近年、企業におけるデータの価値が高まる中、効果的なデータマネジメントの重要性が増しています。しかし、多くの企業や担当者は「どこから手をつければいいのか」という課題に直面しています。そんな悩みを持つ方々のために、「データマネジメント座談会コミュニティ」が存在します。今回は、このコミュニティを運営するリーダー・サブリーダーの方々に、活動内容や参加する価値について語っていただきました。
<リーダー>
加藤 俊 ビジネスエンジニアリング データマネジメント部 ITコンサルタント
<サブリーダー>
岩渕 史彦 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 DXインテグレーション部 主幹技師
秋田 和之 日本電気 コーポレートIT戦略部門 グローバルKPF戦略統括部 データドリブン基盤グループ ディレクター
谷口 直行 日本電気 デジタルデリバリーサービスビジネスユニット 共通SIサービス事業部門 プラットフォームSIサービス統括部 サービス基盤SIグループ移行・LCPSIチーム・リーダー
早川 和子 富士通 グローバルコンサルティングBG Japan Unit Senior Consultant
小山 真美 エナリス IT統括本部 システム開発部 DX推進課
利害関係のない情報交換の場としての価値

加藤リーダー:このコミュニティは、データマネジメントに関して聞きたいことや悩みがある方、そして人の悩みを解決したい方に参加していただいています。特定のテーマを1年間突き詰めるというより、持ち込まれた悩みについて他のメンバーで解決案を出しながら進めています。悩みを持った人は解決策が得られますし、議論に参加した人も他社の事例や知見を聞いて勉強になるという、そういった場です。
私自身は、元々はJDMCの研究会の基礎と価値研究会に所属していたのですが、2年前に初級の方向けに切り離して、初学者の受け皿としての側面も持たせて分離運営している小規模コミュニティです。基本的には興味を持っている初学者がターゲットですね。
私がこのコミュニティに参加して最も違いを感じたのは、利害関係なく純粋に情報交換できる環境です。弊社では特定のMDM(マスターデータマネジメント)ソフトを使ってお客様に提案しているので、その枠内でしか解決策を考えられません。しかしJDMCでは、違う製品を使っている他のベンダーや、製品寄りではなくコンサルティングを主とする方々、DMに取り組むお客様と直接交流でき、自社での交流では触れられないような考え方に触れられます。
例えば早川さんは富士通で私とは同業他社ですが、そういった方々とも利害関係なく純粋に情報交換できるのがこの環境の魅力です。「そんな発想なかったな」と思うことが多く聞けるいい場所です。

岩渕氏:その通りですね。ベンダーは「自社のツールがすごい」という話ばかりしますが、コンサルタントとしては「まず論理的な構成やアーキテクチャがあって、その上で最適なものを選ぶ」というプロセスを重視しています。JDMCのようなコミュニティでは商談ではないので利害関係なくストレートに意見交換できます。
ユーザー企業の若い方は、会社でツールを調べてベンダーの営業に話を聞く事から始めますが、こういう場に来ればもっと違う切り口で情報が得られると思います。コンサルティングやベンダーへの相談は敷居が高く、要件や条件などを定義できていない段階では難しいものです。しかし、ここではまだフワッとしたレベルでも気軽に相談でき、専門的な立場の方から助言やヒントをもらえる場となっています。
新たな視点を得られる場としての価値

谷口氏:私は元々データマネジメント自体には興味がなく、トラブル対応のためにETLツールを使い始めただけでした。しかし、研究会に参加するうちに、アプリケーション開発者の目線とデータマネジメント専門家の目線の違いに気づき、面白さを感じるようになりました。
このコミュニティの良さは、年齢層に関係なくコミュニケーションが取れ、それぞれの経験からのアドバイスが自分の課題解決に役立つことです。閉じた環境だけでなく、別の輪も作って組み合わせることで自己成長につながります。

早川氏:本当にその通りですね。私がデータ周りでつまずいた経験としては、現職の前、人事部門に所属していた時に人事システムのデータ移行があります。「データの責任は誰にある」という難しい問題に直面し、システム間のロジックの違いを理解した上でデータ移行と検証作業に取り組みました。
その後、コンサル業務を通じてデータモデルの知識を得て、「この知識が当時あれば仕事がもっと楽だった」と気づきました。このデータ移行の他にも実際にデータを活用していた経験があるので、お客様との会話もスムーズになりました。

