JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、富士通の水谷哲さんです。
MDMの4W1Hとパナマ文書
「マスタデータとは何か?」「MDM(マスタデータ管理)とは何か?」
「パナマ文書は知っているが、MDMに関係があるとは一体何のコジツケだ?」
……というようなことを書いてみたい。
もともとマスタデータというのは「べし・べからず集」をシステム化したものである。
注文を受けていいのは顧客マスタに載っている人だけ。
売っていいのは、商品マスタに載っているモノだけ。
お客様に納品していいのは、営業日マスタに載っている日だけ。
ある時、誰かが思いついた。
顧客マスタというのは、注文に使うだけではもったいない。
売上を見たり新規開拓に使ったりできるのではないか。いや使おう。
目指すは、お客様情報の詰まったデータベースだ。
この「情報の詰まったデータベース」こそが、新たなマスタデータである。
MDMとは、まず、もともとのマスタデータを新たに生まれ変わらせること。
さらに、生まれ変わったデータベースを正しく育てていくことである。
MDMの対象は、大きくWho, What, Where, When, Howの4W1Hに分けられる。
WhoはParty情報ともいい、人間系の情報を指す。
顧客、サプライヤ、従業員、組織などである。
Whatとは製品情報・商品情報・部品情報のことだ。
権利など、物理的に実在しないものも含まれる。
Whereはその意味どおり、場所だ。事業所・倉庫・棚などである。
座席番号なども場所に含まれる。
IoTの主力はセンサーだが、設置場所をうまく表現できなくては役に立たない。
Whenは時間を指す。時差、年度、月度などがある。
営業日、営業時間なども含む、地味だが必須の情報である。
Howというのはいわゆるルールである。
値引率は単なる数字だが、「値下げはココまで」というルールである。
規制や法律などはシステム化が遅れているが、まぎれもなく、ルールである。
さて、パナマ文書である。
報道によると、リークされた秘密情報が実に2.7TBもある。
昔のドラマではフロッピィディスクに入れていたものだが、さすがは21世紀。
しかも、元情報はデータベースだったりメールだったり紙だったりさまざまだ。
これを解析して出てきたものは何か。
金融機関と顧客との一覧と、お互いの関係である。
これを、お客様情報の詰まったデータベースと言わずしてなんと言おう。
ならば、元情報を生まれ変わらせた努力はMDMと呼ぼう。
ここまで派手でなくとも、データを生まれ変わらせる動きは増えつつある。
2014年以降、ずっと増加傾向にあるというのが実感である。
JDMCにはMDMの研究会がある。
賛同される方はもちろん、「ひとこと言ってやりたい」という方もぜひ参加いただきたい。
水谷哲(みずたに・さとし)
富士通株式会社に入社後、生産管理に従事。社内BPRを機にSCMの企画・導入プロジェクトに従事、勢い余ってそのままSEとなる。需要予測・需給計画・スケジューリング・MES全般に携わる中、データモデリングをきっかけにMDMと出会い、伝導者となる。2013年よりJDMCのMDM研究会リーダを務める。