【Vol.45】清水拓己氏「課題解決・意思決定におけるデータ分析者のあり方」

2017-03-10


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JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、リバイス合同会社の清水拓己さんです。
 

課題解決・意思決定におけるデータ分析者のあり方

 
(1)データマネジメントを取り巻く環境とデータ分析者

ご存知のとおり昨今、広義でのデータマネジメントおよびそれに携わる人々を取り巻く環境が大きく変化しています。ディープラーニング(深層学習)の登場により、AIの第3次ブームはすでにブームの域にとどまらず、我々生活者のライフスタイルそのものに変革をもたらし始めています。この分野で起こっていることは、どんなスピードでどんなことが実現されるのかの想像をはるかに超えるものになるでしょう。
 
また、今では、データ収集・分析から次に取るべきアクションの示唆までをマーケティングオートメーションにより実現できる環境が整っています。アトリビューションの手法・ツールは“カスタマージャーニー”をより精緻に詳細に分析し、企業の最適なマーケティングコスト配分を実現します。そのような現在の環境下、マーケティング関連、特にデータ分析者は当然、従来の知識、技術、仕事の仕方までもが大きく変容しており、その役割を明確にしたうえで、機械ではなしえない価値の提供が求められています。
 
しかしながら、多くの「分析」そのものがそうであるように、どんなインフラやシステム、ツールも、最適な使われ方、最適な伝え方、十分な説得力と共通認識をもたらすものでなければなりません。どんなに高価で高級なものでも、それらがもたらされなければ、単なる“おもちゃ”に過ぎないのです。このような環境になっているからこそ、今一度ビジネスにおけるデータ分析者のあり方、役割を再考してみたいと思います。
 
(2)「目的」ではなく「手段」としてのデータ分析

そもそもデータ分析とは何のために行うものでしょうか?
「大量のビックデータがあるから、何かに使えないか?」「当社にあるこれだけのデータから、何か分かるだろうか?」「相手を説得したいからデータを使って、有利な情報を集めてほしい」――などと自身が考えたり会社の上司に言われたりした経験はないでしょうか。しかしながら、これではデータ分析は分析そのものが「目的」になってしまいます。
 
本来、企業活動とは最適な顧客に最適な価値を提供することによって自らも利益を得るものです。したがって、あらゆる場面における課題の解決や多くの意思決定を行い他社では生み出せない価値を創造するというのが正しい筋道です。いまさらDIKWモデルを引っ張り出すまでもなく、データ分析とは、それらの課題解決や意思決定のための「知識」を導き出し、人の手による「知恵」の創出を手助けする「手段」にほかなりません。
 
このことを取り違えると、満足なデータ分析が行えず、結果として大きな信用を失い、いずれ分析者であることを放棄しなければならない場面が訪れます。そうならないためには、データ分析者としての自分自身、またそれを取り巻く利害関係者に対し、どのように考え、行動すればよいのでしょうか。
 
(3)データ分析者と取り巻く利害関係者

上の問いへの答えを探るため、多くのデータ分析者が陥りがちな状況、環境を、私自身また他の分析者の立場・経験から検証します。
 
自分自身がよほど分析に対しての知識や理解がない上司や他部署・クライアント等利害関係者から見れば、「分析」はおよそ難解で、理解不能なものに見えるようです。「分析」そのものに過度の期待をしたり、もしくは反対に胡散臭いと感じ、初めから疑ってかかる、または無視し頼らず自身の経験のみで判断しようとする。その結果、分析者の示唆は通らず、報告する分析者本人も半ばあきらめ、時間をかけて探り当てた「知識」も十分に説明することなく会議を終えてしまう――こんな状況を皆さんも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
 
そうでないとすればその上司や職場・クライアントに対し先人たちが時間と労力をかけて環境・関係性を構築してきたものと思われます。しかし、「分析」が課題解決や意思決定に有効に活用されるためには、他責にせず分析者自らが多くの利害関係者に働きかけ、また対話し理解を得る活動を実行しなければなりませんし、それは分析者の責任でもあります。以下に、その具体的な方法を挙げてみます。
 
(4)データ分析を課題解決・意思決定に活用する方法

データ分析者として必要な分析能力はここでは割愛しますが、必要なことは「動く力」と「動かす力」です。「動く力」とはすなわち「課題とゴールを利害関係者とともに設定する力」で共通の課題とゴールをともに設定し分析者の役割分担を明確化することです。これを明確にしないままいかに最適な分析手法を用い最善の知識を発見できたところで誰の賛同も得られません。
 
また、「動かす力」とは「意思決定プロセスの明確化」のことで、得られた知識をいかに意思決定に活用するか、またその際の判断基準は何かを事前に関係者と決定しておくことで、言い換えれば「使わせる力」のことであり、判断基準なしに分析しても所謂「数字遊び」に終わってしまいます。
 
これは経営に近い立場の役職者に限ったことではなく、例えば同じマーケティングや分析の部署の上司からの業務の依頼においても必要であり、つまりは分析者すべてが意識すべきことだとも言えます。これらの能力、行動が当たり前のように使いこなせるようになった時、あなたはおそらく、正しい意味で意思決定者の1人となっているはずです。
 
以上のようなことをおざなりにしたまま、急速な変化にただ流され、安易にデータ分析者の本分を忘れた場当たり的な行動は自らを苦しめます。「人の手による価値の創造」の部分は当面は機械ではなく人間の役割でしょうから、そのためにデータ分析者として何が必要かを忘れず「手段」「武器」としてのデータ分析を実行されることを望みます。
 
最後に、本文に絡めて当社の事例をご紹介して締めくくりとさせていただきます。
 
(5)データ分析事例

当社は中古車販売店を中心にCRMを支援する活動を行っており、その業界は以下のような特徴があります。
 
A. 一般に事業規模が大きくなく、CRMの運用やデータ分析等に関するITスキルに乏しい
B. 買い手との情報の非対称性が大きく、「レモンの原理」がいまだに見られる業界であ
る。買い手の業界に対する不安、不満は根強い。
 
A.については、クライアント企業のKPIを設定(共通目標化)しBIツールのダッシュボードで可視化しました。これで、各社の経営層、店舗スタッフまでも弊社と同様の数字を常に把握できるようになりました。その数字を基に、課題を両社で設定し収益改善、業務改善に役立てています。また、BIツールではRFM分析やクラスター分析を基に、顧客の購買行動の変動も把握が可能であり、顧客単位の最適なアプローチ施策の立案も可能です。
 
B.については、中古車を購入した顧客に、スマートフォンアプリをダウンロードしてもらい、整備・点検、車検、買い替えなどのタイミングでアンケートやキャンペーンの情報を送るといった顧客フォローを行えるようにしました。それらのコミュニケーションを通じて顧客の業界に抱く不安、不満を払拭し安心して同じ店舗で買い替えができるるよう、努めています。
 
清水拓己(しみず たくみ)
リバイス合同会社 CDO(Chief Data Officer)。1967年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒。カルチュア・コンビニエンス・クラブなどでマーケティング、新規事業開発に従事。Tカード事業をはじめとした事業立ち上げをデータドリブンな見地から多数実施した実績を有する。
 
 

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