第5回:痛感したデータマネジメントへの意識の“日米格差”

2012-12-25

(MDM&DG SummitNYC参加報告)
――JDMC運営委員/伊阪コンサルティング事務所 代表 伊阪哲雄氏

毎年ニューヨークで開催される「MDM & Data Governance Summit 2012」から今年も招待を受け、参加した。この時期のNYCは少々寒いが何とも空気がすがすがしく、オペラ・シーズンも始まり、まさしく映画『オータム・イン・ニューヨーク』に出てくるシーンの時期で、セントラルパークを歩くとリチャード・ギア演じるウィル・キーンとウィノナ・ライダー演じるシャルロット・フィールディングに出会えそうな気分になる最高の季節である。

 

さて、同Summitは、データ統合とデータ・ガバナンス分野では世界最大規模のカンファレンスである。北米、欧州、アジアで年間延べ7~8回のシリーズで開催されるが、その中でもNYCは頂点的な存在で、今回で7年目を迎える。ちなみに、国内でも日経BP社の主催でこの3年ほど開催されている。

 

プログラムは http://www.information-management.com/conferences/1_17/

を参照されたい。データ統合の対象領域は「人間系:CDI(顧客データ統合)」と「製品系:PIM(製品情報管理)で、内容的には手段論としてのMDM(マスターデータ管理)とデータ管理の基盤となるデータ・ガバナンスを中核に、チュートリアル、適用と効果動向、先進事例、製品動向などの紹介や議論が2日半に渡り繰り広げられた。

 

なお、本Summitには日本からは筆者以外に、ユーザー企業1社とコンサル企業2社が参加した。延べ600名弱の参加者に対し、日本人7名。パーセンテージにして1%強であり、ITバブル期とその後のリーマンショック前までは、大方が視察という名の観光旅行であったとしても、最低3~5%はあったので、何とも寂しい限りである。

 

参加して筆者が強く感じたのは、“データマネジメントの本場”ではデータ・ガバナンスの現実的な事例と方法論の整備が一段と進み、同時にMDMに対する活用もすっかり成熟の域に達しているということだ。また主要ベンダー17社

http://www.information-management.com/conferences/mdmnewyork/sponsors.html

が出展し、自社のソフトウェア製品の優位性をアピールしていた(17社のうち日本でも展開しているのは4社にとどまる)。展示会場ではMDMパッケージやデータガバナンス機能に特化したパッケージが注目を集めていた。前者だと、例えば米Informaticaの新版9.5では、複数エントリ・ドメイン・サポート、データ・ガバナンス・コンソール、クラウドサポート、ヒューマンワークフロー機能拡張などがなされている。後者では、国内市場未参入だがベルギーのCollibraというベンダーがデータ・ガバナンスに特化したソフトウェアを展開しており、データ・ガバナンス市場の認知度や裾野の広がりを実感した。

 

ホットトピックであるビッグデータとデータ・ガバナンスの関わりについては、筆者の友人で最近IBMを退社し独立したSunil Soares氏がチュートリアルを披露したが、これが極めて示唆に富む内容だった。具体的には、従来は情報ガバナンスと業種・機能の2次元に加え、ビッグデータ・タイプの次元が追加され3次元で整理されたことが説明されたのだが、これは重要な視点で、構造化データ(多少の非構造も含む)視点から新機軸が提言されたわけで、今後さかんに議論されてしかるべき提案である。

 

本SummitのチェアマンであるAaron Zornes氏のセッション「Maximizing Business Outcomes – Master Data Governance to Unify BPM & MDM」によれば、MDMソフトウェア製品の市場規模は2012年、全世界で13億3200万ドルに達し、2015年には21億1000万ドルにまで伸張するという。SIサービス系の市場規模予測については言及されなかったが、筆者の見立てでは、SIサービス系の売上げはソフトウェア製品の約3~5倍なので、2012年に40億ドル、2015年で67億ドルに達するだろうと推定される。なお、国内市場規模は世界市場の概ね3から5%と言われており、US$1.00=\80換算で、2012年はソフトウェア製品50億円、SIサービス200億円、2015年にはソフトウェア製品80億円、SIサービス300億円と推定できる。JDMCでの日頃の議論で上がる声から察するに、まだまだ市場開拓努力の余地があり、努力不足は否めないだろう。

 

Aaron Zornes氏は、昨年から今年にかけては、以下のような動向が顕著であると述べていた。

○大企業、先進企業の間で参照マスターデータを含む人間系/製品系のデータ統合は当然となりつつある。

○大企業が複数ドメインを前提としたMDMの導入に本気で取り組み始めた。

○データ・ガバナンスとMDMの両方を併せて推進する企業が増えている。これらはビッグデータの活用に際しても重要な取り組みと認識されている。

 

要するに、データ・ガバナンスに基づくMDMの利活用は大手先進企業においては前提となっており、取り組みの成果が業績にも現れつつあるということだ。また、ビッグデータについても、流行のバズワードへの注目という初期のレベルからすでに脱し、データ・ガバナンス/MDMの推進と併せた実践的な取り組みへと移行しつつあり、国内の現状とのますますの乖離を痛切に感じた。

 

─ 伊阪哲雄氏プロフィール ──────────────────────

データマネジメントを専門とするITコンサルタント。1970年、大手コンピュータメーカーに入社して以来、一貫してデータモデリング/設計やデータクレンジング、データ統合、マスターデータ管理、データ・ガバナンス組織、人材育成に関わる支援を行ってきた。特に通信業界、医薬業界や、金融業界のデータマネジメントに詳しい。米国など海外の事情にも通じ、例えば米MDM Instituteが主催するカンファレンスには毎年欠かさず参加している。
e-mail: isaka@isaka.com



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