第42回定例セミナー報告:データ活用したカスタマー・デュー・デリジェンスと、データ利用に関する契約ガイドライン

2018-12-25

(JDMC会員・SBIホールディングス 佐藤 市雄)

2018年12月17日開催の第42回定例セミナーは、SAPジャパン株式会社の会場をお借りし、「データの価値」をテーマとして、前半にカスタマー・デュー・デリジェンス(顧客確認:CDD)におけるデータ・AIの活用、後半に契約面からデータの権利をどう守るか、の2つのテーマで講演いただいた。広い会場に多くの方がお越しいただき、活発な質疑応答もあり、大盛況のうちに終了した。

 
講演1「データを活用したカスタマー・デュー・デリジェンスの強化」 
株式会社東京商工リサーチ
ソリューション開発部 課長 堀 雄介
ソリューション開発部 課長 三輪 治郎
 
現在、コンプライアンス分野に取り巻く状況は急激に変化してきている。アンチマネーロンダリングや安全保障貿易管理等の観点から、国際的枠組みや関連法規制がより厳格化されている。一方で、グローバルに拡大する現在のビジネス環境において、これらのコンプライアンス対応に充分なリソースを割くことと、ビジネスのスピードを上げることのバランスが難しくなってきている。

CDDとは、自社の取引先が誰かということを把握し、リスクを低減させる取り組みで、ビジネスを推進していく上で不可欠なプロセスである。具体的には、取引先を正確に特定し、その資本構成や実質的支配を把握し、制裁リストやPEPsのスクリーニングを実施して、取引リスクを把握することになる。

CDDを実施するためには、やはりデータがなによりも重要であり、Volume(量)、Veracity(正確性)、Velocity(迅速性)の3つの「V」に注目して取り組む必要がある。またビジネス拡大に伴い、プロセスをシステム化・自動化する必要がある。このような法令対応へのテクノロジーの応用分野をRegtechと呼ぶ。
 
RegtechによるCDDの具体的なソリューションの一例として、株式会社東京商工リサーチ三輪氏からIBMのAIであるWatsonと組み合わせた、金融犯罪防止ツール”IBM Financial Crimes with Watson”の紹介を頂いた。更に、JDMCのマーケティングシステム研究会のサブリーダーを務めている株式会社東京商工リサーチ堀氏からCDDに活用できるデータをAPI連携しマーケティング・オートメーションをはじめとする各種システムと連携するデモを紹介頂いた。
 
ビジネスと法令対応のバランスを取り、攻めのビジネスを行うためにもRegtechとデータの重要性を理解する良い機会となった。3つの「V」を意識したデータ活用によって、CDDはより高度化することが理解できた実践的内容だった。

 
 

講演2「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」
西村あさひ法律事務所 弁護士 福岡 真之介
 
AIの活用、開発案件が増加する中で、AIに関する法律問題が増加している。それに伴い経済産業省は、AIやデータの契約上の主な課題や論点契約のひな型を示した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を6月に発表した。

想定されてる典型的なAI技術の実用化のプロセスは、学習済みモデルの生成段階と生成された学習済みモデルの利用段階に分けられる。学習済みモデルは、推論プログラムと学習済みパラーメタの組み合わせである。その学習済みモデルに入力データを投入するとAI生成物が出力される。AI開発においてソフトウェアはOSS化されている場合が多く、コモディティ化が進んでおり、AIの性能の重要な決定要素はデータといえる。その意味で、AIの契約においてもデータについて非常に重要な要素となる。

データに関する法律問題の最大の特徴は、データが物理的特性を有さない無体物であるということである。一般的な感覚としては所有権や帰属が問題となる有体物に囲まれて日常生活を送っているので、データに所有権が無いということへの理解が薄いと言える。データは、契約などで利用条件を定め無い限りにおいて、アクセスできる人が自由に利用できてしまうという性質を有している。また著作権といった知的財産権で保護される場合は限定的であり、NDA等の法律的な保護と技術的に保護する必要がある。

AI開発については、探索的段階型開発モデルを提案している。従来のWF方式でのシステム開発では請負型の契約が多くあった。AI開発には短いスパンで目標を設定し、ステップ・バイ・ステップで契約を締結していくことで、当事者の認識の不一致を防止し、頓挫した場合の損害の回避することができる。AI技術は日進月歩で進化しているので、認識の不一致や契約で開発が止まることは望ましくない。

AIとデータの基本的な考え方、法律体系の紹介ではあったが、膨大な内容で1時間ではとても把握するのは困難であった。今回のセミナーをきっかけに、実務的な法律知識を勉強し、AI活用・開発をスムーズに実施できるようにしていこうと考えさせられる、大変に有意義なセミナーだった。

 

<参加者感想>
・AI特有の法律知識を得ることができた。今後、弊社で導入する際に生かしていきたい。
・法的なデータの扱いの基本が聞けて秀逸でした。
・欧州自動車OEMのSCMやモバイルアプリのベンダートラッキングにも使われているCDDのDUNSナンバーのことを知りました。
・AI法律問題全体について多くの情報を提供いただき大変感謝。今後の参考にします。
・パーソナルデータに特化せず広義でのAIデータの法規制について体系的にまとめられて非常にためになった。
・タイムリーな話題であり大変参考になりました。
・考え方だけではなく具体的なシナリオ展開や利用企業が行うべき技術的、運用的な対策など継続的なテーマとして講演いただければ有難いです。
・AI/データに関する契約や法律については、まとめて勉強する機会がなかったので、大変勉強になりました。 書籍も購入してより深く勉強したいです。
・ AI/データ編のガイドライン検討員の方のお話を直接伺えて、非常に有益でした。
・データ、データベースに関する法務的見解や解釈など、今後の商談時にヒントになりそう。
・実務に即した分かりやすく、実用的なもので、大変参考になりました。
・CDDが重要であるというのを理解できました。AIやデータ活用の法的問題について大変分かりやすく納得性が高かった。
・データの知財権など不明な点がクリアになり、かつガイドラインの説明も含まれており、有意義な講演であった。
・前半も後半も有意義な講演でした。
・データが無体物ということから導かれる特有の考え方はある程度理解していました。
・経済産業省AIガイドラインでは、文言上は明記されていない点やニュアンスについて、わかりやすく理解でき、法律実務的にとても有益な講演でした。
・この素晴らしい内容で、参加費が無料だということに驚きを感じます。
・いずれの情報も、知らなかった点が結構あったので有意義でした。
・前半の講演は具体的内容で、後半の講演は先進的な話題で、どちらも大変参考になりました。



※会員企業ロゴをランダムに表示しています。

 

 

Copyright© 2011-2017 JDMC All Rights Reserved.