JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、富士通の水谷哲さんです。
MDMの4W1Hとパナマ文書
![](https://japan-dmc.org/wp-content/uploads/2023/02/download-21-1.jpg)
「マスタデータとは何か?」「MDM(マスタデータ管理)とは何か?」
「パナマ文書は知っているが、MDMに関係があるとは一体何のコジツケだ?」
……というようなことを書いてみたい。
もともとマスタデータというのは「べし・べからず集」をシステム化したものである。
注文を受けていいのは顧客マスタに載っている人だけ。
売っていいのは、商品マスタに載っているモノだけ。
お客様に納品していいのは、営業日マスタに載っている日だけ。
ある時、誰かが思いついた。
顧客マスタというのは、注文に使うだけではもったいない。
売上を見たり新規開拓に使ったりできるのではないか。いや使おう。
目指すは、お客様情報の詰まったデータベースだ。
この「情報の詰まったデータベース」こそが、新たなマスタデータである。
MDMとは、まず、もともとのマスタデータを新たに生まれ変わらせること。
さらに、生まれ変わったデータベースを正しく育てていくことである。
MDMの対象は、大きくWho, What, Where, When, Howの4W1Hに分けられる。
WhoはParty情報ともいい、人間系の情報を指す。
顧客、サプライヤ、従業員、組織などである。
Whatとは製品情報・商品情報・部品情報のことだ。
権利など、物理的に実在しないものも含まれる。
Whereはその意味どおり、場所だ。事業所・倉庫・棚などである。
座席番号なども場所に含まれる。
IoTの主力はセンサーだが、設置場所をうまく表現できなくては役に立たない。
Whenは時間を指す。時差、年度、月度などがある。
営業日、営業時間なども含む、地味だが必須の情報である。
Howというのはいわゆるルールである。
値引率は単なる数字だが、「値下げはココまで」というルールである。
規制や法律などはシステム化が遅れているが、まぎれもなく、ルールである。
さて、パナマ文書である。
報道によると、リークされた秘密情報が実に2.7TBもある。
昔のドラマではフロッピィディスクに入れていたものだが、さすがは21世紀。
しかも、元情報はデータベースだったりメールだったり紙だったりさまざまだ。
これを解析して出てきたものは何か。
金融機関と顧客との一覧と、お互いの関係である。
これを、お客様情報の詰まったデータベースと言わずしてなんと言おう。
ならば、元情報を生まれ変わらせた努力はMDMと呼ぼう。
ここまで派手でなくとも、データを生まれ変わらせる動きは増えつつある。
2014年以降、ずっと増加傾向にあるというのが実感である。
JDMCにはMDMの研究会がある。
賛同される方はもちろん、「ひとこと言ってやりたい」という方もぜひ参加いただきたい。
水谷哲(みずたに・さとし)
富士通株式会社に入社後、生産管理に従事。社内BPRを機にSCMの企画・導入プロジェクトに従事、勢い余ってそのままSEとなる。需要予測・需給計画・スケジューリング・MES全般に携わる中、データモデリングをきっかけにMDMと出会い、伝導者となる。2013年よりJDMCのMDM研究会リーダを務める。