日本データマネージメント・コンソーシアム

レポート

報告:デジタルマーケティング研究会グループ、キックオフ説明会

(レポート 赤津素康)

デジタルマーケティングと言えば、BI/BA→ビッグデータ→AIと進展してきたビジネスデータ活用の先進地だ。にも拘わらず普及は不十分ではないかという認識から、「デジタルマーケティング」という名の研究グレープの下に3つの研究会が発足し、去る6月6日、合同のキックオフが開催された。説明会では、マーケティングにおけるデータ活用の前線で活躍されている3人のリーダより、活動の主旨・内容の紹介があり、質疑・議論が交われた。本キックオフには登録メンバー60名中58名が参加。メンバーの期待と意識の高さが感じられた。本稿ではリーダの紹介内容を中心に報告する。

 

デジタルマーケティングとは

冒頭、CRM研究会のリーダー逸見光次郎氏より、「デジタルマーケティング」という言葉に関して、リーダー3氏の共通認識が示された。曰く、デジタルマーケティングとは「マーケティングのデジタル化」であって、「デジタルマーケティング」という分野を扱うわけでは無い。マーケティングにデジタルが加わることで、次のような特徴をもったマーケティング活動を行うことになる。

・主観的定性的ではなく、客観的定量的な視点でのマーケティング活動
・「データを取って、毎日カイゼン」という形でのマーケティング活動
・製品やサービス軸ではなく顧客軸でのマーケティング活動

続いて各研究会の紹介があった。

 

1. CRM研究会

by 逸見光次郎(株式会社CaTラボ)

EC化率の向上や電子決済が拡大する話はあっても、小売市場や世帯平均所得の縮小し、子無し世帯は拡大し市場全体が縮小・変化している。商売はこの変化を捉えきれているのか、と逸見氏は問題を指摘。

いまやIDで顧客を把握できるデジタルの時代となった。この時代のマーケティングではID-POSに代表される大量のデータから顧客に響く仮説を見つけ、オムニチャネルと言われるように、あらゆる接点で顧客とつながる活動に結び付ける必要がある。特に、既存顧客のロイヤリティを高めることが、継続的な売上・利益の拡大のみならず親和性の高い新規顧客の拡大にも繋がると、その重要性を説いた。

本研究会は、マーケティングの中でもCRM(Customer Relationship Management)にフォーカスし、CRMの意識合わせから始まって実務フローを含むような具体的なフレームワークづくりに取り組むという。後半には、どこか1社を取り上げてフレームワークの適合性を検討する活動を実施する予定と説明した。 本研究会には現在36名がエントリしている。

 

2. マーケティングシステム活用研究会

by 石田麻琴(株式会社ECマーケティング人財育成)

今期で3期目を迎える研究会である。MA(Marketing Automation)にフォーカスしている。第1期では、何をもってMAの成功とするか、費用対効果をどの算出するかなど様々な課題を議論しながら、マーケティング思考に基づいたシステムやツールが運用出来る「MA検討フレームワーク」を作成した。第2期の昨年度は、MAツール実機を利用して「JDMCメルマガ会員募集」キャンペーンを展開。この結果、数百名に近いメルマガ会員を新規獲得し、第1期の成果物である「MA検討フレームワーク」の有効性を検証することができた。

今期の前半は、研究会テーマ2(データマネージメントの基礎と価値研究会)とタイアップして「人材育成プログラム」の開発に取り組む。このプログラムは、マーケティングにおけるデータ活用術を身に着けるための実践的プログラムで、「座学とワークショップ」で構成する。今秋に、本プログラムを、青山学院大学大学院の授業で実施する予定だ(全5回)。後半は、本プログラムを、企業研修にも使えるようブラッシュアップを図る。本研究会には現在29名がエントリしている。

 

3. AI・データ活用のためのコンプライアンス研究会

by  佐藤 市雄(SBIホールディングス 株式会社)

ビッグデータ、AI、DXとデータをビジネスに活用するのが当たり前の時代に突入しつつあり、そのコンプライアンスに大きな関心が寄せられている。関係する用語を挙げただけでも、個人情報保護法、GDPR、プラットフォーマー規制、データポータビリティ、忘れられる権利、データ流通と知財保護、人権とプロファイリング、AIの説明責任や倫理と枚挙に暇がない。こういったコンプライアンスへの理解は、顧客を扱うだけにマーケティング領域では特に重要であり、JDMCが先導して扱う必要がある。本研究会の発足の背景について、佐藤リーダがメンバーとして参加した特別討論会「情報資産の有効活用か、ノウハウの流出か!? AI/IoT時代のデータ オーナーシップ」を参照いただきたい。

話題が多岐に渡り現在進行形で未確定の領域であることから、今期の活動はフレームワークといった体系的な纏めでなく、課題整理を中心に活動する予定だ。題材を選定して自己学習をベースに共有し、法務の専門家も交えて議論を進める。最終的には、何らかの提言に結び付けたいと、リーダの考えが示された。現在20名がエントリしている。

 

紹介後、複数の研究会への参加の仕方や3つの研究会での情報共有といった議論があった。内容に踏み込んだ議論はこれからだが、今後の議論の深まりに期待したい。

 

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