー生命保険では、ライフプランナーが顧客に最適なプランを提案するオーダーメイド型商品を提供している。万一の際、誰のために保険をどう活用するのか。家族構成や勤務先、趣味、住環境の嗜好、将来の展望まで幅広い情報をヒアリングする。顧客情報はライフイベントやニーズの変化に応じて更新されていく。加入後におけるデータのメンテナンスを含むアフターフォローは保全業務と呼ばれる。同社の基幹業務の一つに位置づけられる業務だ。この業務を顧客統合基盤が支えている。サービスごとに機能をモジュール化し、業容に併せた運用性やサービス拡充の柔軟性を高めているのが特徴だ。
「保全業務は従来、契約ごとに行われていた。しかし、複数の保険契約を締結するお客様が多く、情報管理の仕組みを契約単位から顧客単位へ切り替えた」と後藤氏は説明する。切り替えは経営計画に基づき2009年頃までに完了した。
後藤氏は、新たな保全業務体制に移行してからの取り組みについて説明した。現在、顧客はおよそ400万人を数える。生命保険などを契約する顧客の情報は、担当するライフプランナーが変わっても一般に数年~数十年にわたって引き継がれる。
注意を要するのが、同一人物の識別だ。氏名や住所における新旧字体の混同、表記ミス、改姓前の旧情報などが残っていると別人のように見えてしまうことがある。手続き漏れのほか、通知物が現住所に届かないといったクレームのもとになる。
それに対し、同一顧客である可能性の高低をスコアリングで可視化するようにした。確認の必要性の高い顧客については担当するライフプランナーが直接訪問して現況を確かめる。こうした確認作業は、保全作業の進捗状況や訪問履歴情報をライフプランナーに自動的に通知する独自の工程進捗管理システムを活用している。現場の注意を常に喚起しているのだ。
「データの精度を支えているのは現場の地道な活動だ。経営層にも、お客様と日々接する活動の重要性を理解してもらい、システム開発などへの投資に対して協力を取り付けた」と後藤氏は述べる。
名寄せについては、同社では国土地理協会の住所辞書を備えたデータクレンジング・名寄せツール「TRILLIUM(トリリアム)」を活用している。導入では同製品の販売を取り扱うアグレックス社の支援を受けた。
導入以前は、400万人の名寄せ情報のうち2%に相当する8万人が名寄せできていなかったが、導入後は1%まで減らせた。顧客情報の確認に要する時間が短縮し、サービス提供の遅延が改善された。残りの1%(約4万人)についても現在、ライフプランナーや保険代理店などの現場と協力して改善を図っている。
名寄せのキーに選んだのは、氏名、性別、生年月日、住所(連絡先)だ。性別と生年月日は生保商品の料率などを決める上で必須の情報だからだ。この4つがすべて揃ったときに同一人物であると見なしている。連絡先では固定電話に変わり、広く普及するメールアドレスが、名寄せのキーの一つとして活用されている。
他方、同社では契約時の入力におけるペーパーレス化も進めている。従来、顧客に対して紙で行っていた氏名、性別、生年月日、住所などの情報の入力プロセスを、ライフプランナーが携行するペンタブレットを用いた入力・文字変換方式に変更したのだ。データ入力における誤記や表記ミスの減少につながっている。
「顧客情報を一元管理することでライフプランナーの育成や担当者間での業務の引き継ぎの円滑化のほか、見込み客への先手を打った提案活動、保険商品の開発などにメリットが得られている」と光保氏は述べた。

 

 

◆講演2
イノベーションを加速する
世界初のデータベース高速化技術の実際

石川太一氏

株式会社日立製作所
情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部開発統括本部
ソフトウェア開発本部 ビッグデータソリューション部 主任技師

東京大学の喜連川優教授が、「最先端研究開発支援プログラム(FIRST)」の一環で研究開発を進めている超高速データベースエンジン。この中核となる理論が、非順序実行原理である。日立製作所が製品化した高速データアクセス基盤「Hitachi Advanced Data Binderプラットフォーム」はこの実行原理の実装した、市場で唯一の製品だ。同社が喜連川教授と行った共同開発の成果が集約されている。
同原理の最大の特徴は、データベース(DB)サーバーにおいて、1つのSQLクエリを複数のスレッドに割り付けて、並列で処理する点である。スレッドでの処理が早く終わったクエリの実行結果から、順不同で出力する。分解されたクエリがどのような順序で処理されるかは非決定的だが、既存の順序実行型と比較すると、遅い処理を待たずに済む分、遥かに処理が速い。つまり、大容量のメモリーやマルチコアなどのハードウェアの性能を最大限に引き出しているのだ。
さらに、メモリーの処理速度に比べて時間を要するストレージのHDD性能(ディスクI/O)のボトルネックも解消した。
「従来のデータベースエンジンでは、ディスクI/Oの完了待ち時間がCPUの実行時間を多く占めていたため、ハードウェアが有する能力を必ずしも十分に引き出せなかった。それに対して、この超高速データベースエンジンは、非順序でスレッドを並列処理することで、I/O待ち時間を短縮することができる。ディスクI/Oがボトルネックにならない仕組みを実現した」と石川氏は述べた。初期仕様では4コアマシンを用いた場合、512疑似スレッド(1コアあたり128擬似スレッド)まで実行できる。
意思決定支援システムやデータウェアハウス(以下、DWH)分野におけるDBシステムの検索や抽出処理性能の指標であるTPC-Hでは、「100TBクラス」で同製品が他社製品を大きく突き放す新記録を登録している。
得意とするのは集合演算処理だ。8年分相当の66億件の売上情報(トランザクションデータ)からなる7つの表(テーブル)を代表的なSQLの句(JOIN/GROUP BY/ORDER BYなど)で操作するのに要した時間は、平均して4.7秒程度だった。
ほかにも、同プラットフォームを活用して、ストレージI/Oが足かせとなって40分費やしていた重いクエリ処理を22秒で完了したケース、13.5時間かかっていたバッチ処理が7.5分に短縮した事例、165個あったデータマートを6個に削減できた事例などを石川氏は紹介した。
「データマートをまったくゼロにするのではなく、少し残すとパフォーマンスが高まるケースがある。データマートの配置を考えつつ、セントラルDWHを設計するとよいだろう」と石川氏はパフォーマンスを高める構築のポイントを述べた。

顧客データベースは常に変化していく。そのデータの信頼性はシステムにより効率化できるところもあるが、システムを導入、構築すれば終わりではない。最後の砦は現場の終わりなきメンテナンスだ。そこに経営層の理解が欠かせない。品質を高めた上で、最新の技術を生かした分析ツールも初めて生きてくる。

 

(文責・柏崎吉一/エクリュ)



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