秋田氏:私も同感です。私はSAP業務コンサルをやりながらグループ会社・社内システムを担当してきたので、社内政治に長けています。そういった社内の立ち回り方についてもアドバイスできますし、営業から経理までEnd to Endで業務を把握し、データという共通言語で役職に関係なく話せる経験も共有できます。
実践的な課題解決と知見の価

小山氏:私は2020年に初めてこのコミュニティに参加しました。当時はユーザー部門からの不評でデータマネジメントがうまくいかず困っていたのですが、JDMCで相談したところ、わずか半年で会社のデータ環境が改善されました。それ以降も定期的に相談を持ち込み、データ連携基盤が着実に進化しています。
2022年のJDMCライトニングトークで発表した5つの目標のうち、すでに4つを達成できました。「事業部門との連携強化」や「マイクロサービス環境でのデータマネジメント」などの課題も解決し、長年手付かずだったレガシーシステムについても来年度予算を獲得できました。
加藤リーダー:小山さんの事例は、まさにこのコミュニティの価値を体現していますね。特定の製品や特定ベンダーの中では、その製品でできないことは考えもしませんし、考えても解決がないので除外してしまいます。また、要件定義が終わった後に参画することもあるので、「そもそもここは変えた方がいいのでは?」と思っても言えないこともあります。そういった本質的な疑問を「私はこう思うのですが、どうですか?」と確認できるのは、目の前の仕事ではすぐに役立たなくても、自分の経験として身につけられるので非常に有益です。
秋田氏:製品の特徴や各社製品の違い、実際の強み弱みなど、なかなか聞けない情報も、ここなら信頼できる人から得られますし、あくまでコミュニティの相談として、「この人に相談するといいよ」という紹介も可能です。
データマネジメントの価値と今後の展望
谷口氏:このような成功体験が広がることで、データマネジメントの価値がより多くの企業に理解されていくと思います。アプリケーションやコードのエンジニアリングは長い歴史がありますが、データという切り口はまだ新しく、その情報は世の中の進展からすると少し遅れています。インフラやアプリケーションのモダナイゼーションは進んでいますが、データ自体の新しい方法論や取り組みはまだ見えてこない状況です。
過去の技術負債を抱えたシステムではデータの取り扱いが特に難しいですが、このコミュニティではそういった課題についても検討できます。若い方々の新鮮な視点も取り入れながら、共に成長していける場だと思っています。
小山氏:特に価値があったのは『仲間をつくれ!』や『SmallStart&SmallSuccess』といったアドバイスです。これに従って分析課の副部長と小さなプロトタイプ開発を始めたところ、ユーザー部門から高評価を得て、経営層への報告にもつながり、全社的なデータ利活用へと発展しました。このコミュニティのおかげで多くの成果が出ており、今度は私も他の方々のサポートに貢献していきたいと思います。
早川氏:データの世界は、業務改善と違ってTo-Beが見えない中での試行錯誤が必要です。お客様自身もどう進めればいいか分からないことが多いので、そういった悩みに対して様々な視点からのアプローチを知れるのがこのコミュニティの魅力だと思います。
加藤リーダー:このコミュニティの魅力はいくつかあります。まず、ベンダーや企業の垣根を超えた利害関係のない情報交換ができること。次に、各メンバーの多様な経験からくる実践的なアドバイスが得られること。また、社内では得られない多角的な視点から問題解決ができることも大きな特徴です。そして、データ専門家との人脈形成を通じた自己成長の機会が得られることも見逃せません。
データマネジメントって、プログラミングなどと比べると体系的な入門情報が少ない分野なんです。だからこそ、このコミュニティは初学者の方にとって大きな助けになると思いますし、定期的に相談することで着実に成果を上げられます。データに関して悩みや疑問を抱えている方には、ぜひ気軽に相談していただきたいですね。今後もこのコミュニティが皆さんの成長に役立っていければと思います。
<関連ページ>
データマネジメント座談会コミュニティ
https://japan-dmc.org/?p=22990
JDMCコミュニティ一覧
https://japan-dmc.org/?page_id=23050